入試数学コンテスト第2回第1問解答解説

第1問 [確率]

第1問

n (n2)n \ (n \geq 2) 個のサイコロを同時に 11 回投げる。

出たすべての目の積を PP, 出たすべての目の最大公約数を GGとするとき, 以下の問いに答えよ。

(1) PP が偶数になる確率を求めよ。

(2) PP88 の倍数になる確率を求めよ。

(3) G=5G = 5 である確率を求めよ。

(4) G=3G = 3 である確率を求めよ。

(5) G=1G = 1 である確率を求めよ。

第1問は数Aの確率分野からの出題です。いずれも基本的な問題設定ですが, ミスなく解答できるかが問われています。

(1),(2)は nn 個のサイコロの目の積に関する問題です。

第1問(1)

PP が偶数になるという事象の余事象は「出たすべての目が奇数である」という事象である。

したがって求める確率は

1(36)n=1(12)n 1 - \left(\dfrac{3}{6}\right)^n = 1 - \left(\dfrac{1}{2}\right)^n

(2)の状況は(1)と近いですが, 少しだけ場合分けが必要です。

手元でサイコロの目の偶奇を色々試してみると, ほとんどの場合で PP88 の倍数になると気がつきます。

そこで(1)と同様の発想で, PP88 の倍数にならないという余事象から求めましょう。

第1問(2)

PP88 の倍数になるという事象の余事象は以下のいずれかの場合が満たされる場合である。

  • 出たすべての目が奇数である。
  • 出たすべての目のうち, 偶数が1つだけ含まれ, 残りはすべて奇数である。
  • 出たすべての目のうち, 22 または 66 が 2つだけ含まれ, 残りはすべて奇数である。

これらの場合はすべて互いに排反である。

したがって, 余事象の確率は

(36)n +nC136(36)n1+nC2(26)2(36)n2=(12)n{1+n+n(n1)2(23)2}=(12)n(2n2+7n+99) \begin{aligned} & \left(\dfrac{3}{6}\right)^n + {}_n\mathrm{C}_1 \cdot \dfrac{3}{6} \cdot \left(\dfrac{3}{6}\right)^{n-1} + {}_n\mathrm{C}_2 \left(\dfrac{2}{6}\right)^2 \left(\dfrac{3}{6}\right)^{n-2} \\ &= \left(\dfrac{1}{2}\right)^n \left\{ 1 + n + \dfrac{n(n-1)}{2} \left(\dfrac{2}{3}\right)^2 \right\} \\ &= \left(\dfrac{1}{2}\right)^n \left( \dfrac{2 n^2 + 7n + 9}{9}\right) \end{aligned}

である。求める確率は 1(12)n(2n2+7n+99) 1 - \left(\dfrac{1}{2}\right)^n \left( \dfrac{2 n^2 + 7n + 9}{9}\right)

求めた後, 検算も簡単にしてみましょう。

n=2n = 2 を代入してみると, 答えは 536\dfrac{5}{36} となります。

22 個のサイコロを投げてその積が 88 の倍数になるのは

  • 1回目:4 / 2回目:2,4,6
  • 1回目:2,6 / 2回目:4

の場合であり, これらの場合は互いに排反です。

この確率は

1636 +2616=536 \dfrac{1}{6} \cdot \dfrac{3}{6} + \dfrac{2}{6} \cdot \dfrac{1}{6} = \dfrac{5}{36}

となり, 上の結果と一致しています。

このように効率よい検算をすることでケアレスミスを防げます。

このような正答率が高くなりそうな問題は合否を分ける問題になりやすいので, ケアレスミスを防げるように普段の学習から検算の練習も心がけましょう。

(3),(4),(5)は nn 個のサイコロの目の最大公約数に関する問題です。

第1問(3)

すべての目の最大公約数が G=kG = k になる確率を pkp_k とする。

G=5G = 5 になるのは, すべての目が 55 であるときなので

p5=(16)n p_5 = \left(\dfrac{1}{6}\right)^n

(4)では, 最大公約数が 66 になる場合に注意しましょう。

第1問(4)

G=3G = 3 になるのは「すべての目が 33 または 66 である」という事象から「すべての目が 66 である」という事象を除いたときなので

p3=(13)n(16)n p_3 = \left(\dfrac{1}{3}\right)^n - \left(\dfrac{1}{6}\right)^n

すべての目が 66 であるとき, 最大公約数は 66 になってしまいます。

安直に

p3=(13)n p_3 = \left(\dfrac{1}{3}\right)^n だと思ってしまった方は, 場合分けを丁寧にできるようになりましょう。

今回は解答フォームの形から誤りに気がついたかもしれませんが, 記述式模試ではこのような単純なミスは致命傷になりかねません。

さて, (5)です。

G=1G = 1 である」という事象をどのように捉えたら良いでしょうか。

偶数が含まれる場合, 3が含まれる場合, … などで場合分けができそうですが, とてもややこしい計算になってしまいます。

ここでも余事象を考えることが着想のポイントです。

第1問(5)

GG は1以上6以下の整数なので,

p1=1(p2+p3+p4+p5+p6) p_1 = 1 - (p_2 + p_3 + p_4 + p_5 + p_6)

を満たす。

ここで p2+p4+p6p_2 + p_4 + p_6 は「GG が偶数である」という事象の確率であり, これは「出たすべての目が偶数である」ということであるから

p2+p4+p6=(12)n p_2 + p_4 + p_6 = \left(\dfrac{1}{2}\right)^n

(3)(4)の結果と合わせて, p1=1(p2+p3+p4+p5+p6)=1(12)n(13)n \begin{aligned} p_1 &= 1 - (p_2 + p_3 + p_4 + p_5 + p_6) \\ &= 1 - \left(\dfrac{1}{2}\right)^n - \left(\dfrac{1}{3}\right)^n \end{aligned}

この大問で学ぶべきテーマは

  • 余事象をうまく使うこと
  • 互いに排反な事象に場合分けをすること

一見場合わけが複雑そうに見える問題でも余事象を考えることで解答が一気にシンプルになることがあります。

「互いに排反な事象になるような場合分け」も確率分野では必須の能力です。

また「余事象を使わないで直接求めた確率」と合わせることで検算ができます。

検算においては, 必ずしも一般の nn に対しての確率を求める必要はなく, (2)の後で説明しているように n=2n = 2 などと状況を限定することも効果的です。

この大問は正答率が高く, 間違えると苦しい問題です。確実に正答できるように訓練しておきましょう。

余事象について自信がない方, もっと知りたい方は以下の記事で勉強しましょう。

→余事象の考え方と例題