1. 高校生から味わう理論物理入門
  2. 空気抵抗を運動方程式から解析する

空気抵抗を運動方程式から解析する

更新日時 2021/05/04

大きさが速度に比例する力である「空気抵抗」の働く自由落下や放物運動を,運動方程式から考えて議論します。また,終端速度という概念についても説明します。

目次
  • 空気抵抗の大きさは速度に比例する

  • 運動方程式から自由落下運動を解析する

  • 終端速度

  • 運動方程式から放物運動を解析する

空気抵抗の大きさは速度に比例する

止まっている空気中を,速度 v\boldsymbol{v} で動く質量 mm の質点に対して,次の力が働くとして議論することがあります:

空気抵抗

止まっている空気中を,速度 v\boldsymbol{v} で動く質量 mm の質点には,空気抵抗f=kv \boldsymbol{f} = -k \boldsymbol{v} が働くとして計算することがある。ただし,kk は比例係数である。

高校物理では,空気抵抗は働かないものとして議論することが多々ありますが,たまに空気抵抗についても含めて議論を要求されることがあります。

空気抵抗は理論的に解析するのが難しく,本来は簡単な数式一つで表されるようなものではありません。ただ,上記のように簡単化してもある程度は正しく運動を予測できることが実験的に知られているので,この記事ではそのような単純な空気抵抗が働くモデルを議論してみたいと思います。

ちなみに,上記で定義される空気抵抗は一般に「粘性抵抗」と呼ばれる抵抗力であり,流体の摩擦に起因する項であることが知られています。この他にも,速度の2乗に比例する「慣性抵抗」と呼ばれるものなどがありますが,これについては機会があれば別の記事で紹介しようと思います。

運動方程式から自由落下運動を解析する

一次元自由落下

t=0t = 0 において,v=0v = 0 という初期状態にある質点の,一般の時刻における速度を求めよ。質点は一次元で運動するものとする。

この質点には,重力と空気抵抗が働くとすると,運動方程式は以下のようになります: mdvdt=mgkv m \dfrac{d{v}}{d{t}} = mg - kv dvdt=km(vmgk) \therefore \dfrac{d{v}}{d{t}} = - \dfrac{k}{m}\left(v - \dfrac{mg}{k}\right) ただし,重力が作用する方向を正として考えています。

さて,この微分方程式を変数分離して,vv にかかわる部分を左へ,tt にかかわる部分を右へ持ってくれば, dvvmgk=kmdt \dfrac{dv}{v - \dfrac{mg}{k}} = - \dfrac{k}{m} dt 両辺を積分して, logvmgk=kmt+C \log \left|v - \dfrac{mg}{k}\right| = - \dfrac{k}{m} t + C ただし,CC は積分定数です。これを変形していくと, vmgk=ekmt+Cv=Dekmt+mgk\begin{aligned} v - \dfrac{mg}{k} &= e^{-\frac{k}{m}t + C}\\ v &= D e^{-\frac{k}{m}t} + \dfrac{mg}{k} \end{aligned} ここで,eC=De^C = D として積分定数を置き換えています。これが,速度に関する微分方程式の一般解です。初期条件より, 0=D+mgk 0 = D + \dfrac{mg}{k} D=mgk \therefore D = -\dfrac{mg}{k} これを一般解に代入すれば, v=mgk(1ekmt) v = \dfrac{mg}{k}\left(1 - e^{-\frac{k}{m}t}\right) と一般の速度を求めることができます。

終端速度

前節で求めた式をよくみてみましょう。かっこの中身は, 1ekmt 1 - e^{-\frac{k}{m}t} となっています。t=0t = 0 のときは,ekmte^{-\frac{k}{m}t}11 ですから,vv00 からスタートします。その後,tt が大きくなるにつれ,ekmte^{-\frac{k}{m}t} は単調に減少していき,00 に無限に漸近していきます。つまり,1ekmt1 - e^{-\frac{k}{m}t} という固まりは,どんどん 00 から 11 に無限に近づいていきます。

ということは,vvt=0t = 0 から tt \to \infty にかけて,00 から mgk\dfrac{mg}{k} という値に無限に近づいていくということになります。vvmgk\dfrac{mg}{k} という値よりは大きくなることは絶対にないということです。

vv が越えられない,vv の漸近先の速度のことを,物理では「終端速度」と呼びます。

ちなみに,速度の式をグラフ上で表してみると,次のようになり,実際に mgk\dfrac{mg}{k} に向かって漸近することがわかります:

終端速度

[Topic] 雨粒の終端速度について

実験によって,比例係数 kk は雨粒の半径 rr に比例することが知られています。水の密度が一定であることを考えると,質量 mmr3r^3 に比例するはずなので,終端速度 vv は, v=mgkr3r=r2 v = \dfrac{mg}{k} \propto \dfrac{r^3}{r} = r^2 と計算でき,r2r^2 に比例することが導けます。

ただ,半径が大きくなってくると,空気抵抗は,粘性抵抗より慣性抵抗が支配的になり,速度の2乗に比例する項が大きく影響することが知られています。

運動方程式から放物運動を解析する

平面における放物運動

xyxy 平面上,y-y 方向に一様重力がかかる場において,初速度 v0v_0,仰角 θ\theta で質点を投げ出す。このときの xyxy 平面上での運動を考えよ。

平面における放物運動

x,yx,y 方向について以下のような運動方程式が立てられます: {mdvxdt=kvxmdvydt=kvymg \begin{cases} m \dfrac{d{v_x}}{d{t}} = -kv_x\\ m \dfrac{d{v_y}}{d{t}} = -kv_y -mg\\ \end{cases} これを変形して, {dvxdt=kmvxdvydt=km(vy+mgk) \begin{cases} \dfrac{d{v_x}}{d{t}} = -\dfrac{k}{m} v_x\\ \dfrac{d{v_y}}{d{t}} = -\dfrac{k}{m} \left(v_y + \dfrac{mg}{k}\right) \end{cases} 自由落下を議論した時と同様に議論することで,これらの微分方程式を解くことができて, {vx=C1ekmtvy=C2ekmtmgk \begin{cases} v_x = C_1 e^{-\frac{k}{m}t}\\ v_y = C_2 e^{-\frac{k}{m}t} - \dfrac{mg}{k} \end{cases} ここで,C1,C2C_1,C_2 は積分定数です。t=0t = 0 における速度の初期条件を考慮すれば, {C1=v0cosθC2=v0sinθ+mgk \begin{cases} C_1 = v_0 \cos \theta\\ C_2 = v_0 \sin \theta + \dfrac{mg}{k} \end{cases} これらを一般解に代入して {vx=v0cosθekmtvy=(v0sinθ+mgk)ekmtmgk \begin{cases} v_x = v_0 \cos \theta \cdot e^{-\frac{k}{m}t}\\ v_y = \left(v_0 \sin \theta + \dfrac{mg}{k}\right)e^{-\frac{k}{m}t} - \dfrac{mg}{k} \end{cases} これらについて,位置の初期条件を考慮しながら積分すれば {x=mv0kcosθekmt+mv0kcosθy=mk(v0sinθ+mgk)ekmtmgkt+mk(v0sinθ+mgk) \begin{cases} x = -\dfrac{mv_0}{k} \cos \theta \cdot e^{-\frac{k}{m}t} + \dfrac{mv_0}{k} \cos \theta\\ y = -\dfrac{m}{k}\left(v_0 \sin \theta + \dfrac{mg}{k}\right)e^{-\frac{k}{m}t} - \dfrac{mg}{k}t + \dfrac{m}{k}\left(v_0 \sin \theta + \dfrac{mg}{k}\right) \end{cases} と位置についての解を求めることができます。これらをプロットすると,以下のようになります:

放物運動プロット

青,赤,緑の線は,それぞれ仰角が 20,45,7020^\circ, 45^\circ, 70^\circ の軌跡を表しており,実線は空気抵抗あり,破線は空気抵抗なしの放物運動を表しています。

グラフをみてわかる通り,後半にかけて失速して落ちていくことがわかります。それに対し,前半部分は空気抵抗の有無はほぼ関係なく,2種類のグラフはほぼ一致しています。このことは数式から瞬時に予言できます。

exe^x をマクローリン展開すると, ex=1+x+x22+ e^x = 1 + x + \dfrac{x^2}{2} + \cdots とかけます。xx の絶対値が小さいうちは ex1+x e^x \approx 1 + x と近似できます。これを用いて x,yx,y を計算し直すと,自由落下の式: {x=v0cosθty=12gt2+v0sinθt \begin{cases} x = v_0 \cos \theta \cdot t\\ y = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0 \sin \theta \cdot t \end{cases} と一致します。これゆえに前半部分は空気抵抗の有無は関係なくなります。

ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」では,ふっとびの軌道が空気抵抗有りの放物線になっているらしいです。

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