導体棒と誘導起電力

更新日時 2021/11/12

この記事では,動く導体棒を含む回路について扱います。まず,導体棒に生じる,ローレンツ力による誘導起電力を紹介した後,導体棒を含む回路についての,非常に有名で,重要な例題を紹介します。

目次
  • ローレンツ力による導体棒の誘導起電力

  • 導体棒を含む回路の例題〜有名題〜

  • 導体棒を含む回路の例題〜エネルギー収支〜

ローレンツ力による導体棒の誘導起電力

磁場中で運動する導体には一般に誘導起電力が生じます。誘導起電力とは,電荷に対して仕事をし,電荷を偏らせる力のことです。 一般に,磁場中で運動する導体中の電荷はローレンツ力を受けます。その結果,電荷に対して仕事がなされ,電荷分布が偏ることになります。

ローレンツ力については,以下の記事を参照してください。

電場・磁場・電荷密度・電流密度|電磁気学における基本的な物理量

ローレンツ力による誘導機電力

これから,導体棒中に生じる誘導起電力の向きと,大きさを導出します。上の図を見てください。今,図のように,磁場中で運動する導体を考えます。磁場の向きは青線で,速度の向きはグレーの線で表されています。この時,導体中の正電荷 qq は, qv×B q\boldsymbol{v\times B} のローレンツ力を受けます。正電荷は導体中に束縛されている(導体の外に出ることはない)ので,結局正電荷は導体と平行な成分のローレンツ力を受けて運動することになります。

導体棒の長さを ll とすると,この時正電荷は単位正電荷あたり, l(v×B)水平 l(\boldsymbol{v\times B})_{水平} の仕事をされることになります。

十分時間が経って,電荷が偏ったとき,導体棒中に電位差が生じています。ローレンツ力とのつりあいを考えると,電位差 VV は, Vl(v×B)水平=0V=l(v×B)水平 V-l(\boldsymbol{v\times B})_{\text{水平}}=0\\ \therefore V=l(\boldsymbol{v\times B})_{\text{水平}} となることがわかります。

回路に電流が流れている状態などを考える場合,電荷の移動が完了した状態は存在しません。しかし,電荷は同様のローレンツ力を受けるので,結局 V=l(v×B)水平V=l(\boldsymbol{v\times B})_{\text{水平}} の電位差があると考えて計算して良いことになります。

特に導体棒と速度.磁場がそれぞれ直行している場合,

誘導機電力の公式

V=vBl V=vBl

となります。大学入試などの問題では,このケースが多く見られます。

導体棒を含む回路の例題〜有名題〜

例題

導体棒と回路 図のように,水平面上に2本の導体レールを間隔 ll で平行に置く。左端では,抵抗値 RR の抵抗と,起電力 VV の電池がある。また一様で時間変化のない,大きさ BB の磁場を紙面手前から奥の向きにかける。ここで,導体棒を図のように設置したところ,導体棒は運動を始めた。ここでは電流のつくる磁場は無視できるものとし,抵抗値 RR の抵抗以外で生じるエネルギー散逸(摩擦や抵抗など)は無視できるものとする。また図の左側を運動の正方向とする。

(1)導体棒の速さを vv とした時,導体棒に生じる誘導機電力を求めよ。

(2)回路に流れる電流の方向を適当に定め,キルヒホッフの法則にしてがって回路方程式を表せ。

(3)導体棒の運動方程式を表せ。

(4)十分時間が経った時,導体棒の速度は一定となった。この時の導体棒の速度を求めよ。

解答

電流と回路方程式

(1)前節で紹介した公式を用いて,vBlvBl となる。また,向きは v×B\boldsymbol{v\times B} を考えると,図の向きになる。

(2)図のように電流の向きを設定し,電流の大きさを II とする。この時回路方程式は, V=IR+vBl V=IR+vBl となる。

(3)電流 II が磁場から受ける力は一般に,l(I×B)l\boldsymbol(I\times B) である。この場合は向きは左側,大きさは lIBlIB なので,運動方程式は mv˙=lIB m\dot v=lIB となる。

(4)十分時間が経った時,導体棒の速度は一定となったので,v˙=0\dot v=0 また,運動方程式にこれを代入すると,I=0I=0 がわかる。これを回路方程式に代入すると, V=vBlv=vlB V=vBl\\ \therefore v=\dfrac{v}{lB} を得る。

キルヒホッフの法則については,以下の記事を参照してください。

キルヒホッフの法則の解説と例題

(4)の別解〜微分方程式〜

前問において,回路方程式と運動方程式から,II を消去してみます。すると, mv˙=b2l2R(vVBl) m\dot v=-\dfrac{b^2l^2}{R}\left(v-\dfrac{V}{Bl}\right) となります。この微分方程式は変数分離法で解くことができて, v=exp(B2l2mRt)+VBl v=\exp\left(-\dfrac{B^2l^2}{mR}t\right)+\dfrac{V}{Bl} となります。ここで tt\to\infty とすると,vVBlv\to\dfrac{V}{Bl} となることがわかります。導体棒の問題では,この形の微分方程式がよく出てきます。

変数分離法による微分方程式の解放については,以下の式を参照してください。

変数分離形の微分方程式の解法と例題

導体棒を含む回路の例題〜エネルギー収支〜

例題

前問で導出した回路方程式と運動方程式について,エネルギー終始の式を導出し,それらを辺々足すことで,系全体のエネルギー収支を考察せよ。(回路方程式については両辺に II を,運動方程式については両辺に vv をかけるとよい。)

解答

回路方程式の両辺に II をかけて IV=RI2+lvBI IV=RI^2+lvBI を得る。

運動方程式の両辺に vv をかけて ddt(12mv2)=lIBv \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2\right)=lIBv を得る。これら2式を辺々足すと, IV=RI2+ddt(12mv2) IV=RI^2+\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2\right) を得る。( lIBvlIBv の項が相殺されていることに注意)

左辺第1項は電池の仕事率,右辺第1項は抵抗で失われるジュール熱,右辺第2項は導体棒の運動エネルギーを表している。

磁場によるローレンツ力は速度と常に直行しているため,仕事をしない。従って,lIBvlIBv の項は消えている。

導体棒の問題は大学入試で頻出です。まず回路方程式と運動方程式をしっかり書くようにしましょう。

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