万有引力の法則と万有引力による位置エネルギー
この記事では,万有引力の法則の位置エネルギーについて解説します。位置エネルギーの定義に忠実に従って導出することが重要です。
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万有引力の法則
万有引力の法則
位置 にある質量 の質点に,原点にある質量 の質点が及ぼす重力は, で与えられる。ただし は万有引力定数で である。
座標の取り方から,位置ベクトルと万有引力の方向は逆なので,負号がついていることに注意してください。
万有引力はクーロン力と同様の形をしているので,保存力になります。よって,定義に従って,位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)を求めることができます。
位置エネルギーについては以下の記事を参照してください。
万有引力の位置エネルギー
万有引力の位置エネルギー
保存力 の を基準とした位置エネルギーは で与えられる。
ここで はベクトル量であることに注意してください。この に上の万有引力を代入して,万有引力の位置エネルギーを求めていきます。
万有引力の表式と位置エネルギーを合わせて,万有引力の を基準とした位置エネルギー は である。ここで は原点から質点の方向への単位ベクトルなので, となるので, を得る。
通常は基準点として,無限遠点を選びます。従って,上の表式で として
を得ることができます。
質量は電荷と違い,常に正の値を取るので,無限遠点を基準とした万有引力の位置エネルギーは常に負の値をとります。符号は間違いやすいので注意しましょう。
万有引力の位置エネルギーの例題
万有引力の位置エネルギーの例題
万有引力の位置エネルギーに関する例題を2題紹介します。
地上からロケットを速さ で真上に打ち上げた。やがてロケットは地球の中心からの距離が,地球の半径の2倍の地点まで達し,一瞬静止した後,落下した。この時ロケットの初速度 を求めよ。ただし地球の質量を ,万有引力定数を とする。また,ロケットの力学的エネルギーは保存するとする。
ロケットが打ち上げられた直後,ロケットの持つ力学的エネルギーは, ロケットが静止した時,ロケットの力学的エネルギーは 力学的エネルギーが保存するので, これを解いて, を得る。
次は位置エネルギーの「重ね合わせの原理」についての例題です。
重力の位置エネルギーが「重ね合わせの原理」を満たすことを示せ。すなわち空間に3つの質点 が存在するとすると, の による位置エネルギーを , の による位置エネルギーを とした時, の重力による位置エネルギーは, で与えられることを示せ。
が から受ける重力を , が から受ける重力を とする。力の重ね合わせの原理より, の受ける全体の重力 は, となる。よって の重力の位置エネルギーは, となるので示された。
「位置エネルギーは存在するか?」というのは難しい問いですが,少なくとも計算上,非常に便利な概念です。