入試数学コンテスト第5回第1問解答解説

第1問 [三角比・確率]

問題

サイコロを3回振り,出た目を順に a,b,ca,b,c とする。S=sinπasinπbcosπcS = \sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} \cos \dfrac{\pi}{c} とおく。

(1) 2π5=π3π52 \cdot \dfrac{\pi}{5} = \pi - 3 \cdot \dfrac{\pi}{5} を用いることで sinπ5\sin \dfrac{\pi}{5} を求めよ。

(2) S=0S=0 となる確率を求めよ。

(3) SS が整数となる確率を求めよ。

(4) SS が有理数となる確率を求めよ。

第1問は三角比と確率の問題です。

まずは頻出の sinπ5\sin \dfrac{\pi}{5} を計算させる問題です。

第1問 (1)

2π5=π3π52 \cdot \dfrac{\pi}{5} = \pi - 3 \cdot \dfrac{\pi}{5} より sin(2π5)=sin(π3π5)\sin \left( 2 \cdot \dfrac{\pi}{5} \right) = \sin \left( \pi - 3 \cdot \dfrac{\pi}{5} \right) である。

よって sin(2π5)=sin(π3π5)=sin(3π5)2sinπ5cosπ5=3sinπ54sin3π52cosπ5=34sin2π5=34(1cos2π5)=4cos2π51\begin{aligned} \sin \left( 2 \cdot \dfrac{\pi}{5} \right) &= \sin \left( \pi - 3 \cdot \dfrac{\pi}{5} \right)\\ &= \sin \left( 3 \cdot \dfrac{\pi}{5} \right)\\ 2 \sin \dfrac{\pi}{5} \cos \dfrac{\pi}{5} &= 3 \sin \dfrac{\pi}{5} - 4 \sin^3 \dfrac{\pi}{5} \\ 2 \cos \dfrac{\pi}{5} &= 3 - 4 \sin^2 \dfrac{\pi}{5}\\ &= 3 - 4 \left(1 - \cos^2 \dfrac{\pi}{5} \right)\\ &= 4 \cos^2 \dfrac{\pi}{5} -1 \end{aligned} であるため cosπ5\cos \dfrac{\pi}{5}4t22t1=0 4 t^2 -2t-1=0 の解である。

0<cosπ5<10 < \cos \dfrac{\pi}{5} <1 に注意すると cosπ5=1+54\cos \dfrac{\pi}{5} = \dfrac{1+ \sqrt{5}}{4} である。

sinπ5=1cos2π5\sin \dfrac{\pi}{5} = \sqrt{1 - \cos^2 \dfrac{\pi}{5}} より sinπ5=12554\sin \dfrac{\pi}{5} = \dfrac{1}{2} \sqrt{\dfrac{5-\sqrt{5}}{4}} である。

sinπ5\sin \dfrac{\pi}{5} の計算ですが,この手法の他に,角度が36,72,7236^{\circ},72^{\circ},72^{\circ} の二等辺三角形の辺の比が 1:1+52:1+521:\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}:\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} である事実を使う手法もあります。

詳しくは覚えておくと便利な三角比の値を読んでみてください。

(2) からは確率の問題になります。

必要になる三角比は cosπ1=1,sinπ1=0cosπ2=0,sinπ2=1cosπ3=12,sinπ3=32cosπ4=12,sinπ4=12cosπ5=1+54,sinπ5=12554cosπ6=32,sinπ6=12\begin{aligned} \cos \dfrac{\pi}{1} = -1 &, \sin \dfrac{\pi}{1} =0\\ \cos \dfrac{\pi}{2} = 0 &, \sin \dfrac{\pi}{2} =1\\ \cos \dfrac{\pi}{3} = \dfrac{1}{2} &, \sin \dfrac{\pi}{3} =\dfrac{\sqrt{3}}{2}\\ \cos \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{1}{\sqrt{2}} &, \sin \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{1}{\sqrt{2}}\\ \cos \dfrac{\pi}{5} = \dfrac{1+ \sqrt{5}}{4} &, \sin \dfrac{\pi}{5} = \dfrac{1}{2} \sqrt{\dfrac{5-\sqrt{5}}{4}}\\ \cos \dfrac{\pi}{6} = \dfrac{\sqrt{3}}{2} &, \sin \dfrac{\pi}{6} =\dfrac{1}{2} \end{aligned} です。早速解答を確認していきましょう。

第1問 (2)

cosπ2=0,sinπ=0\cos \dfrac{\pi}{2} =0, \sin \pi = 0 であるため,S0S \neq 0 となるのは,a2a \neq 2 かつ b2b\neq 2 かつ c1c \neq 1 のときである。余事象を考えると S=0S=0 となる確率は 1(56)3=912161 - \left(\dfrac{5}{6} \right)^3 = \dfrac{91}{216} である。

(2) は余事象を活用する問題でした。(3)(4)は丁寧に場合分けをしていく問題です。

第1問 (3)
  1. c=1c=1 のとき

S=sinπasinπbS = \sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} であるため,SS が整数となるのは,次のいずれか。

  • sinπa=sinπb=1\sin \dfrac{\pi}{a} = \sin \dfrac{\pi}{b} = 1 のとき。すなわち S=0S=0 のとき。
  • sinπa\sin \dfrac{\pi}{a}sinπb\sin \dfrac{\pi}{b}00 のとき。すなわち SS00 ではない整数のとき。

1つ目の出方は1通り,2つ目の出方は11通りある。

  1. c=2c=2 のとき

cosπc=0\cos \dfrac{\pi}{c} = 0 であるため,a,ba,b によらず SS は整数になる。よってこのときの出方は36通りになる。

  1. c=3,4,5,6c = 3,4,5,6 のとき

0<cosπc<10 < \cos \dfrac{\pi}{c} <1 であるため,SS が整数になるのは sinπa\sin \dfrac{\pi}{a}00 になるときか sinπb\sin \dfrac{\pi}{b}00 になるときである。固定した cc に対して出方は11通りとなる。

cc として4通り目を取ることができるため,この条件下で SS が整数になる目の出方は44通りであることがわかる。

以上をまとめると,SS が整数となるような目の出方は 1+11+36+44=921+11+36+44 = 92 となる。こうして求める確率は 92216=2354\dfrac{92}{216} = \dfrac{23}{54} だとわかる。

サインとコサインは1より大きい値を取らないことから,c=3,4,5,6c=3,4,5,6 のパターンが簡単に計算できます。しかし次の問題は SS が有理数となるときです。同じ手は通じません。より丁寧に場合分けをする必要があります。

第1問 (3)
  1. c=2c=2 のとき

cosπc=0\cos \dfrac{\pi}{c} = 0 であるため,a,ba,b によらず SS は有理数になる。よってこのときの出方は36通りになる。

  1. c=1,3c = 1,3 のとき

このとき,cosπc\cos \dfrac{\pi}{c}11 もしくは 12\dfrac{1}{2} なので,sinπasinπb\sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} が有理数であればよい。

S=0S=0 になるときを考える。これは (3) のときと同様であるため,11通りである。

S0S \neq 0SS が有理数であるときを考える。

sinπa,sinπb\sin \dfrac{\pi}{a} , \sin \dfrac{\pi}{b} がどちらも有理数の時は,a,b=1,6a,b = 1,6 のときである。よって4通りとなる。どちらも無理数で積が有理数となるときは,a=b=3a=b=3 もしくは a=b=4a=b=4 のときで2通りである。

上記をまとめて c=1,3c=1,3 のとき,SS が有理数となるのは (11+4+2)×2=34(11+4+2) \times 2 = 34 通りである。

  1. c=6c=6 のとき

S=sinπasinπb32S = \sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} が有理数となる場合を求める。

S=0S = 0 のときは aa もしくは bb11 のときであるので,出方は11通りである。

S0S \neq 0 のときは,sinπa,sinπb\sin \dfrac{\pi}{a}, \sin \dfrac{\pi}{b} の一方は 32\dfrac{\sqrt{3}}{2} でもう一方は(00 ではない)有理数になるときを考えればよい。32\dfrac{\sqrt{3}}{2} となるのは 33 が出たときで,(00 ではない)有理数となるのは 2,62,6 が出たときである。よって出方は 1×2×2=41 \times 2 \times 2 =4 通りとなる。

以上を合わせると15通りとなる。

  1. c=4c = 4 のとき

32\dfrac{\sqrt{3}}{2}12\dfrac{1}{\sqrt{2}} に置き換えた場合であるため,c=6c=6 のときと同じである。よって15通り。

  1. c=5c=5 のとき

S=sinπasinπb1+54S = \sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} \cdot \dfrac{1+ \sqrt{5}}{4} が有理数となる場合を求める。

S=0S = 0 となるのはこれまでと同様に11通りである。

S0S \neq 0 で有理数となることはない。実際 sinπasinπb\sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b}51\sqrt{5}-1 に有理数を掛けたものになる必要があるが,各パターンを見たときそのようになる組み合わせはない。

よってこのときは11通りありえる。

以上をまとめると SS が有理数になる組み合わせは 36+34+15+15+11=11136+34+15+15+11 = 111 通りとなって,求める確率は 111216=3772\dfrac{111}{216} = \dfrac{37}{72} となる。

数え損ねをした人が多いようでした。例えば c=1,3c= 1,3 のうち片方の場合の数が入っていない解答や sinπasinπb=0\sin \dfrac{\pi}{a} \sin \dfrac{\pi}{b} = 0 となる場合の考慮ミスが見られます。

このようなタイプの問題を間違えないコツとして「計算用紙を贅沢に使う」というものがあります。これで惜しいミスがグッと減ります。