入試数学コンテスト第6回第1問解答解説

第1問 [確率]

第1問

A,B,C,D,E,Fさんが一般的な六面サイコロを使ってゲームをする。6人は輪になってこの順に時計回りに並んでおり,初めAさんがサイコロを持っている。勝者が決まるまで,以下の操作を繰り返す。

サイコロを持っている人がサイコロを投げる。出た目を nn とする。

  • n=6n=6 ならば,サイコロを持っている人が勝者となる。
  • n6n\neq6 ならば,nn 人分時計回りに進んだ人にサイコロを渡す。

例えばAさんがサイコロを投げて 22 が出た場合,時計回りに 22 人分進んだCさんにサイコロを渡す。

(1) 1回目の操作,2回目の操作,3回目の操作でAさんが勝者となる確率を求めよ。

(2) 勝敗が付くまで操作をした結果,Aさんが勝者となる確率を求めよ。

なお,解答が 0,10,1 になる場合,フォームにはそれぞれ 01,11\dfrac{0}{1},\dfrac{1}{1} と入力すること。

第1問は確率の問題です。

少々状況がわかりにくいかもしれません。実際に実験をしてみましょう。

例えば 15461 \rightarrow 5 \rightarrow 4 \rightarrow 6 と目が出たとしましょう。

  1. Aさんが 11 を出したため,Aさんから時計回りに 11 進んだBさんにサイコロがわたる。
  2. Bさんが 55 を出したため,Bさんから時計回りに 55 進んだAさんにサイコロがわたる。
  3. Aさんが 44 を出したため,Aさんから時計回りに 44 進んだEさんにサイコロがわたる。
  4. Eさんが 66 を出したため,Dさんの勝利である。

2回目サイコロを投げる人はAさん以外の誰かであることが分かると思います。

第1問 (1)

nn 回目の操作でAさんが勝者となる確率を pnp_n とする。

  • 1回目

必ず1回目はAさんが投げるため,サイコロを1回投げて6が出る確率を求めればよい。よって,p1=16p_1 = \dfrac{1}{6} である。

  • 2回目

2回目の操作は,かならずAさん以外が行うため p2=0p_2=0 である。

  • 3回目

3回目の操作をAさんが行うためには,11 回目の操作で 66 以外が出て,22 回目の操作で サイコロがAさんにわたるような出目が出る必要がある。

Aさんに回るまでに6の倍数人分サイコロが進まなければならない。2回サイコロが投げられたとき,サイコロの出目の和が6の倍数となるのは,661212 となる2通りがある。しかし,1212 が出るためには 66 が2回出ることになり,これは不適である。

こうして2回のサイコロの出目の和が 66 となることがわかる。この場合,1回目の出目から2回目に出なければならない目は1通りしかない。

したがって p3=561616=5216p_3=\dfrac{5}{6}\cdot\dfrac{1}{6}\cdot\dfrac{1}{6}=\dfrac{5}{216} である。

(2) は操作の回数に寄らず,Aさんが勝つ確率を求める問題です。 この問題は 16\dfrac{1}{6} と解答されている人が多かったです。確かに全員が等しい確率で勝つようにも思えますが,実は最初Aさんがサイコロを投げることから,そううまくはいきません。

後述しますが,一般の pnp_n を計算して,足し合わせる解答もあります。しかしこの方法では極限の計算が必要となります。

まずは極限を使わない解法を紹介します。ポイントはAさん以外が勝つ出目からAさんが勝つ出目が対応付けられるところです。早速見ていきましょう。

第1問 (2)

最終的にAさんが勝つ確率を PP,最終的にAさん以外が勝つ確率を QQ とおく。

最終的に誰か1人は勝利することから P+Q=1 P+Q = 1 である。

XをB,C,D,E,Fのいずれかとする。

n(2)n (\geqq 2) 回目以降にXさんが勝つ出目から次の方法により,n+1n+1 回目以降にAさんが勝つ出目を対応させることができる。

  1. nn 回目にXさんが出す目を 66 から次にAさんにサイコロがわたる出目に変える。
  2. n+1n+1 回目に出す目を 66 とする。

Xさんが勝つにサイコロの目の出方を1つ固定する。サイコロがそのような目を出す確率を pp としたとき,上記の方法で対応付けられるAさんが勝つサイコロの目の出る確率は 16p\dfrac{1}{6} p である。

逆に3回目以降にAさんが勝つ出目から上記の方法を逆にたどることで,Aさん以外が勝つ出目が対応付けられる。したがってAさんが3回目以降に勝つ確率は 16Q\dfrac{1}{6}Q である。

1回目にAさんが勝利する確率 16\dfrac{1}{6} と合わせることで次の式が成り立つ。

P=16+16Q P = \dfrac{1}{6} + \dfrac{1}{6}Q

こうしてで次の連立方程式が得られる。

{P+Q=1P=16+16Q\begin{cases} P + Q =1\\ P = \dfrac{1}{6} + \dfrac{1}{6} Q \end{cases}

これを解くことで P=27P=\dfrac{2}{7} を得る。

次に一般の pnp_n を計算して,nn の総和と計算する手法を紹介します。

第1問 (2) 別解

nn 回目にAさんがサイコロを振る確率を qnq_n とする。

n+1n+1 回目にAさんにサイコロがわたっているためには,nn 回目にAさん以外の人がサイコロを振り,Aさんにわたるような出目がでる必要がある。

nn 回目にいずれかの人がサイコロを振る確率はいままでに一度も 66 が出ない確率と等しい。 すなわち (56)n1\left(\dfrac{5}{6}\right)^{n-1} である。よって nn 回目にAさん以外がサイコロを投げる確率は (56)n1qn\left(\dfrac{5}{6}\right)^{n-1}-q_n である。

こうして漸化式 qn+1=16((56)n1qn) q_{n+1}=\dfrac{1}{6}\left(\left(\dfrac{5}{6}\right)^{n-1}-q_n\right) が成りたつ。辺々に (65)n+1\left( \dfrac{6}{5} \right)^{n+1} をかけると (65)n+1qn+1=16(362565(65)nqn) \left( \dfrac{6}{5} \right)^{n+1} q_{n+1} = \dfrac{1}{6} \left( \dfrac{36}{25} - \dfrac{6}{5} \left( \dfrac{6}{5} \right)^{n} q_n \right) が得られる。

rn=(65)nqnr_n = \left( \dfrac{6}{5} \right)^n q_n とおくことで rn+1=62515rn r_{n+1} = \dfrac{6}{25} - \dfrac{1}{5} r_n が得られる。なお r1=65q1=651=65 r_1 = \dfrac{6}{5} q_1 = \dfrac{6}{5} \cdot 1 = \dfrac{6}{5} である。

rn+115=15(rn15)rn15=(15)n1(r115)=(15)n1(6515)rn=15+(15)n1\begin{aligned} r_{n+1} - \dfrac{1}{5} &= -\dfrac{1}{5} \left( r_n - \dfrac{1}{5} \right)\\ r_n - \dfrac{1}{5} &= \left( -\dfrac{1}{5} \right)^{n-1} \left( r_1 - \dfrac{1}{5} \right)\\ &= \left( -\dfrac{1}{5} \right)^{n-1} \left( \dfrac{6}{5} - \dfrac{1}{5} \right)\\ r_n &= \dfrac{1}{5} + \left( -\dfrac{1}{5} \right)^{n-1} \end{aligned}

こうして qn=(56)nrn=(56)n{15+(15)n1}=15(56)n5(16)n\begin{aligned} q_n &= \left( \dfrac{5}{6} \right)^n r_n\\ &= \left( \dfrac{5}{6} \right)^n \left\{ \dfrac{1}{5} + \left( -\dfrac{1}{5} \right)^{n-1} \right\}\\ &= \dfrac{1}{5} \left( \dfrac{5}{6} \right)^n - 5 \left( - \dfrac{1}{6} \right)^n \end{aligned} が得られる。pn=qn6p_n=\dfrac{q_n}{6} であるから pn=130(56)n56(16)n p_n=\dfrac{1}{30} \left( \dfrac{5}{6} \right)^n - \dfrac{5}{6} \left( - \dfrac{1}{6} \right)^n である。

総和をとることで limnk=1npk=limnk=1n{130(56)n56(16)n}=13056115656(16)11+16=13056656(16)67=16+542=1242=27\begin{aligned} &\lim_{n\to \infty}\sum _{k=1}^n p_k\\ &=\lim_{n\to \infty}\sum _{k=1}^n \left\{ \dfrac{1}{30} \left( \dfrac{5}{6} \right)^n - \dfrac{5}{6} \left( - \dfrac{1}{6} \right)^n \right\}\\ &= \dfrac{1}{30} \cdot \dfrac{5}{6} \cdot \dfrac{1}{1- \dfrac{5}{6}} - \dfrac{5}{6} \cdot \left( - \dfrac{1}{6} \right) \cdot \dfrac{1}{1+\dfrac{1}{6}}\\ &= \dfrac{1}{30} \cdot \dfrac{5}{6} \cdot 6 - \dfrac{5}{6} \cdot \left( - \dfrac{1}{6} \right) \cdot \dfrac{6}{7}\\ &= \dfrac{1}{6} + \dfrac{5}{42}\\ &= \dfrac{12}{42} = \dfrac{2}{7} \end{aligned} が得られる。

今回 漸化式の解き方12パターンと応用例まとめ のパターン6 累乗を含む二項間漸化式が登場しました。確率の問題と漸化式が絡むとき,多くの場合は漸化式に nn が登場します。難しく見えますが,数列の置き換えをうまくすることで簡単に計算できます。

1つ目のように出目の対応に着目すると,極限計算を行わずに答えが導かれます。実際に答案を作るという視点では,2つ目の解法がオーソドックスになるでしょう。

どちらの解法がより良いというのはありませんが,どちらも思いつけることはアドバンテージになります。広い視野を持って問題を解きましょう。