入試数学コンテスト第4回第4問解答解説

第4問[複素平面]

第4問

複素数平面において,

z3+z+3=4 |z-\sqrt{3}|+|z+\sqrt{3}|=4

を満たす複素数 zz 全体を CC とする。

(1) α\alphaCC 上を動くとき,α\alpha の軌跡によって囲まれる部分の面積を求めよ。

(2) α\alphaCC 上を動くとき,αα\alpha |\alpha| の軌跡によって囲まれる部分の面積を求めよ。

第4問は複素平面の問題です。まずは二次曲線の複素平面における表示を翻訳する問題です。

第4問 (1)

CC は楕円である。長軸と短軸の長さをそれぞれ a,ba,b をする。

焦点は ±3\pm \sqrt{3} であるため,a2b2=3a^2 - b^2 = 3 である。焦点からの距離の和が4であるため,a=2a=2 である。これより b=1b=1 だとわかる。こうして求める面積は 2π2\pi であるとわかる。

次の問題は複素数の表示から媒介変数表示を計算し,積分をすることで面積を求める問題です。

第4問 (2)

α\alphaCC 上にあるとき,偏角を θ\theta ,動径を rr とすれば,ある実数 ϕ\phi が存在して α=2cosϕ+isinϕ=rcosθ+irsinθ \alpha=2\cos \phi +i\sin \phi=r\cos \theta+i r\sin \theta と表わされる。このとき, αα=r2cosθ+r2sinθ=2cosϕ3cos2ϕ+1+isinϕ3cos2ϕ+1\begin{aligned} \alpha|\alpha|&=r^2\cos\theta+r^2\sin\theta\\ &=2\cos\phi\sqrt{3\cos^2\phi+1}+i\sin\phi\sqrt{3\cos^2\phi+1} \end{aligned} である。実部と虚部をそれぞれ X,YX,Y をおくと, {X=2cosϕ3cos2ϕ+1Y=sinϕ3cos2ϕ+1\begin{cases} X=2\cos\phi\sqrt{3\cos^2\phi+1}\\ Y=\sin\phi\sqrt{3\cos^2\phi+1} \end{cases} となる。

対称性より X>0,Y>0X>0,Y>0 の部分の面積を4倍すればよい。X>0,Y>0X>0,Y>0 であるのは,0ϕπ20 \leqq \phi \leqq \dfrac{\pi}{2} のときである。

dXdϕ=2sinϕ3cos2ϕ+16sinϕcos2ϕ3cos2ϕ+1=12sinϕcos2ϕ+2sinϕ3cos2ϕ+1=2sinϕ(6cos2ϕ+1)3cos2ϕ+1dYdϕ=cosϕ3cos2ϕ+13sin2ϕcosϕ3cos2ϕ+1=3cos3ϕ+cosϕ3(cosϕcos3ϕ)3cos2ϕ+1=6cos3ϕ2cosϕ3cos2ϕ+1\begin{aligned} \dfrac{dX}{d \phi} &= -2\sin \phi \sqrt{3\cos^2 \phi +1} -\dfrac{6 \sin \phi \cos^2 \phi}{\sqrt{3\cos^2 \phi +1}}\\ &= - \dfrac{12 \sin \phi \cos^2 \phi + 2\sin \phi}{\sqrt{3 \cos^2 \phi +1}}\\ &=- \dfrac{2 \sin \phi (6 \cos^2 \phi + 1)}{\sqrt{3 \cos^2 \phi +1}}\\ \dfrac{dY}{d \phi} &= \cos \phi \sqrt{3 \cos^2 \phi +1} - \dfrac{3 \sin^2 \phi \cos \phi}{\sqrt{3 \cos^2 \phi +1}}\\ &= \dfrac{3 \cos^3 \phi + \cos \phi - 3(\cos \phi - \cos^3 \phi)}{\sqrt{3 \cos^2 \phi +1}}\\ &= \dfrac{6 \cos^3 \phi - 2\cos \phi}{\sqrt{3 \cos^2 \phi +1}}\\ \end{aligned} である。0<ϕ<π20 <\phi < \dfrac{\pi}{2} より sinϕ>0\sin \phi>0 であり,dXdϕ<0\dfrac{dX}{d \phi} < 0 である。

dYdϕ=0\dfrac{dY}{d\phi}=0 となるのは 6cos3ϕ2cosϕ=06 \cos^3 \phi - 2\cos \phi=0 であるときとなる。0<ϕ<π20 < \phi < \dfrac{\pi}{2} であるため,cosϕ=13\cos \phi = \dfrac{1}{\sqrt{3}} のときである。これを満たす ϕ\phiϕ0\phi_0 とおく。

YY について増減表を書くと次のようになる。

ϕ0ϕ0π2dYdϕ+0Ymax \begin{array}{|c|c c c c c|} \hline \phi&0& &\phi_0& &\dfrac{\pi}{2}\\ \hline \dfrac{dY}{d\phi}& &+&0&-&\\ \hline Y&&\nearrow& \mathrm{max} &\searrow&\\ \hline \end{array}

こうして図は次のようになる。

pic0401

求める面積は 媒介変数の積分404YdX=4π20YdXdϕdϕ=4π20sinϕ3cos2ϕ+12sinϕ(6cosϕ2+1)3cos2ϕ+1dϕ=80π2sin2ϕ(6cos2ϕ+1)dϕ=8[116(20ϕ4sin2ϕ3sin4ϕ)]0π2=5π\begin{aligned} &4 \int _0^4 YdX \\ =&4 \int _{\frac{\pi}{2}}^0 Y \dfrac{dX}{d\phi} d\phi \\ =& 4\int _{\frac{\pi}{2}}^0 \sin\phi\sqrt{3\cos^2\phi+1} \cdot \dfrac{-2\sin\phi(6\cos\phi^2+1)}{\sqrt{3\cos^2\phi+1}}d\phi \\ =& 8\int _0^{\frac{\pi}{2}} \sin^2 \phi (6\cos^2\phi+1)d\phi \\ =& 8\left[\dfrac{1}{16}\left(20\phi-4\sin 2\phi-3\sin 4\phi\right) \right]_0^{\frac{\pi}{2}}\\ =&5\pi \end{aligned} となる。

何も考えず面積を 04Y  dX\displaystyle \int_0^4 Y \;dX として答えの数値自体は問題ないのですが,議論的にはNGです。0ϕπ20 \leqq \phi \leqq \dfrac{\pi}{2}XX が単調でなければなりません。例えば pic0401 の場合はダメですね。

誤答例を1つ紹介します。

第4問 (2) 誤答例

X2+Y2=(3cos2ϕ+1)2X^2+Y^2 = (3\cos^2 \phi + 1)^2 より極形式は r=(3cos2ϕ+1)2r = (3\cos^2 \phi +1)^2 で得られる。ゆえに極形式の面積

S4=0π212r2  dϕ=120π2(9cos4ϕ+6cos2ϕ+1)  dϕ=598π\begin{aligned} \dfrac{S}{4} &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{1}{2} r^2 \; d\phi\\ &= \dfrac{1}{2} \int_0^{\frac{\pi}{2}} (9 \cos^4 \phi + 6 \cos^2 \phi + 1) \; d\phi\\ &= \dfrac{59}{8} \pi \end{aligned} である。

よって S=592πS= \dfrac{59}{2} \pi である。

どこがおかしいかわかりますか?

答えはズバリ「極形式は r=(3cos2ϕ+1)2r = (3\cos^2 \phi +1)^2 で得られる」という部分です。(X,Y)(X,Y) 中に出てくる ϕ\phiあくまでも媒介変数です。(X,Y)(X,Y) の偏角が ϕ\phi であるとは言っていません!

極形式の積分公式 S=12αβr  dθ S=\dfrac{1}{2} \int_{\alpha}^{\beta} r \; d\theta における θ\theta は偏角でないといけません。このため計算がおかしくなるわけです。

これを踏まえて修正した解法を紹介します。この解法では極形式から計算するのではなく,偏角 θ\thetaϕ\phi の関係を調べ,置換積分をすることで計算をします。

第4問 (2) 別解

(X,Y)(X,Y) の偏角を θ\theta をすると tanθ=YX=12tanϕ\tan \theta = \dfrac{Y}{X} = \dfrac{1}{2} \tan \phi である。

よって積分する変数を ϕ\phiθ\theta で入れ替えるとき,dθcos2θ=dϕ2cos2ϕ\dfrac{d\theta}{\cos^2 \theta} = \dfrac{d \phi}{2 \cos^2 \phi} が成り立ち,このとき積分区間は ϕ0π2θ0π2 \begin{array}{|c|c c c|} \hline \phi&0& \rightarrow &\frac{\pi}{2}\\ \hline \theta&0& \rightarrow &\frac{\pi}{2}\\ \hline \end{array} と変わる。また 1cos2θ=1+tan2θ=1+14tan2ϕ=34+14cos2ϕ\begin{aligned} \dfrac{1}{\cos^2 \theta} &= 1+\tan^2 \theta\\ &= 1 + \dfrac{1}{4} \tan^2 \phi\\ &= \dfrac{3}{4} + \dfrac{1}{4\cos^2 \phi} \end{aligned} となる。

以上を用いると面積は

S4=0π212(r(θ))2  dθ=0π212(r(ϕ))2(34+14cos2ϕ)1dϕ2cos2ϕ=0π212(3cos2ϕ+1)24cos2ϕ1+3cos2ϕdϕ2cos2ϕ=0π2(3cos2ϕ+1)dϕ=0π2(32cos2ϕ+52)dϕ=54π\begin{aligned} \dfrac{S}{4} &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{1}{2} (r(\theta))^2 \; d\theta\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{1}{2} (r(\phi))^2 \left( \dfrac{3}{4} + \dfrac{1}{4\cos^2 \phi} \right)^{-1} \dfrac{ d\phi}{2\cos^2 \phi}\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{1}{2} (3 \cos^2 \phi +1)^2 \dfrac{4\cos^2 \phi}{1+3\cos^2 \phi} \dfrac{d\phi}{2 \cos^2 \phi}\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \left( 3\cos^2 \phi + 1 \right) d\phi\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \left( \dfrac{3}{2} \cos 2\phi + \dfrac{5}{2} \right)d\phi\\ &= \dfrac{5}{4} \pi \end{aligned} となる。

と計算されるため S=5πS = 5\pi である。

こうして解が得られました。実際どちらの方法でも答えは変わりませんでしたね。

媒介変数や極形式にまつわる積分公式を使うときは,本当に適用していいのかチェックしてみましょう。

配点 25点

(1) [7点]

2π2\pi

(2) [18点]

5π5\pi