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  2. 位置エネルギーの定義と例(重力・弾性力・クーロン力)

位置エネルギーの定義と例(重力・弾性力・クーロン力)

更新日時 2021/04/11

保存力には,r\boldsymbol{r} のみの関数である「位置エネルギー」を定義することができる。位置エネルギーと運動エネルギーを合わせた「力学的エネルギー」は,非保存力のする仕事によって変化する。

まず,保存力を定義し,その上で位置エネルギーを定義します。その後,非保存力の仕事と力学的エネルギーの関係の式を導出します。また,位置エネルギーの例として,重力による位置エネルギー,弾性力による位置エネルギー,クーロン力による位置エネルギーを紹介します。

目次
  • 保存力の定義

  • 位置エネルギーの定義

  • 非保存力の仕事と力学的エネルギーの関係

  • 重力による位置エネルギーの公式

  • 弾性力による位置エネルギーの公式

  • クーロン力による位置エネルギーの公式

保存力の定義

空間の各点で,質点がその位置に来た時,それに作用する力が一義的に決まっている状況を考えます。そのようなとき,空間は力の場になっているといいます。力の場において,任意の経路 C1,C2C_{1},C_{2} に対し,P0,P1P_{0},P_{1} を始点,終点として, C1:P0P1FC(r)dr=C2:P0P1FC(r)dr \int_{C_1 : P_{0} \to P_{1}}\boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r}=\int_{C_2 : P_{0} \to P_{1}}\boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} を満たす特別な力 FC\boldsymbol{F}_C保存力といいます。つまり,始点と終点さえ決めてしまえば,どんな経路を通って物体を運んでも,保存力のする仕事は変わらない という特別な力であるということです。ここで,この式は C1:P0P1FC(r)dr+C2:P1P0FC(r)dr=0 \int_{C_1 : P_{0} \to P_{1}}\boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} + \int_{-C_2 : P_{1} \to P_{0}}\boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = 0 という式と同値です。ただし,C2-C_2C2C_2 を逆向きに進む経路を表します。C1,C2C_1,C_2 は任意に経路をとっていますので,これは任意のループ CC を使って置き換えることができて, CFC(r)dr=0 \oint_C \boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = 0 と同値になります。 ここでストークスの定理:

ストークスの定理

CAdr=S(×A)ndS \oint_C \boldsymbol{A} \cdot d\boldsymbol{r} = \int_S (\nabla \times \boldsymbol{A}) \cdot \boldsymbol{n} dS

を用いれば,CC が囲む図形を SS として, CFC(r)dr=S(×FC(r))ndS=0 \oint_C \boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})\cdot d\boldsymbol{r} = \int_S (\nabla \times \boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r})) \cdot \boldsymbol{n} dS = 0 CC つまり,SS は任意にとれるので, ×FC(r)=0 \nabla \times \boldsymbol{F}_{C}(\boldsymbol{r}) = \boldsymbol{0} と同値になります。

つまり,×FC=0\nabla\times\boldsymbol{F}_{C}=\boldsymbol{0}FC\boldsymbol{F}_{C} が保存力であることの必要十分条件であることがわかります。

また,保存力の和は保存力であることは,定義から簡単にわかります。

位置エネルギーの定義

位置エネルギーポテンシャルエネルギーと呼ぶこともあります)は,保存力に対して定義される物理量です。保存力 FC(r)\boldsymbol{F}_C(\boldsymbol{r}) に対し,r0\boldsymbol{r}_0 を基準にした位置エネルギー UU を, U(r)=r0rFC(r)dr U(\boldsymbol{r}) = - \int_{\boldsymbol{r}_0}^{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{F}_C(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} と定義します。保存力の定義により,この UUr\boldsymbol{r} を決めれば一意に定まります。UUr\boldsymbol{r} のみの関数です。この式から, ΔU=U(r+dr)U(r)=FC(r)dr \Delta U = U(\boldsymbol{r} + d\boldsymbol{r}) - U(\boldsymbol{r}) = -\boldsymbol{F}_C(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} さて,全微分の式から, ΔU=Uxdx+Uydy+Uzdz=(U)dr \Delta U = \dfrac{\partial U}{\partial x}dx+\dfrac{\partial U}{\partial y}dy+\dfrac{\partial U}{\partial z}dz=(\nabla U)\cdot d\boldsymbol{r} とかけます。前2式において,drd\boldsymbol{r} は任意に取ることができますから, FC(r)=U \boldsymbol{F}_C(\boldsymbol{r}) = -\nabla U このように,保存力は位置エネルギーを使って簡潔に表すことができます。

非保存力の仕事と力学的エネルギーの関係

仕事と運動エネルギーの関係の記事で, ΔK=K(t1)K(t0)=t0t1Fvdt=r(t0)r(t1)Fdr \Delta K = K(t_1) - K(t_0) = \int_{t_0}^{t_1}\boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v}dt = \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{r} が成立することを導きました。じつは,このうちの F\boldsymbol{F} を保存力と非保存力に分解すると,保存力の成分はエネルギーとして含めてしまうことができるのです。いかにその説明をします。

F\boldsymbol{F} を保存力の和 F\boldsymbol{F}_{\text{保}} と非保存力の和 F非保\boldsymbol{F}_{\text{非保}} に分解すると, K(t1)K(t0)=r(t0)r(t1)Fdr+r(t0)r(t1)F非保dr=r0r(t1)Fdrr0r(t0)Fdr+r(t0)r(t1)F非保dr=U(t1)+U(t0)+r(t0)r(t1)F非保dr\begin{aligned} K(t_1) - K(t_0) &= \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{保}}\cdot d\boldsymbol{r} + \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{非保}}\cdot d\boldsymbol{r}\\ &= \int_{\boldsymbol{r_0}}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{保}}\cdot d\boldsymbol{r} - \int_{\boldsymbol{r_0}}^{\boldsymbol{r}(t_0)}\boldsymbol{F}_{\text{保}}\cdot d\boldsymbol{r} + \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{非保}}\cdot d\boldsymbol{r} \\ &= -U(t_1) + U(t_0) + \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{非保}}\cdot d\boldsymbol{r} \end{aligned} {K(t1)+U(t1)}{K(t0)+U(t0)}=r(t0)r(t1)F非保dr \therefore \{K(t_1) + U(t_1)\} - \{K(t_0) + U(t_0)\} = \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{非保}}\cdot d\boldsymbol{r} ここで,力学的エネルギー EEE=K+U E = K + U つまり,運動エネルギーと全位置エネルギーの和として定義すれば, ΔE=E(t1)E(t0)=r(t0)r(t1)F非保dr \Delta E = E(t_1) - E(t_0) = \int_{\boldsymbol{r}(t_0)}^{\boldsymbol{r}(t_1)}\boldsymbol{F}_{\text{非保}}\cdot d\boldsymbol{r} と書くことができるのです。

ここから,「ある時間内で増加した分の力学的エネルギーは,非保存力のした仕事に等しい」ということができます。特に,「保存力のみが働く場においては,力学的エネルギーは一定である」ということもいうことができます。これを,力学的エネルギー保存の法則と呼びます。

重力などは,よく位置エネルギーで考えろと言われますが,その理由は上記のようなところにあったのです。保存力はエネルギーの項として含めることができる,それならば最初から運動エネルギーと混ぜて計算してしまえば,毎回仕事を求める必要がなくて楽じゃん! という発想です。とても興味深い考察だと思います。

重力による位置エネルギーの公式

重力はベクトルで W=(00mg) \boldsymbol{W} = \left(\begin{array}{c} 0\\ 0\\ -mg \end{array}\right) と書くことができます。zz 軸は鉛直上向き方向としてとっています。計算するまでもなく, ×W=0 \nabla \times \boldsymbol{W} = \boldsymbol{0} ですから,重力は保存力です。

保存力はどんな経路で線積分しても値がかわらないので,もっとも簡単な経路を取りましょう。

重力による位置エネルギー

上図のような経路をとります。このとき, U=z0zWdr U = -\int_{z_0}^z \boldsymbol{W} \cdot d\boldsymbol{r} です。W\boldsymbol{W}x,yx,y 成分は 00 であることから, U=z0z(mg)dz=zz0mgdz=[mgz]z0z=mg(zz0)\begin{aligned} U &= -\int_{z_0}^z (-mg) dz\\ &= \int_z^{z_0} mgdz\\ &= [mgz]_{z_0}^z\\ &= mg(z - z_0) \end{aligned} と求めることができます。特に,z0=0z_0 = 0 のとき,U=mgzU = mgz となって,みなさんがよく知っている形の式になります。

弾性力による位置エネルギーの公式

弾性力による位置エネルギー

バネの自然長を x0x_0,バネ定数を kk とします。図のような状況の時,バネの弾性力は k(xx0)-k(x-x_0) と表せます。右向きに xx 軸をとっています。ベクトルでは T=(k(xx0)00) \boldsymbol{T} = \left(\begin{array}{c} -k(x-x_0)\\ 0\\ 0 \end{array}\right) とかけます。これは少し計算すると,すぐに ×W=0 \nabla \times \boldsymbol{W} = \boldsymbol{0} であることがわかるので,弾性力は保存力です。

これより, U=x0x{k(xx0)}dx=[12k(xx0)2]x0x=12k(xx0)2\begin{aligned} U &= -\int_{x_0}^x \left\{-k(x-x_0)\right\}dx\\ &= \left[\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2\right]_{x_0}^x\\ &= \dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2 \end{aligned} と求めることができます。

クーロン力による位置エネルギーの公式

原点に電気量 +q+q を持つ点電荷をおきます。このとき,単位電荷が受ける力は,クーロンの法則より, F=kq(xr3yr3zr3) \boldsymbol{F} = kq\left(\begin{array}{c} \dfrac{x}{r^3}\\ \dfrac{y}{r^3}\\ \dfrac{z}{r^3} \end{array}\right) とかくことができます。ここで,r=x2+y2+z2r = \sqrt{x^2 + y^2 + z^2} です。つまり,rrx,y,zx,y,z によることに注意する必要があります。このもと,×F\nabla \times \boldsymbol{F} を計算することになるのですが,これは少し大変です。ぜひ練習としてやってみてください。

計算の末, ×F=0 \nabla \times \boldsymbol{F} = \boldsymbol{0} であることがわかるので,クーロン力は保存力です。

さて,位置エネルギーを求めますが,基準点 r0\boldsymbol{r}_0 から r\boldsymbol{r} まで直線で結ぶと計算が大変になってしまいます。

クーロン力による位置エネルギー

そこで,上図のような経路 C=C1+C2C = C_1 + C_2 をとることを考えてみます。

C1C_1 は原点を中心とする円弧上の運動です。つまりクーロン力とは直交する方向の移動です。よって,C1C_1 上では C1Fdr=0 \int_{C_1} \boldsymbol{F} \cdot d\boldsymbol{r} = 0 となります。よって,実質 C2C_2 の経路のみを考えればよいことになります。よって,r\boldsymbol{r} 方向の単位ベクトル er\boldsymbol{e}_r を用いて U=r0rFerdr=r0rkq(xr3yr3zr3)(xryrzr)dr=r0rkq1r2dr=kq[1r]r0r=kq(1r1r0)\begin{aligned} U &= -\int_{r_0}^r \boldsymbol{F} \cdot \boldsymbol{e}_r dr\\ &= -\int_{r_0}^r kq\left(\begin{array}{c} \dfrac{x}{r^3}\\ \dfrac{y}{r^3}\\ \dfrac{z}{r^3} \end{array}\right) \cdot \left(\begin{array}{c} \dfrac{x}{r}\\ \dfrac{y}{r}\\ \dfrac{z}{r} \end{array}\right) dr\\ &= -\int_{r_0}^r kq \dfrac{1}{r^2} dr\\ &= kq \left[\dfrac{1}{r}\right]_{r_0}^r\\ &= kq \left(\dfrac{1}{r} - \dfrac{1}{r_0}\right) \end{aligned} 普通,クーロン力の位置エネルギーの基準点は r0r_0 \to \infty にとることが多く,このとき, U=kqr U = k\dfrac{q}{r} となります。

重力,弾性力,クーロン力による位置エネルギーの導出は,線積分のいい練習になります。

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