入試数学コンテスト第4回第5問解答解説

第5問[極限・積分]

第5問

nn を1以上の実数とする。座標平面上に四次関数のグラフ C:y=x42x3C:y=x^4-2x^3yy 軸との交点が n-n となる二次関数のグラフ DD がある。CCDD は異なる2点で接している。

(1) p,qp,qp<qp<q なる2つの実数とする。このとき,

pq(xp)2(xq)2  dx=N(qp)5 \int_p^q (x-p)^2 (x-q)^2 \; dx = N (q-p)^5

という式が成立する。NN を求めよ。

(2) CCDD の接点の xx 座標を α,β\alpha , \betaα<β\alpha <\beta)とする。このとき α+β\alpha + \betaαβ\alpha \beta を求めよ。

(3) CCDD によって囲われた領域の面積を SnS_n とする。limnnkSn\displaystyle \lim_{n \to \infty} n^k S_n が0以外の実数に収束する実数 kk とその収束値を求めよ。

第5問は積分と極限の問題です。

まずは有名公式に関する問題です。

第5問 (1)

pq(xp)2(xq)2  dx=pq(xp)2{(xp)+(pq)}2  dx=pq(xp)2{(xp)22(xp)(qp)+(qp)2}  dx=pq{(xp)42(qp)(xp)3+(qp)2(xp)2}  dx=[15(xp)512(qp)(xp)4+13(qp)2(xp)3]pq=15(qp)512(qp)5+13(qp)5=130(qp)5\begin{aligned} &\int_p^q (x-p)^2 (x-q)^2 \; dx \\ &= \int_p^q (x-p)^2 \{ (x-p) + (p-q) \}^2 \; dx\\ &= \int_p^q (x-p)^2 \{ (x-p)^2 - 2 (x-p) (q-p) + (q-p)^2 \} \; dx\\ &= \int_p^q \{ (x-p)^4 - 2 (q-p) (x-p)^3 + (q-p)^2 (x-p)^2 \} \; dx\\ &= \left[ \dfrac{1}{5} (x-p)^5 - \dfrac{1}{2} (q-p) (x-p)^4 + \dfrac{1}{3} (q-p)^2 (x-p)^3 \right]_p^q\\ &= \dfrac{1}{5} (q-p)^5 - \dfrac{1}{2} (q-p)^5 + \dfrac{1}{3} (q-p)^5\\ &= \dfrac{1}{30} (q-p)^5 \end{aligned}

よって N=130N = \dfrac{1}{30} である。

所謂1/6公式の一種です。 pq(xp)m(qx)n  dx=m!  n!(m+n+1)!(qp)m+n+1 \int_p^q (x-p)^m (q-x)^n \; dx = \dfrac{m! \; n!}{(m+n+1)!} (q-p)^{m+n+1} という一般化があります。ベータ関数の積分公式 も参照してみてください。

次の問題は接点の xx の座標に関する問題です。nn 次関数の接点の座標は,方程式の重解に対応します。これを用いることで,2つの方程式が得られます。これらの係数を比較することで,求めたい値を得ます。

第5問 (2)

f(x)=x42x3f(x) =x^4-2x^3 とおく。DD の式を y=ax2+bxny = ax^2 + bx -n とし g(x)=ax2+bxng(x) = ax^2 + bx -n とおく。

h(x)=f(x)g(x)h(x) = f(x) - g(x) とする。条件の CCDD が2点で接することから,y=h(x)y=h(x)xx 軸と異なる2点で接することになる。ゆえに h(x)=0h(x) = 0 は重解を2つ持つ。こうして x=αx=\alphax=βx=\beta はどちらも重解になる。

方程式 x42x3ax2bx+n=0x^4 -2x^3 -ax^2 -bx +n = 0(xα)2(xβ)2=0(x-\alpha)^2 (x-\beta)^2 = 0 となる。

(xα)2(xβ)2=x42(α+β)x3+(α2+4αβ+β2)x22(α2β+αβ2)x+α2β2\begin{aligned} &(x-\alpha)^2 (x-\beta)^2 \\ &= x^4 -2(\alpha + \beta) x^3 + (\alpha^2 + 4 \alpha \beta + \beta^2)x^2\\ &\quad - 2(\alpha^2 \beta + \alpha \beta^2)x + \alpha^2 \beta^2& \end{aligned} であるため,係数を比較すると

{2(α+β)=2α2β2=n\begin{cases} 2(\alpha + \beta) &= 2\\ \alpha^2 \beta^2 &= n \end{cases} となる。こうして {α+β=1αβ=±n\begin{cases} \alpha + \beta &= 1\\ \alpha \beta &= \pm \sqrt{n} \end{cases} が得られる。

以上より α,β\alpha , \beta は二次方程式 t2t±n=0t^2 - t \pm \sqrt{n} = 0 の2実数解となる。判別式を計算すると,それぞれ 14n1 \mp 4\sqrt{n} となり,これは正となる必要がある。n1n \geq 1 であるため,αβ=n\alpha \beta= \sqrt{n} のときは判別が負であり不適となる。こうして α+β=1,αβ=n\alpha +\beta =1 , \alpha \beta = -\sqrt{n} が得られる。

(3) は収束する条件を求める問題です。まず (1) を用いて SnS_n を計算しましょう。kknn の指数部分に登場します。 このようなケースは n0=1n^0 = 1 である事実がポイントです。

第5問 (3)

Sn=αβ{f(x)g(x)}  dx\displaystyle S_n = \int_{\alpha}^{\beta} \{ f(x) - g(x) \} \; dx である。

(αβ)2=(α+β)24αβ=1+4n(\alpha - \beta)^2 = (\alpha + \beta)^2 -4\alpha \beta = 1+4\sqrt{n} が成り立つため, Sn=αβx42x3ax2bx+n  dx=αβ(xα)2(xβ)2  dx=130(βα)5=130(1+4n)52\begin{aligned} S_n &= \int_{\alpha}^{\beta} x^4 -2x^3 -ax^2 -bx +n \; dx\\ &= \int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)^2 (x-\beta)^2 \; dx\\ &= \dfrac{1}{30} (\beta - \alpha)^5\\ &= \dfrac{1}{30} (1+4\sqrt{n})^{\frac{5}{2}} \end{aligned} と計算される。ゆえに nkSn=130(n25k+4n12+25k)52 n^k S_n = \dfrac{1}{30} (n^{\frac{2}{5} k} + 4 n^{\frac{1}{2} + \frac{2}{5}k})^{\frac{5}{2}} である。

12+25k>0\dfrac{1}{2} + \dfrac{2}{5}k >0 のとき n12+25k  (n)n^{\frac{1}{2} + \frac{2}{5}k} \to \infty \; (n \to \infty) である。

12+25k<0\dfrac{1}{2} + \dfrac{2}{5}k <0 のとき n25k+4n12+25k0  (n)n^{\frac{2}{5} k} + 4 n^{\frac{1}{2} + \frac{2}{5}k} \to 0 \; (n \to \infty)である。

こうして 12+25k0\dfrac{1}{2} + \dfrac{2}{5}k \neq 0 のとき,0以外の実数に収束することはない

12+25k=0\dfrac{1}{2} + \dfrac{2}{5}k =0 のとき,すなわち k=54k = - \dfrac{5}{4} のとき limnn54Sn=limn130(n12+4)52=130452=1615\begin{aligned} \lim_{n \to \infty} n^{-\frac{5}{4}} S_n &= \lim_{n \to \infty} \dfrac{1}{30} (-n^{\frac{1}{2}} + 4)^{\frac{5}{2}}\\ &= \dfrac{1}{30} 4^{\frac{5}{2}} = \dfrac{16}{15} \end{aligned} である。

以上より求めるべき kk54-\dfrac{5}{4} であり,収束値は 1615\dfrac{16}{15} である。

g(x)g(x) を計算してみましょう。a=(α2+4αβ+β2)=(α+β)22αβ=1+na = - (\alpha^2 +4\alpha \beta + \beta^2) = - (\alpha + \beta)^2 - 2 \alpha \beta = 1+\sqrt{n}b=2αβ(α+β)=22b = 2 \alpha \beta (\alpha + \beta) = -2 \sqrt{2} となります。こうして g(x)=(1+n)x22nxng(x) = (1+\sqrt{n})x^2 - 2\sqrt{n} x - n が得られます。

しかし解答を振り返ると,g(x)g(x) の式を求める必要はありませんでした。実際解く上で g(x)g(x) を計算し,そこから積分を考えるのは計算ステップが増えてミスの危険も増します。

あくまでもテクニック程度に留まりますが,「計算しやすいところで止めておく」というアイデアで計算ミスが大幅に減ります。

配点 25点

(1) [3点]

130\dfrac{1}{30}

(2) [各4点]

α+β=1αβ=n\alpha +\beta =1 \\ \alpha \beta = -\sqrt{n}

(3) [各7点]

k=54収束値  1615\begin{aligned} k=&-\dfrac{5}{4}\\ \text{収束値}&\;\dfrac{16}{15} \end{aligned}