第5問
S={(x1,x2,x3)∈R3∣x12+x22+x32=1,x3=1}
とする。
S 上の点 p=(x1,x2,x3) に対して複素数 f(p) を
f(p)=1−x3x1+ix2
で定める(i は虚数単位)。
また, 複素数 α に対し, Cα を複素数平面における中心 α, 半径 1 の円とする。
(1) α=a+bi (a,b は実数)とおく。 p=(x1,x2,x3) に対して f(p) が Cα 上にあるための x1,x2,x3 の条件を a,b を用いて表せ。
(2) 「f(p) が Cα 上の点になるような p 全体がなす図形 Dα 」, つまり集合
Dα={p∈S∣f(p)∈Cα}
が, x1x2x3 空間で半径 21 の円になるような α を考える。
このような α 全体は複素数平面において円をなす。この円の中心の実部と虚部、および半径を求めよ。
空間図形の問題です.複素数が登場するものの,内容としては基本的な座標幾何の方法で解けるものです.(1)ではうまく式変形を進められるか,(2)では問題の言っていることを正しく読み取れるかがポイントです.
第5問(1)
α=a+bi(a,b は実数)とおくと,p=(x1,x2,x3)∈S に対して f(p) が Cα 上にあるための条件は
(1−x3x1−a)2+(1−x3x2−b)2=1
である.x3=1 よりこれは
(x1−a(1−x3))2+(x2−b(1−x3))2=(1−x3)2
と同値である.左辺は展開してx12+x22=1−x32を使うことで
x12−2ax1(1−x3)+a2(1−x3)2+x22−2bx2(1−x3)+b2(1−x3)2=x12+x22−2ax1(1−x3)−2bx2(1−x3)+(a2+b2)(1−x3)2=(1−x32)−2ax1(1−x3)−2bx2(1−x3)+(a2+b2)(1−x3)2=(1−x3)((1+x3)−(2ax1+2bx2)+(a2+b2)(1−x3))
と変形できる.x3=1だから,両辺を 1−x3 で割ることで
(1+x3)−(2ax1+2bx2)+(a2+b2)(1−x3)=1−x3
と同値変形できる.これを整理すると
2ax1+2bx2+(a2+b2−2)x3=a2+b2
となる.
ポイントは p∈S の条件 x12+x22=1−x32 と x3=1 を使って同値変形をしていく部分です.いろいろな項がうまく噛み合って,出てくる条件式は x1,x2,x3 の1次式として表すことができます.
次に(2)です.問題文が複雑なので,
- Dαはどういう図形なのか
- Dαが半径 21 の円になるのはいつか
に分けて考えていきます.
まずDαがどういう図形なのか考えてみます.(1)の結果から,p∈SがDα上にあるための必要十分条件は
2ax1+2bx2+(a2+b2−2)x3=a2+b2
です.これは x1x2x3 空間の平面の方程式なので,Dα は球面 S と平面の交わりとなります.
Dα の半径については,球面と平面が交わってできる円の半径が「球の半径」と「平面と球の中心の距離」を使って計算できることを使えば a,b の式として求めることができます.これにより α の条件が求まります.
第5問(2)
α=a+bi とおくと,Dα は方程式
2ax1+2bx2+(a2+b2−2)x3=a2+b2
で表される空間内の平面 Tα と,S の交わりとなる.
S が単位球面から N=(0,0,1) を抜いたものであることと,Tα が N を通らないことに注意する.
すると,平面 Tα と原点の距離を d≥0 とおいたとき,下図よりDα の半径は
1−d2
で与えられる.
よって求める条件は
1−d2=21
つまり
d=21
である.さらに点と平面の距離の公式により
d=4a2+4b2+(a2+b2−2)2a2+b2
だから,条件は
4a2+4b2+(a2+b2−2)2a2+b2=21
となる.a2+b2=∣α∣ を使って整理すると,
4∣α∣2+(∣α∣2−2)2∣α∣2=21⇔2∣α∣4=4∣α∣2+(∣α∣2−2)2⇔2∣α∣4=∣α∣4+4⇔∣α∣4=4⇔∣α∣=2
となる.よって求める α たちは複素数平面において中心 0 ,半径 2 の円をなす.
実は,この問題の f によって S と複素数平面は1対1に対応します.この球面と複素数平面を対応させる考え方をリーマン球面といいます.図形的には,下図のように「単位球面の北極 N から放った光によって,S の点とその平面への影を対応させる」ようなものになっています.