滑車の例題|張力が登場する運動方程式の具体例

更新日時 2021/10/27

この記事では,張力が登場する運動方程式の具体例として,糸と滑車からなる系の運動を解説します。まず定滑車,動滑車や束縛条件といった基礎的な概念について紹介し,その後束縛条件をどのように求めるかを解説します。最後に滑車の問題を2題扱います。

目次
  • 定滑車・動滑車とは

  • 束縛条件・束縛運動とは

  • 滑車とおもりの運動

  • 定滑車と動滑車の問題

  • 天井が動く場合の定滑車と動滑車の問題

定滑車・動滑車とは

滑車の運動を考えていく前に,2種類の滑車の定義を紹介します。以下の図を見てください。 定滑車と動滑車 左側に固定されている滑車を定滑車,右側の固定されていない滑車を動滑車といいます。動滑車は糸の滑りに対応して運動します。

束縛条件・束縛運動とは

私たちが運動方程式を立てる時,注意するべきこととして,物体にはたらく力や座標系のとり方に加えて,系の幾何学的制限があります。この系の幾何学的制限を束縛条件と言います。また,束縛条件を受けながら行われる運動のことを束縛運動といいます。

以下の図を見てください。 アトウッドの器械

定滑車の上に糸があり,その両端におもりがついています。糸は伸び縮みせず,長さは一定であるとします。この場合,系はどんな束縛条件を受けるでしょうか。以下でこのことについてみていきます。

滑車とおもりの運動

上の系において,実際に運動方程式を立ててみましょう。この記事では,糸は十分軽く,滑車と糸の間の摩擦は無視できるとします。 アトウッドの器械と運動方程式

左側のおもりの質量を m1m_1,右側のおもりの質量を m2m_2 とします。おもりにはたらく力は重力 gg と,張力 TT のみです。原点を天井の位置にとり,左側のおもりの位置の座標を x1x_1,右側のおもりの位置の座標を x2x_2 とすると,運動方程式は となります。 次に束縛条件を考えてみましょう。

考え方1:天井から見たおもりの距離

糸の長さが一定ということは,天井と2つのおもりの間の距離の合計が一定であるということになります。今,天井の座標は 00,2つのおもりの座標はそれぞれ x1,x2x_1,x_2 なので,束縛条件は (x10)+(x20)=x1+x2=一定 \begin{aligned} (x_1-0)+(x_2-0)&=x_1+x_2\\&=一定 \end{aligned} となります。

考え方2:天井から見た相対速度

糸の長さが一定ということは,おもり1が上に上がってくるのと同じ速さで,おもり2が下に下がっていくという考え方もできます。つまり,天井から見たおもり1と2の相対速度は,逆向き同じ大きさということです。これを式にすると, (x1˙0)+(x2˙0)=x1˙+x2˙=0 \begin{aligned} (\dot{x_1}-0)+(\dot{x_2}-0)&=\dot{x_1}+\dot{x_2}\\&=0 \end{aligned} となり,考え方1を1回微分したものが得られます。

考え方3(発展):仮想仕事の原理

第3の考え方として,やや発展的ですが,仮想仕事の原理とよばれるものを考えてみます。今,おもり1が上にほんの少しだけ上がったと仮定します。具体的には,微小時間 dtdt の間に速さ x1˙\dot{x_1} で上に動いたとしてみます。すると,糸が x1˙dt\dot{x_1}dt だけたるみます。おもり2も同様に下に動いたとすると,糸はおもり2の運動で x2˙dt\dot{x_2}dt だけ伸びます。この2つの運動を考えると,糸がたるみも伸びもせずに元の長さを保つ条件は, x1˙dt+x2˙dt=0 \dot{x_1}dt+\dot{x_2}dt=0 であることがわかります。両辺を dtdt でわると,考え方1,2と同値な式を得ることができます。

以上の考え方から,糸の束縛条件は x1˙+x2˙=0 \dot{x_1}+\dot{x_2}=0 で表されることがわかりました。これを1階微分して加速度の形に直し,上で求めた運動方程式と連立することで,未知数である x1,x2,Tx_1,x_2,T を得ることができます。

定滑車と動滑車の問題

例題

以下のような系について,おもりと動滑車についての運動方程式及び束縛条件の式をたて,張力 TT を求めよ。 ただし,おもりの質量を mm,動滑車の質量を MM とする。

定滑車と動滑車

解答

運動方程式は mx¨=mgTMX¨=Mg2T \begin{aligned} m\ddot{x}=mg-T\\ M\ddot{X}=Mg-2T \end{aligned} 束縛条件を考え方1で考える。 動滑車が下に動くと,糸は動滑車の左と右の両方が伸びることに注意して,相対変位を考えると, (x0)+2(X0)=x+2X=一定 \begin{aligned} (x-0)+2(X-0)&=x+2X\\&=一定 \end{aligned} 両辺を2階微分することで,束縛条件の式 x¨+2X¨=0 \ddot{x}+2\ddot{X}=0 を得る。これを運動方程式と連立させて, x¨=4m2M4m+MgX¨=M2m4mMgT=3Mm4m+Mg \begin{aligned} \ddot{x}=\dfrac{4m-2M}{4m+M}g\\ \ddot{X}=\dfrac{M-2m}{4m+M}g\\ T=\dfrac{3Mm}{4m+M}g \end{aligned} を得る。

天井が動く場合の定滑車と動滑車の問題

例題

以下のような系について,天井の変位は X(t)X(t) で表されるとする。(天井は動いている)この時,系の束縛条件を求めよ。 滑車 例題

解答

考え方1で束縛条件を考える。動滑車についているおもりは,動くと右側の糸,左側の糸の両方が伸び縮みする。よって (x1X(t))+2(x2X(t))+(x3X(t))=x1+2x2+x34X(t)=一定 \begin{aligned} (x_1-X(t))+2(x_2-X(t))+(x_3-X(t))&=x_1+2x_2+x_3-4X(t) \\&=一定 \end{aligned} 両辺を1階微分して,束縛条件として x1˙+2x2˙+x3˙4X(t)˙=0 \dot{x_1}+2\dot{x_2}+\dot{x_3}-4\dot{X(t)}=0 を得る。

[補足] アトウッドの器械

アトウッドの器械 上の図のように,両端におもりを繋いだ糸を定滑車にかけた装置のことを,アトウッドの器械と言います。アトウッドの器械という名称は考案者である18世紀の数学者,ジョージ•アトウッドにちなんで名付けられました。当初はニュートンの運動方程式の検証のために用いられましたが,現在では糸や滑車を用いた運動の例として教育的に用いられています。

滑車の束縛条件はややこしいですが,紹介した3つの考え方のいずれかを正しく適応すれば,必ず求めることができます。

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