円運動とは|円運動における加速度・向心力・遠心力

日常の中には,「円運動」という力学的な現象が多く潜んでいます。

ジェットコースターなどに乗っていて,カーブに差し掛かったとき,外側に引っ張られるような感覚を感じたことがあるでしょう。ここで我々が感じている力は,円運動における遠心力です。

また,ハンマー投げの競技を見たことがあるでしょうか。競技者がハンマーをぐるぐる回している間,ハンマーは糸の張力が向心力となって,回り続けているのです。

他にも,等速円運動は 「単振動のまとめ」にあるように単振動と関係があります。

今回は,この円運動にまつわる関係式や力を導出をしていきます。

等速円運動とは

等速円運動とは,その名の通り,円周に沿った一定の速度の運動のことを指します。

等速円運動にまつわるいくつかの用語を紹介します。

角速度とは,1秒間に回転する角を表します。一般的に,ω  [rad/s]\omega \;\mathrm{[rad/s]} で表します。弧の長さは,半径と中心角の積であることを思い出すと,半径 rr の円周上を角速度 ω\omega で等速円運動する物体の速度 vvv=rωv = r\omega と表されます。

基本的に弧度法を用います。弧度法に関しては 「弧度法の意味と度数法に対するメリット」を参照してください。

ハンマー投げにおいては,角速度が同じでも,手が伸びていればいるほど半径が大きくなって,鉄球の速さが大きくなるのですね。

周期とは,等速円運動をしている物体が1周するのにかかる時間を表します。一般的に,TT で表します。半径 rr の円の円周は 2πr2 \pi r ですから,TT について vT=2πrvT = 2\pi r が成立します。表現を変えると,v=2πrTv = \dfrac{2 \pi r}{T} と表されます。

角速度と周期の式を見ていただくと,どちらも速度 vv が登場します。これより角速度か周期が分かれば,等速円運動の速度が定まるとわかりますね。これは角速度と周期がどちらも等速円運動の「速さ」の指標となっていることを意味します。 また,2つの式から角速度と周期は ω=2πT\omega = \dfrac{2\pi}{T} という式でつながっていることがわかります。

頻繁には用いませんが,物体が1秒間に円周上を回転する回数を 回転数といい,n[Hz]n\mathrm{[Hz]} で表します。n=1Tn = \dfrac{1}{T} となります。

等速円運動の加速度

円運動の加速度について考えてみましょう。「等速だから加速度は0だ!」というのは,あまりにも軽薄です。よく見ていただくと,等速円運動は速さこそ変わらないものの,向きは変わっていますから,そこには加速度が生じるのだと気付きます。

加速度の向きが,結論から言いますと,円の中心方向になります。

直観的には次の図をイメージすると良いでしょう。

pic01

数式を用いた説明もしましょう。

半径 RR の円周上を角速度 ω\omega で等速円運動をする物体の位置は,中心を (0,0)(0,0) とすると r(t)=(Rcosωt,Rsinωt)\boldsymbol{r}(t) = (R\cos \omega t , R\sin \omega t) と表されます。これの加速度は,d2rdt2\dfrac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} です。計算すると,

d2rdt2=ddt(ωRsinωtωRcosωt)=(ω2Rcosωtω2Rsinωt)=ω2r(t)\begin{aligned} \dfrac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} &= \dfrac{d}{dt} \left( \begin{array}{c} -\omega R\sin \omega t\\ \omega R\cos \omega t \end{array} \right)\\ &= \left( \begin{array}{c} -\omega^2 R\cos \omega t\\ -\omega^2 R\sin \omega t \end{array} \right)\\ &= - \omega^2 \boldsymbol{r} (t) \end{aligned}

となります。こうして 加速度が中心方向に向いていること がわかります。さらに,前述した角速度と速度に関する式 v=Rωv = R\omega を用いることで,加速度にまつわる重要な公式

a=vω=Rω2=v2R a = v \omega = R \omega^2= \dfrac{v^2}{R}

が導出されます。

実は等速ではなくても,一般に円運動において向心方向の加速度は上記のように得られます。ただしその場合 vvω\omega が時間変化をすることになります。証明の詳細は後述します。さて,これまでに述べてきた円運動の加速度にまつわるトピックをまとめましょう。

円運動の加速度

半径 RR の円周上を速さ vv で円運動する物体の加速度の向きは円の中心方向であり,その大きさは a=Rω2=v2R a = R\omega^2 = \dfrac{v^2}{R} である。

円運動の向心力

前の節で円運動する物体の加速度がわかりました。これを運動方程式に代入することで,等速加速度する物体に加わっている力について考察することができるようになります。

運動方程式は F=ma\boldsymbol{F} = m \boldsymbol{a} でした。これにより等速円運動する物体に加わる力の向きは,円の中心方向を向いているとわかります。これを向心力といいます。

運動方程式より向心力の大きさは ma=mRω2=mv2Rma = mR \omega^2 = m \dfrac{v^2}{R} と表されます。

向心力

半径 RR の円周上を速さ vv で円運動をしている物体には,円の中心向きの向心力が働き,その大きさは F=mRω2=mv2R F = mR\omega^2 = m\dfrac{v^2}{R} である。

円運動の遠心力

向心力について一通り理解したところで冒頭に述べたジェットコースターの例を思い出しましょう。簡単に考えるために円周上を曲がっていくことを考えましょう。円運動をしているジェットコースターには,中心方向に加速度があります。ということは,ジェットコースターに乗っている観測者から観測すれば,慣性力が働くことになります。

慣性力については
慣性の法則〜ニュートンの第1法則〜
で復習してください。

ジェットコースターで感じる力は,円運動における慣性力なのです。

このように円運動をしている物体とともに運動をしている観測者から見たときの慣性力を遠心力といいます。

遠心力は結局のところ慣性力ですから,向心力と同じ大きさで逆向きの力となります。したがって遠心力を FF とすると,F=mRω2=mv2RF = mR\omega^2 = m\dfrac{v^2}{R} です。

遠心力

半径 RR の円周上を速さ vv で円運動をしている物体に対して,円の中心向きと逆向きの慣性力である遠心力があり,その大きさは F=mRω2=mv2R F = mR\omega^2 = m\dfrac{v^2}{R} である。

具体例:糸にくくりつけた物体の円運動

例題の前に注意です。 向心力と遠心力を同時に考えてはいけません。 これは円運動を観測する視点がポイントになります。慣性を考えるときと同じような理屈です。

円運動を横から眺めるような観測系で議論をする場合は向心力を,円運動をしている物体とともに動く観測系で議論をする場合は遠心力を考えることになります。

例題

下図のように質量 mm の物体に長さ ll の糸をつけ,最下点で初速度 v0v_0 を与える。物体が円運動を続けるための v0v_0 を求めよ。

pic02

最上点を通過するときの物体に加わる力を,物体とともに運動する観測者からの視点で表す。

物体に加わる力は,重力・糸の張力・遠心力である。重力は mgmg である。張力は TT とおく。遠心力は mv2l\dfrac{mv^2}{l} である。つり合いの式は

T+mg=mv2l T + mg = \dfrac{mv^2}{l}

である。

初速度を与えるときの物体の位置を基準として,エネルギー保存の法則の式を書くと

12mv02=12mv2+2mgl \dfrac{1}{2} mv_0^2 = \dfrac{1}{2} mv^2 + 2mgl

である。これより v2=v024glv^2 = v_0^2 - 4gl が得られらめ,つり合いの式に代入し整理すると

T=mv024gllmg=mv024glgll=mv025gll\begin{aligned} T &= m \dfrac{v_0^2 - 4gl}{l} -mg\\ &= m\dfrac{v_0^2 - 4gl -gl}{l}\\ &= m\dfrac{v_0^2 - 5gl}{l} \end{aligned}

が得られる。ここで糸が張っていなければならないが,その条件は T0T\geqq 0 である。したがって円運動をする条件は v025gl0v_0^2 -5gl \geqq 0である。

したがって求めるべき式は v05glv_0 \geqq \sqrt{5gl} となる。

一般の円運動と加速度

前述した通り,等速とは限らない場合でも円運動の加速度は同じような式で表されることを説明します。

加速度の計算

半径 RR の円周上を円運動をする物体の位置は,中心を (0,0)(0,0) とすると r(t)=(Rcosθ(t),Rsinθ(t))\boldsymbol{r}(t) = (R\cos \theta (t) , R\sin \theta (t)) と表されます。このとき角速度は ω=ddtθ\omega = \dfrac{d}{dt} \theta と表されます。これを踏まえて加速度を計算しましょう。

v=drdt=ddt(Rcosθ(t)Rsinθ(t))=(θ(t)Rsinθ(t)θ(t)Rcosθ(t))=ω(Rsinθ(t)Rcosθ(t))\begin{aligned} \boldsymbol{v} &= \dfrac{d \boldsymbol{r}}{dt}\\ &= \dfrac{d}{dt} \left( \begin{array}{c} R\cos \theta (t)\\ R\sin \theta (t) \end{array} \right)\\ &= \left( \begin{array}{c} -\theta'(t) R\sin \theta (t)\\ \theta'(t) R\cos \theta (t) \end{array} \right)\\ &= \omega \left( \begin{array}{c} -R\sin \theta (t)\\ R\cos \theta (t) \end{array} \right)\\ \end{aligned}

であって

a=dvdt=ωddt(Rsinθ(t)Rcosθ(t))+dωdt(Rsinθ(t)Rcosθ(t))=ω(θ(t)Rcosθ(t)θ(t)Rsinθ(t))+dωdt(Rsinθ(t)Rcosθ(t))=ω2(Rcosθ(t)Rsinθ(t))+dωdt(Rsinθ(t)Rcosθ(t))=ω2r+Rdωdt(sinθ(t)cosθ(t))\begin{aligned} \boldsymbol{a} &= \dfrac{d \boldsymbol{v}}{dt}\\ &= \omega \dfrac{d}{dt} \left( \begin{array}{c} -R\sin \theta (t)\\ R\cos \theta (t) \end{array} \right) +\dfrac{d\omega}{dt} \left( \begin{array}{c} -R\sin \theta (t)\\ R\cos \theta (t) \end{array} \right)\\ &= \omega \left( \begin{array}{c} -\theta'(t) R\cos \theta (t)\\ -\theta'(t) R\sin \theta (t) \end{array} \right) +\dfrac{d\omega}{dt} \left( \begin{array}{c} -R\sin \theta (t)\\ R\cos \theta (t) \end{array} \right)\\ &= -\omega^2 \left( \begin{array}{c} R\cos \theta (t)\\ R\sin \theta (t) \end{array} \right) +\dfrac{d\omega}{dt} \left( \begin{array}{c} -R\sin \theta (t)\\ R\cos \theta (t) \end{array} \right)\\ &= - \omega^2 \boldsymbol{r} +R\dfrac{d\omega}{dt} \left( \begin{array}{c} -\sin \theta (t)\\ \cos \theta (t) \end{array} \right) \end{aligned} と得られます。

一般の場合,加速度は「等加速度円運動のときの加速度」+「オマケ」となります。

「オマケ」のベクトルは向心方向と垂直,つまり円の接線方向の力となります。

運動方程式

運動方程式について調べましょう。

向心方向のベクトルの大きさを観察すると Rω2=v2RR\omega^2 = \dfrac{v^2}{R} であることは,等加速度円運動と同じです。

よって,運動方程式自体は同じく mv2R=F向心方向 m \dfrac{v^2}{R} = F_{\text{向心方向}} と表されます。

等加速度円運動は FF が向心方向のみの力で,非等加速度の場合は FF が接線方向にも「増える」ことがポイントとなります)

遠心力はあくまでも慣性力であり,円運動している物体とともに動く観測系を用いたときにしか現れないことに注意しましょう。