第2問
四角形 ABCD は円に内接し,AB=22,BC=3,CD=2,DA=1 である。このとき次の問いに答えよ。
(1) ∠ABC+∠CDA を求めよ。なお度数法を用いること。
(2) ∠ABC を求めよ。なお度数法を用いること。
(3) BD を求めよ。
(4) 辺 AC と辺 BD の交点を H とする。∠AHD を求めよ。なお度数法を用いること。
第2問は図形の問題です。典型的なパターンの問題です。
まずは円に内接する四角形にまつわる事実を確認する問題です。
第2問 (1)
四角形 ABCD は円に内接するため,向かい合う角の大きさの和は 180∘ である。
円に内接する四角形に関連する問題として入試数学コンテスト第3回第3問があります。是非挑戦してみてください。
さて,この事実を用いると,∠ADC=180∘−∠ABC が得られます。この式は cos∠ADC=−cos∠ABC と意味します。このことと △ABC と △ADC に余弦定理を用いることで cos∠ABC と AC による式が2つ得られます。あとは方程式を解くだけです。
第2問 (2)
AC=x とおく。
△ABC について,余弦定理を用いると,
AB2+BC2−2AB⋅BCcos∠ABC8+9−122cos∠ABC=AC2=x2
である。
よって x2=17−122cos∠ABC である。
一方で △ACD について,余弦定理を用いると,
AD2+DC2−2AD⋅DCcos∠ADC=AC21+2−22cos∠ADC=x2
である。こうして x2=3−22cos∠ADC が得られる。
(1) より ∠ADC=180∘−∠ABC となり,x2=3−22cos∠ADC=3+22cos∠ABC が得られる。こうして
17−122cos∠ABC=3+22cos∠ABC
が得られる。これを解いて cos∠ABC=21 となる。0∘<∠ABC<180∘ であるから ∠ABC=45∘ となる。
とてもすっきりした値になりました。(3) も同じ手法で解くことができます。
第2問 (3)
余弦定理より
BC2+CD2−2BC⋅CDcos∠BCD=BD211−62cos∠BCD=BD2AB2+AD2−2AB⋅ADcos∠BAD=BD29−42cos∠BAD=BD2
である。∠BAD+∠BCD=180∘ に注意すると,
6211−BD2=−429−BD2
が得られ,これを解くと 5BD2=49,BD=575 となる。
最後の問題は2辺の成す角の大きさを求める問題です。2辺の交点を H とおきましょう。この H の角について三角比を計算し,角度を求めてみましょう。正弦定理と余弦定理を駆使して計算します。
第2問 (4)
辺 AC と 辺 BD の交点を H とおく。
(2) の式を用いることで
AC=3+22cos∠ABC=3+22⋅21=5
である。また cos∠ABC=21 である。
四角形 ABCD の外接円の半径を R とする。正弦定理より
2R=sin∠ABCAC=10
である。正弦定理・余弦定理を用いることで以下を得る。
sin∠CABcos∠CABsin∠ACDcos∠ACD=103=101=101=103
また円周角の定理を用いることで
∠AHD=∠BDC+∠ACD=∠BAC+∠ACD
であることがわかる。
sin∠AHD=sin(∠BAC+∠ACD)=sin∠BACcos∠ACD+cos∠BACsin∠ACD=103103+101101=1
であるため,∠AHD=90∘ が従う。こうして求めるものは 90∘ とわかる。
(4) にはブラーマグプタの公式を用いるおもしろい別解があります。
ブラーマグプタの公式とは,円に内接する四角形の四辺の長さが a,b,c,d のとき,その面積が
(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)(ただしs=2a+b+c+d)
と表されることを主張しています。
詳しくは
ブラーマグプタの公式とその2通りの証明
を参照してください。
第2問 (4)
2AB+BC+CD+DA=232+4
ブラーマグプタの公式より四角形 ABCD の面積 S は
S=(232+4−22)(232+4−3)(232+4−2)(232+4−1)=2−2+4⋅232−2⋅22+4⋅232+2=418−4⋅416−2=414=27
となる。
今 A,C から BD におろした垂線の足をそれぞれ HA,HC とすると,
S=△ABD+△CBD=21BD(AHA+CHC)
である。S=27,BD=575 より AHA+CHC=5 である。
さて (2) より
AC=3+22cos∠ABC=3+22⋅21=5
が得られる。
今 AH≧AHA,CH≧CHC(等号成立はそれぞれ A と HA,C と HC が一致) であることから
AC=AH+HC≧AHA+CHC=5
である。AC=5 より AH=AHA,CH=CHC すなわち A と HA,C と HC が一致することがわかる。こうして AC と BD は直交することがわかる。ゆえに ∠AHD=90∘ である。