入試数学コンテスト第7回第4問解答解説

第4問 [不等式・微分・積分]

第4問

実数 a<b<ca < b < c に対し,3次関数 f(x)f(x) が次の条件を満たしている。

  • 3次の係数は 11 である
  • a<b<ca < b < c に対して f(a)=a,f(b)=b,f(c)=cf(a)=a,f(b)=b,f(c)=c を満たす

(1) f(x)f(x) を a,b,ca,b,c を用いて表せ。

以下 a,b,ca,b,c は

  • f(x)f(x) が極値を持たない

ような範囲を動くとする。

(2) (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) の取りうる値の範囲を求めよ。

(3) kk を正の定数とする。実数 s,ts,t が s>0,t>0,s2+t2+st=ks>0,t>0,s^2+t^2+st=k を満たしながら動くとき,stst の取りうる値の範囲を求めよ。

(4) y=f(x)y=f(x) と y=xy=x に囲まれた部分の面積を SS とするとき,SS の取りうる値の範囲を求めよ。

第4問は不等式をからめた微分積分の問題です。

(1) は与えられた条件を満たす三次関数を求める問題です。f(a)=af(a) = a から f(a)−a=0f(a) - a = 0 という式を思いつけば,f(x)−xf(x) - x が x=a,b,cx = a, b, c で 00 になることがわかりますね。ここで因数定理を思い出しましょう。

第4問 (1)

g(x)=f(x)−xg(x) = f(x) - x とおくと g(a)=f(a)−a=0g(a) = f(a)-a=0 となる。同様に g(b)=0,g(c)=0g(b)=0, g(c) = 0 である。因数定理より g(x)g(x) は (x−a),(x−b),(x−c)(x-a) , (x-b) , (x-c) で割り切れる。

また f(x)f(x) が3次の係数が 11 である三次関数であり,xx は一次関数であるため,g(x)g(x) は3次の係数が 11 である三次関数である。

以上より f(x)−x=g(x)=(x−a)(x−b)(x−c)f(x) - x = g(x) = (x-a) (x-b)(x-c) と表される。ゆえに f(x)=(x−a)(x−b)(x−c)+x=x3−(a+b+c)x2+(ab+bc+ca+1)x−abc\begin{aligned} &f(x)\\ &= (x-a)(x-b)(x-c) + x\\ &= x^3 - (a+b+c)x^2 + (ab+bc+ca+1)x -abc \end{aligned} となる。

(2) では,条件に f(x)f(x) が極値を持たないというものが追加されます。極値を持たないことは,導関数が常に 00 以上か,常に 00 以下のときです。

今回は f(x)f(x) が三次関数であるため,導関数は二次関数ですね。ということは導関数である二次関数を調べるとよさそうです。二次関数を調べるといえば判別式です。判別式を計算し,問題文に出てくる文字式と比べてみましょう。

第4問 (2)

s=b−a,t=c−bs=b-a,t=c-b とする。

f′=3x2−2(a+b+c)+(ab+bc+ca+1)f'=3x^2-2(a+b+c)+(ab+bc+ca+1) である。3つ目の条件より f(x)f(x) は極値を持たない。すなわち f′(x)f'(x) が非負もしくは非正である。f′f' の最高次の係数が正であることから非負であることが従う。

したがって f′f' の判別式 DD について,D/4=(a+b+c)2−3(ab+bc+ca+1)≦0D/4=(a+b+c)^2-3(ab+bc+ca+1) \leqq 0 が成り立つ。

(a+b+c)2−3(ab+bc+ca)=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca−3(ab+bc+ca)=a2+b2+c2−ab−bc−ca\begin{aligned} &(a+b+c)^2 - 3 (ab + bc +ca)\\ &= a^2 + b^2 + c^2 + 2ab + 2bc + 2ca - 3 (ab+bc+ca)\\ &=a^2 + b^2 +c^2 - ab - bc -ca \end{aligned} 一方で (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)=(b2−2ab+a2)+(b2−2bc+c2)+(bc−b2−ac+ab)=a2+b2+c2−ab−bc−ca\begin{aligned} &(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b)\\ &= (b^2 - 2ab + a^2) + (b^2 - 2bc + c^2) + (bc - b^2 - ac + ab)\\ &=a^2 + b^2 + c^2 - ab - bc - ca \end{aligned} である。

こうして (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)=(a+b+c)2−3(ab+bc+ca)(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) = (a+b+c)^2 - 3 (ab + bc +ca) である。判別式から得られた不等式から (a+b+c)2−3(ab+bc+ca)≦3(a+b+c)^2 - 3 (ab + bc +ca) \leqq 3 である。

a<b<ca < b < c より (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)>0(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) > 0 である。また a,ca,c を bb に近付けることで $(b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) を 00 にいくらでも近付けることができる。

こうして 0<(b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)≦30 < (b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) \leqq 3 である。

後半で「a<b<ca < b < c より (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)>0(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) > 0」という不等式が出ました。これだけで解答の不等式を得ることもできますが,それでは不十分です。例えば x2+1x^2 + 1 について x2>0,1>0x^2 > 0, 1> 0 より x2+1>0x^2 + 1 > 0 という不等式を得られますが,実際 x2+1x^2+1 は 11 を最小値に取ります。よって x2+1x^2+1 の取りうる値として x2+1>0x^2+1 > 0 は「広すぎる」のです。

同じように (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)>0(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b) > 0 が「広すぎる」可能性があります。今回は a→b,c→ba \to b , c \to b とすることでどれだけでも 00 に近付けられるため,「広すぎる」ことはなかったのです。同様の議論は (3) でも行うことになります。

第4問 (3)

相加平均と相乗平均の大小より,s2+t2≧2sts^2+t^2 \geqq 2st (等号成立は s=ts=t のとき)である。両辺に 2st2st を加えて s2+t2+2st≧3sts^2 + t^2 + 2st \geqq 3st となる。s2+t2+2st=ks^2 + t^2 +2st = k を代入すると k≧3stk \geqq 3st,すなわち st≦13kst \leqq \dfrac{1}{3} k が得られる。

また,s,t>0s,t > 0 より st>0st > 0 である。ss を 00 に近付ける(このとき tt は k\sqrt{k} に近付く)と stst はいくらでも 00 に近付く。

よって 0<st≦k30 < st \leqq \dfrac{k}{3} である。

(1) を思い出すと y=f(x)y = f(x) と y=xy=x によって囲まれる部分の面積は y=(x−a)(x−b)(x−c)y = (x-a)(x-b)(x-c) を xx 軸によって囲まれる部分の面積と等しいです。それではその「囲まれた部分」を計算しましょう。

しかし,ただ計算するだけでは,取りうる範囲を求める際,出てくる文字が多いですね。うまく文字を置き換えて計算を楽にしたいです。さて,(2) (3) を振り返ってみましょう。それぞれ (b−a)2+(c−b)2+(b−a)(c−b)(b-a)^2+(c-b)^2+(b-a)(c-b),s2+t2+sts^2+t^2+st という式が現れていました。これらを見比べると b−a=s,c−b=tb-a = s , c-b =t とおくと評価が楽にできそうです。

第4問 (4)

y=f(x)y = f(x) と y=xy=x によって囲まれる部分の面積 SS は s=b−a,t=c−bs=b-a,t=c-b と置くと S=∫ac∣(x−a)(x−b)(x−c)∣dx=112(s4+2ts3+2s3t+t4)\begin{aligned} S &= \int_a^c | (x-a)(x-b)(x-c) | dx\\ &= \frac{1}{12} (s^4+2ts^3+2s^3t+t^4) \end{aligned} となる。(詳しい計算過程は下記 [面積を求める計算過程] を参照)

k=s2+t2+stk=s^2+t^2+st とすると,S=112(k2−3(st)2)S=\dfrac{1}{12} (k^2-3(st)^2) となる。

(3) から k2−13k2≦k2−3(st)2<k2k^2 - \dfrac{1}{3} k^2 \leqq k^2 - 3 (st)^2 < k^2 である。こうして 118k2≦S<112k2\dfrac{1}{18} k^2 \leqq S < \dfrac{1}{12} k^2 が得られる。

(2) より kk は 0<k≦30 < k \leqq 3 を動くから,0<S<340 < S < \dfrac{3}{4} の範囲を動く。

面積を計算するとき,まず a,b,ca,b,c で積分をして,うまく s,ts,t を代入するという方法もできますが,やはり計算が煩わしいです。ここで放物線と直線で囲まれた面積を高速で求める1/6公式の記事で1/6公式を証明するときの計算を見ましょう。これに習い (x−b)(x-b) を基準として計算をしてみましょう。

面積を求める計算過程

a<b<ca < b < c に対して,s=b−a,t=c−bs=b-a,t=c-b と置く。 ∫(x−a)(x−b)(x−c)dx=∫{(x−b)+(b−a)}(x−b){(x−b)−(c−b)}dx=∫{(x−b)3+(s−t)(x−b)2−st(x−b)}dx=14(x−b)4+13(s−t)(x−b)3−12st(x−b)2+C\begin{aligned} &\int (x-a)(x-b)(x-c) dx\\ &= \int \{ (x-b) + (b-a) \} (x-b) \{ (x-b) - (c-b) \} dx\\ &= \int \{ (x-b)^3 + (s-t) (x-b)^2 - st (x-b) \} dx\\ &= \dfrac{1}{4} (x-b)^4 + \dfrac{1}{3} (s-t) (x-b)^3 - \dfrac{1}{2} st (x-b)^2 + C \end{aligned} であるため ∫ab(x−a)(x−b)(x−c)dx=[14(x−b)4+13(s−t)(x−b)3−12st(x−b)2]ab=−14s4+13(s−t)s3+12s3t=112(s4+2s3t)−∫bc(x−a)(x−b)(x−c)dx=−[14(x−b)4+13(s−t)(x−b)3−12st(x−b)2]bc=−(14t4+13(s−t)t3−12st3)=112(t4+2st3)\begin{aligned} &\int_a^b (x-a)(x-b)(x-c) dx\\ &= \left[ \dfrac{1}{4} (x-b)^4 + \dfrac{1}{3} (s-t) (x-b)^3 - \dfrac{1}{2} st (x-b)^2 \right]_a^b\\ &= -\dfrac{1}{4} s^4 + \dfrac{1}{3} (s-t)s^3 + \dfrac{1}{2} s^3t\\ &= \dfrac{1}{12} (s^4 + 2 s^3 t)\\ &-\int_b^c (x-a)(x-b)(x-c) dx\\ &= -\left[ \dfrac{1}{4} (x-b)^4 + \dfrac{1}{3} (s-t) (x-b)^3 - \dfrac{1}{2} st (x-b)^2 \right]_b^c\\ &= -\left( \dfrac{1}{4} t^4 + \dfrac{1}{3} (s-t)t^3 - \dfrac{1}{2} st^3 \right)\\ &= \dfrac{1}{12} (t^4 + 2st^3)\\ \end{aligned} となる。こうして y=f(x)y = f(x) と y=xy=x によって囲まれる部分の面積 SS は S=∫ac∣(x−a)(x−b)(x−c)∣dx=∫ab(x−a)(x−b)(x−c)dx−∫bc(x−a)(x−b)(x−c)dx=112(s4+2ts3+2s3t+t4)\begin{aligned} S &= \int_a^c | (x-a)(x-b)(x-c) | dx\\ &= \int_a^b (x-a)(x-b)(x-c) dx - \int_b^c (x-a)(x-b)(x-c) dx\\ &= \frac{1}{12} (s^4+2ts^3+2s^3t+t^4) \end{aligned} となる。

すっきりと計算できましたね。