入試数学コンテスト第7回第1問解答解説

第1問 [方程式]

第1問

二次方程式 x2x1=0x^2-x-1=0 の異なる2つの実数解をそれぞれ α,β\alpha, \beta とする。

(1) α+β\alpha+\beta の値を求めよ。

(2) α10+β10\alpha^{10}+\beta^{10} の値を求めよ。

(3) α+β,α2+β2,α3+β3,,α2022+β2022\alpha+\beta, \alpha^2+\beta^2, \alpha^3+\beta^3, \cdots , \alpha^{2022}+\beta^{2022} の2022個の実数のうち,整数であって3の倍数であるもの個数を求めよ。

第1問は 二次方程式における解と係数の関係 を用いる基本的な方程式の問題です。

第1問 (1)

解と係数の関係より,α+β=1\alpha+\beta=1 となる。

解と係数の関係を用いる問題で α3+β3\alpha^3 + \beta^3 を計算させる問題はよく見るでしょう。今回は10乗を計算する問題となっています。

α3+β3\alpha^3 + \beta^3 の計算は α3+β3=(α+β)33αβ(α+β)\alpha^3 + \beta^3 = (\alpha + \beta)^3 - 3 \alpha \beta (\alpha +\beta) と変形するのでした。同様に (α+β)10(\alpha + \beta)^{10} などを用いて計算することもできますが,計算がかなり重いです。加えて計算ミスも起りやすいです。

それではどのように解くとうまく計算できるのでしょうか。α\alphaβ\beta が二次方程式の2解であったことがポイントです。

第1問 (2)

α,β\alpha, \betax2x1=0x^2-x-1=0 の解であるため,それぞれ α2=α+1,β2=β+1\alpha^2=\alpha+1, \beta^2=\beta+1 を満たすので, αn+2=αn+1+αn,βn+2=βn+1+βn \alpha^{n+2}=\alpha^{n+1}+\alpha^{n}, \beta^{n+2}=\beta^{n+1}+\beta^{n} となる。よって (αn+2+βn+2)=(αn+1+βn+1)+(αn+βn) (\alpha^{n+2}+\beta^{n+2})=(\alpha^{n+1}+\beta^{n+1})+(\alpha^{n}+\beta^{n}) である。すなわち cn=αn+βnc_n = \alpha^n + \beta^n とおくと数列 {cn}\{ c_n \}cn+2=cn+1+cn c_{n+2} = c_{n+1} + c_n を満たす。

(1) より c1=α+β=1c_1 = \alpha + \beta =1 である。また c2=α2+β2=(α+β)22αβ=3c_2 = \alpha^2 + \beta^2 = (\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta=3 である。こうして帰納的に c3=c2+c1=3+1=4c4=c3+c2=4+3=7c5=c4+c3=7+4=11c6=c5+c4=11+7=18c7=c6+c5=18+11=29c8=c7+c6=29+18=47c9=c8+c7=47+29=76c10=c9+c8=76+47=123 c_3 = c_2+c_1 = 3+1=4\\ c_4 = c_3+c_2 = 4+3 = 7\\ c_5 = c_4 + c_3 = 7+4 = 11\\ c_6 = c_5 + c_4 = 11+7 = 18\\ c_7 = c_6 + c_5 = 18+11 = 29\\ c_8 = c_7 + c_6 = 29+18 = 47\\ c_9 = c_8 + c_7 = 47+29 = 76\\ c_{10} = c_9 + c_8 = 76+47 = 123\\ と計算され,求める値は c10=123c_{10} = 123 である。

漸化式を見つけることで簡単に計算できました。

(3) も漸化式をうまく活用して計算をしましょう。

第1問 (3)

cn+2c_{n+2} を3で割った余りは,cn+1c_{n+1} を3で割った余りと cnc_n を3で割った余りを足したもの(を3で割った余り)である。よって漸化式から,数列 {cn}\{ c_n \}33 で割った余りを計算すると 1,0,1,1,2,0,2,2,1,0,1,1,2,0,2,2,1,0,1,1,2,0,2, 1, 0, 1, 1, 2, 0, 2, 2, 1, 0, 1, 1, 2, 0, 2, 2, 1, 0, 1, 1, 2, 0, 2, \cdots のように 1,0,1,1,2,0,2,21, 0, 1, 1, 2, 0, 2, 2 を周期とするがわかる。この 00 の項が3の倍数の項である。

2022=8×252+62022=8\times252+6 であるから, 数列 {cn}\{ c_n \} の1項目から2022項目の中に252回上記の周期が含まれることになる。こうして2016項目までに 252×2=504252 \times 2 = 504 個の3の倍数が現れる。

ちょうど 2×252+2=5062\times252+2=506 個の 33 の倍数が存在することがわかる。周期の2番目,6番目に3の倍数が現れるため,2017項目から2022項目までの間に2こ3の倍数が現れる。

こうして求めるものは 506506 とわかる。

整数で割ったときの余りの問題では「周期性」に注目すると,見通しが良くなることが多いです。さて,ここで余りを計算するときは,合同式 を活用すると簡単にできます。しっかりと使い方をマスターしておきましょう。