うなりの公式と例題

波の基本的な現象の一つである「うなり」について解説します。

この記事は波の「位相(差)」を理解していることが前提となります。位相差についての理解が曖昧な方は先にこちらの記事をご覧ください。→位相(位相差・同位相・逆位相)

うなりとは

複数の波が重なり合って新しい波形を作るとき,波は互いに強め合ったり弱め合ったりします。このような波どうしの相互作用のことを波の干渉といいます。

うなりは,この干渉の一部です。2つの振動数が異なる波の合成波の振幅が,周期的に変動する現象をうなりと言います。

二つのおんさ

上図の場合,2つの波の位相差は

ϕ(t)=θ1θ2=2π(f1f2)t+(α1α2) \phi(t) = \theta_1 - \theta_2 = 2\pi (f_1-f_2)t+(\alpha_1-\alpha_2)

で表されます。

ある時間 Δt\Delta t 経つ間における位相差の変化は,

ϕ(t1+Δt)ϕ(t1)=2π(f1f2)Δt \phi(t_1 + \Delta t) - \phi(t_1) = 2\pi (f_1 - f_2)\Delta t

であるから, 位相差 ϕ\phi は周期 T=1f1f2T = \dfrac{1}{|f_1-f_2|} ごとに,その大きさを連続的に 2π2\pi ずつ変えることがわかります。

うなりの公式

前節における議論から,うなりの現象では次の公式が成り立ちます。

うなりの公式

振動数 f1f_1 と振動数 f2f_2 の波の合成波でうなりが観測されるとき,うなりの周期 TT と振動数 ff はそれぞれ

T=1f1f2T = \dfrac{1}{|f_1-f_2|}

f=f1f2f = |f_1-f_2|

と表される。

※振動数のことを周波数と表現することもありますが, 物理的にはどちらも全く同じ意味です。振動数と周波数は状況に応じて使い分けられる慣例があります。

この公式を以下で定性的に考察していきましょう。

うなりの定性的な考察

振動数 f1f_1 と振動数 f2f_2の異なる波の合成波を考えましょう。

ただし f1=1T1,f2=1T2,f1<f2f_1 = \dfrac{1}{T_1}, f_2 = \dfrac{1}{T_2}, f_1 < f_2 とします。

はじめ,2つの波が逆位相である時を考えましょう。

T2T_2T1T_1 よりわずかに小さいので,何周期かすると2つの波がちょうど半周期分だけずれて,同位相になります。

この時,2つの波は強め合います。

再び同じ時間だけ経つと,2つの波が再びちょうど波周期分だけずれて,今度は逆位相になります。

この時,2つの波は弱め合います。

この1回分の「強め合い・弱め合い」をうなりと呼んでいるわけです。

うなりの定量的な考察

振幅が等しい2つの進行波 y1y_1, y2y_2 を考えます。

図中の点 AA と点 BB の間で合成波 Y=y1+y2Y = y_1 + y_2 を観測します。

2点からの波

それぞれ, 振動数が f1f_1, f2f_2, 波長が λ1\lambda_1, λ2\lambda_2, 初期位相が α1\alpha_1, α2\alpha_2 であるとし, y1y_1 は右向き(+x+x 方向)に, y2y_2 は左向き(x-x 方向)に進行します。

y1y_1, y2y_2 はそれぞれ以下のように表されます。

y1=asin{2π(f1txλ1)+α1} y_1 = a \sin \left\{2\pi \left(f_1t - \dfrac{x}{\lambda_1} \right) + \alpha_1 \right\}

y2=asin{2π(f2t+xλ2)+α2} y_2 = a \sin \left\{2\pi \left(f_2t + \dfrac{x}{\lambda_2} \right) + \alpha_2 \right\}

初期位相のずれに関して,

Δ+=12(α2+α1)Δ=12(α2α1) \varDelta_+ = \dfrac{1}{2} (\alpha_2+\alpha_1) \\ \varDelta_- = \dfrac{1}{2} (\alpha_2-\alpha_1)

を定義すると, 合成波 Y=y1+y2Y = y_1 + y_2 は以下のように表されます。

Y=y1+y2=2acos{π(f2f1)t+π(λ1+λ2)x+Δ}sin{π(f1+f2)tπ(λ1λ2)x+Δ+} \begin{aligned} Y &= y_1 + y_2 \\ &= 2a \cos \left\{ \pi (f_2-f_1)t + \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} + \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x + \varDelta_-\right\} \sin \left\{ \pi (f_1 + f_2) t - \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} - \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x + \varDelta_+ \right\} \end{aligned}

この合成波 YY の式からうなりを定量的に考察することができます。

問題

λ1=2π\lambda_1 = 2 \pi, λ2=5π\lambda_2 = 5 \pi とする。

ある時刻 tt において, 合成波が強め合う点は等間隔で存在する。

その間隔の距離を求めよ。

解答

YY の振れ幅の大きさが最大値 2a2a になる時を考える。

そのための条件は

cos{π(f2f1)t+π(λ1+λ2)x+Δ}=±1sin{π(f1+f2)tπ(λ1λ2)x+Δ+}=±1 \cos \left\{ \pi (f_2-f_1)t + \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} + \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x + \varDelta_-\right\} = \pm 1 \\ \sin \left\{ \pi (f_1 + f_2) t - \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} - \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x + \varDelta_+ \right\} = \pm 1

であり, それぞれ整数 n,mn, m を用いて

{cosの位相=nπsinの位相=(m+12)π \begin{cases} & \cos \text{の位相} = n \pi \\ & \sin \text{の位相} = \left(m + \dfrac{1}{2} \right) \pi \end{cases}

を満たす。

すなわち

{π(f2f1)t+π(λ1+λ2)xn+Δ=nππ(f1+f2)tπ(λ1λ2)xm+Δ+=(m+12)π \begin{cases} & \pi (f_2-f_1)t + \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} + \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x_{n} + \varDelta_- = n \pi \\ & \pi (f_1 + f_2) t - \pi \left(\dfrac{1}{\lambda_1} - \dfrac{1}{\lambda_2} \right)x_{m} + \varDelta_+ = \left(m + \dfrac{1}{2} \right) \pi \end{cases}

である。

したがって, YY の振幅が 2a2a になるために必要な条件は

{xn+1xn=λ1λ2λ1+λ2=107πxm+1xm=λ1λ2λ2λ1=103π \begin{cases} & x_{n+1} - x_n = \dfrac{\lambda_1 \lambda_2}{\lambda_1 + \lambda_2} = \dfrac{10}{7} \pi \\ & x_{m+1} - x_m = \dfrac{\lambda_1 \lambda_2}{\lambda_2 - \lambda_1} = \dfrac{10}{3} \pi \end{cases}

となる。

つまり, xn+1xn=107πx_{n+1} - x_n = \dfrac{10}{7} \pi の間隔で cos\cos の位相は π\pi ずつずれ, xm+1xm=103πx_{m+1} - x_m = \dfrac{10}{3} \pi の間隔で sin\sin の位相は π\pi ずつずれる。

YY の振幅が 2a2a になる位置の間隔は 107π\dfrac{10}{7} \pi の整数倍と 103π\dfrac{10}{3} \pi の整数倍が初めて同じになる時の値なので

(答) 10π10 \pi

ただし点 AA の左側, および点 BB の右側では全く話が異なるという点に注意してください。

千葉県成田市の観光キャラクターはうなりくんという名前だそうです!