中国剰余定理の証明と例題(二元の場合)
と が互いに素なとき,
の両方を満たす整数 が 以上 未満の範囲にただ1つ存在する。
中国剰余定理を理解するために,このページでは「式が2つ」で「 と が互いに素」な場合を説明します。
※「式が3つ以上」および「互いに素でない場合」については,→中国剰余定理と法が互いに素でない場合への拡張
連立合同式の簡単な例題
連立合同式の簡単な例題
連立合同式の形で書くと一見難しいですが,ここで考えるのは以下のような単純な問題です:
で割って 余り, で割って 余る 未満の非負整数 を求めよ。
これくらいの大きさなら全部調べられます,解は のみです。解が存在して,しかもただ1つです。
この例題と解答を一般化したのが中国剰余定理(Chinese Remainder Theorem)です。以下では,中国剰余定理の証明と,連立合同式の解の求め方を解説します。
中国剰余定理の証明(解の唯一性)
中国剰余定理の証明(解の唯一性)
まずは簡単な「唯一性」つまり「解が つ以上存在することはない」ことを背理法で証明します。
与えられた連立合同式の解が2つ以上あると仮定する。そのうちの2つを とおくと,
より は の倍数であり の倍数でもある。 と が互いに素なので は の倍数。
ところが はともに 未満の非負整数なので となり矛盾。よって解が存在するとしたら つ。
中国剰余定理の証明(解の存在性)
中国剰余定理の証明(解の存在性)
次に連立合同式に解が存在することを証明します。赤文字の式で実際に解を構成するのがポイントです。
は互いに素なので,
を満たす整数 が存在する(→注)。
よって,
よって, とおくと
となり は与えられた連立合同式を満たす。
未満の非負整数の解 を得るためには を「 を で割った余り」とすればよい。
注:有名な定理(ベズーの定理)です。一次不定方程式ax+by=cの整数解で詳しく説明しています。ユークリッドの互除法を用いることで を求めることができるので,解 を実際に計算できます!
連立合同式を実際に解く
連立合同式を実際に解く
以下の連立合同式を解け。
を満たす を直感またはユークリッドの互除法で求めると,例えば
よって解は なので,
となる。
※「式が3つ以上」および「互いに素でない場合」については,→中国剰余定理と法が互いに素でない場合への拡張
「中国剰余定理」という名前がかっこいいですね。