1. 高校数学の美しい物語
  2. リサージュ曲線の定義とそれに関連する話

リサージュ曲線の定義とそれに関連する話

更新日時 2021/02/24

媒介変数 θ\theta を用いて, {x=Asin(aθ+δ)y=Bsin(bθ) \begin{cases} x = A\sin (a\theta + \delta)\\ y = B\sin (b\theta) \end{cases} と表される曲線をリサージュ曲線という。

リサージュ曲線の定義について述べた後,それに関連する話題を紹介します。

目次
  • リサージュ曲線の定義

  • リサージュ曲線の概形を手計算で描いてみる

  • 振動数の比が有理数だと閉曲線になる

  • 振動数の比が無理数だと閉曲線にならない

  • 現実世界で現れるリサージュ曲線

  • 3次元空間におけるリサージュ曲線

リサージュ曲線の定義

リサージュ曲線,またはリサージュ図形とは,2つの単振動を合成して得られる平面上の図形のことです。振れ幅 A,BA,B,振動数 a,ba,b,位相差 δ\delta によって様々な図形を得ることができます。

リサージュ曲線の色々な例1 リサージュ曲線の色々な例2 リサージュ曲線の色々な例3

リサージュ曲線は,フランスの物理学者Jules Antoine Lissajousが考案したものです。日本語での表記は揺れており「リサジュー曲線」と呼ばれることもあります。

オシロスコープのような役割をするもの(今はコンピュータを使えば良いですね)を用意して波形を描いてみると,とても楽しいです。

リサージュ曲線の概形を手計算で描いてみる

コンピュータを使わずに,手計算でも概形を書くことはできます。例題として以下のようなリサージュ曲線を考えてみましょう。

リサージュ曲線の例

{x(θ)=3sinθy(θ)=2sin(2θ+π6) \begin{cases} x(\theta) = 3 \sin \theta\\ y(\theta) = 2 \sin \left(2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) \end{cases} と表されるリサージュ曲線の概形を描け。

まず最初に対称性がないかを確認します。θπ+θ\theta \to \pi + \theta とした時に, x(π+θ)=3sinθ=x(θ) x(\pi + \theta) = -3\sin\theta = -x(\theta) また, y(π+θ)=2sin(2π+2θ+π6)=2sin(2θ+π6)=y(θ) y(\pi + \theta) = 2\sin\left(2\pi + 2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) \\= 2\sin\left( 2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) = y(\theta) となります。よって,0θπ0 \leq \theta \leq \pi の間で概形を描いて,それを xx 軸に関して対称移動させれば良いです。これらを微分すると,

{dxdθ=3cosθdydθ=4cos(2θ+π6) \begin{cases} \dfrac{dx}{d\theta} = 3\cos \theta\\ \dfrac{dy}{d\theta} = 4\cos \left( 2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) \end{cases}

により,増減表は以下のようになります。

θ0π6π223ππdxdθ++++0dydθ++00++(x,y)(0,1)(32,2)(3,1)(332,2)(0,1) \begin{array}{c|ccccccc} \theta &0& \cdots & \dfrac{\pi}{6}& \cdots &\dfrac{\pi}{2}& \cdots &\dfrac{2}{3}\pi & \cdots &\pi\\ \hline \dfrac{dx}{d\theta} & + & + & + & + & 0 & -& -& -& - \\ \hline \dfrac{dy}{d\theta} & + & + & 0 & - & - & -& 0& +& + \\ \hline (x,y) & (0,1) & \nearrow & \left(\dfrac{3}{2}, 2\right) & \searrow & (3,-1)& \swarrow & \left(\dfrac{3\sqrt{3}}{2},-2\right) & \nwarrow & (0,1) \end{array}

よって,0θ2π0 \leq \theta \leq 2\pi の範囲で概形を描くと以下の通りになります。

リサージュ曲線手書き概形

振動数の比が有理数だと閉曲線になる

リサージュ曲線に関する簡単な定理を紹介します。

リサージュ曲線 {x=Asin(aθ+δ)y=Bsin(bθ) \begin{cases} x = A\sin (a\theta + \delta)\\ y = B\sin (b\theta) \end{cases} において,振動数の比 ba\dfrac{b}{a} が有理数のとき,リサージュ曲線はどこかのタイミングで開始点に戻ってくる閉曲線になる。

これが正しいことを説明します。

xx の周期は 2πa\dfrac{2\pi}{a} で,yy の周期は 2πb\dfrac{2\pi}{b} です。よって「2πa\dfrac{2\pi}{a} の整数倍」かつ「2πb\dfrac{2\pi}{b} の整数倍」となる実数 TT があれば時刻 TT で開始点に戻ってきます。

そこで,2πa×M=2πb×N\dfrac{2\pi}{a} \times M = \dfrac{2\pi}{b} \times N

つまり ba=NM\dfrac{b}{a} = \dfrac{N}{M} となる整数 M,NM,N が存在することを示せばよいです。実際,このような M,NM,Nba\dfrac{b}{a} が有理数なので存在します。

例えば,前節の {x(θ)=3sinθy(θ)=2sin(2θ+π6) \begin{cases} x(\theta) = 3 \sin \theta\\ y(\theta) = 2 \sin \left(2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) \end{cases} において,振動数の比は 12\dfrac{1}{2} であるので,xx11 回振動し,yy22 回振動すると,開始点に戻ってきます。

また, {x(θ)=5sin4θy(θ)=6sin(12θ+π3) \begin{cases} x(\theta) = 5 \sin 4\theta\\ y(\theta) = 6 \sin \left(12\theta + \dfrac{\pi}{3}\right) \end{cases} において,振動数の比は 412=13\dfrac{4}{12} = \dfrac{1}{3} であるから,xx11 回振動し,yy33 回振動すると,開始点に戻ってきます。このように振動数どうしが公約数を持っているほど,開始点に戻ってくるのは早くなります。 概形は以下のようになります。

2個目の例

よって例えば, {x(θ)=2sin10θy(θ)=3sin11θ \begin{cases} x(\theta) = 2 \sin 10\theta\\ y(\theta) = 3 \sin 11\theta \end{cases} を考えると,振動数の比は 1011\dfrac{10}{11} であるから,xx1010 回振動し,yy1111 回振動しなければ,閉曲線になりません。点は長い時間新しい場所を振動します。概形は以下のようになります。

3個目の例

振動数の比が無理数だと閉曲線にならない

では振動数の比が無理数の場合どうなるでしょうか。有理数の場合に分子分母が大きいほど図形がなかなか閉じなかったことから考えると,点は新しいところだけを永遠に通り続けて,閉曲線にはならないんじゃないか?と予測されます。

リサージュ曲線 {x=Asin(aθ+δ)y=Bsin(bθ) \begin{cases} x = A\sin (a\theta + \delta)\\ y = B\sin (b\theta) \end{cases} において,振動数の比 ba\dfrac{b}{a} が無理数のとき,リサージュ曲線は閉曲線にならない。

これも有理数のときと同様な議論で説明できます。

x,yx,y の周期はそれぞれ 2πa,2πb\dfrac{2\pi}{a}, \dfrac{2\pi}{b} である。もしこの曲線が閉曲線であれば,整数 M,NM,N が存在して,xxMM 回振動し,また yyNN 回振動したときに開始点に戻ってきたという状況がある。このとき, 2πa×M=2πb×Nba=NM \dfrac{2\pi}{a} \times M = \dfrac{2\pi}{b} \times N\\ \therefore \dfrac{b}{a} = \dfrac{N}{M} ba\dfrac{b}{a} は無理数であるのに対し,MN\dfrac{M}{N} は有理数であるからこれは矛盾。よって,このリサージュ曲線は閉曲線にならない。

閉曲線にならないということは,θ\theta が増えるにつれて,点は今まで通ったことのない領域を通り続けます。また,xx は常に AxA-A \leq x \leq A, yy は常に ByB-B \leq y \leq B を動き続けます。よって無限に θ\theta を大きくしていけば,縦 2A2A, 横 2B2B の平行四辺形を塗りつぶすように点が動くと予想されます。このことについての一般的な証明は難しいので話題にあげる程度に留めておきますが,例をみてみると面白いです。

リサージュ曲線 {x(θ)=2sin(θ+π4)y(θ)=sin(2θ+π6) \begin{cases} x(\theta) = 2 \sin \left(\theta + \dfrac{\pi}{4}\right)\\ y(\theta) = \sin \left(\sqrt{2}\theta + \dfrac{\pi}{6}\right) \end{cases} を例にとって,θ\theta00 から動かしていくと,以下のようになります。

振動数の比ルート2のリサージュ曲線

現実世界で現れるリサージュ曲線

現実世界でリサージュ曲線が現れる例をみてみましょう。以下のような構造の振り子を考えてみます。

振り子のモデル

上の二点は空間内に固定しています。糸は常にピンと貼ってある状態です。振り子は振れ幅が大きくない時には,単振動の運動,つまり三角関数を使って位置を表現できる運動に近似できます。

この状況で振り子を横に振動させると,以下のような運動をします。

横の振動gif

つまり,横には長さが L1L_1 の振動をします。上の2本の糸は振動に関与しません。よって周期は,物理で習う公式を利用すれば,重力加速度 gg を使って 2πL1g2\pi \sqrt{\dfrac{L_1}{g}} と表せます。

これに対し,画面に対して垂直な方向(以降「縦」方向と呼びます)に振り子を振動させると,以下のような運動をします。

縦の振動gif

縦には長さが L2L_2 の振動します。周期は,2πL2g2\pi \sqrt{\dfrac{L_2}{g}} になります。

L1,L2L_1,L_2 の長さは違うので,周期も異なります。一般には横と縦の振動の重ね合わせの運動をするはずですので,まさしくこれはリサージュ曲線を描きます。

では実際に重ね合わせた運動をみてみましょう。位置が, {x=35cos(2θ+π6)y=910cosθ \begin{cases} x = \dfrac{3}{5} \cos\left(2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right)\\ y = \dfrac{9}{10} \cos\theta\\ \end{cases} で表されるような振り子の運動は以下のようになります。

合成した振動

これを上から眺めてみると,リサージュ曲線ができることがわかります。

合成した振動を上から

3次元空間におけるリサージュ曲線

3次元においても,媒介変数表示を使ってリサージュ曲線を同様に表せます。例えば, {x=2sin(2θ+π6)y=3sin(4θ)z=4sin(3θ+π4) \begin{cases} x = 2\sin \left(2\theta + \dfrac{\pi}{6}\right)\\ y = 3\sin (4\theta)\\ z = 4\sin \left(3\theta + \dfrac{\pi}{4}\right)\\ \end{cases} は,空間上で次のような図形になります。 3次元のリサージュ曲線

また,2次元の時と同様に, {x=2sin(2θ)y=3sin(2θ)z=4sin(3θ) \begin{cases} x = 2\sin \left(2\theta\right)\\ y = 3\sin (\sqrt{2}\theta)\\ z = 4\sin \left(\sqrt{3}\theta\right)\\ \end{cases} で表されるリサージュ曲線は,振動数の比が無理数であるから,直方体のような形の立体図形になります。

三角関数という単純な式を使うだけで,このような美しい模様がかけるのがとても楽しいですね。

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