力のモーメントと角運動量の関係
力のモーメント,角運動量の定義をした後,これら二つの関係(角運動量保存則等)について解説します。
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力のモーメントの定義
力のモーメントの定義
位置ベクトル で表される点にある質点を考えます。この質点にかかる力がベクトル で表されるとき,質点が受ける「力のモーメント」 は, によって定義されます。力のモーメントは,物体の回転に関わる物理量です。 なぜそのように言えるかを以下で解説していきます。
式から明らかなように,力のモーメントの定義には「外積」が用いられます。外積については高校数学の範囲を超えてしまうものですが,→ベクトルの内積と外積の意味と嬉しさ で解説しています。
簡単に言えば,「 は のどちらにも垂直で,大きさが ( は のなす角) であるようなベクトル」です。 に垂直なベクトルは3次元空間では一般に2つありますが,以下の図の方のベクトルを採用します。
この外積の選び方は「右手系」と呼ばれます。
力のモーメントは「てこの原理」を想像すると理解しやすいかもしれません。 が大きければ大きいほど,また, が大きければ大きいほど力のモーメントは大きくなります。
角運動量
角運動量
力のモーメントが回転と関わることを理解するには,角運動量の理解が必要です。
位置ベクトル と運動量 を持つ質点に対し,角運動量 は と定義されます。
角運動量とは 「ある定められた軸からの距離と運動量の積」 です。一言で簡単に表すとすれば,「回転の勢い」を表すと言えるかもしれません。
が一定であれば, が大きいほど も大きくなります。また, が一定であれば, が大きいほど も大きくなります。
力のモーメントと角運動量の関係
力のモーメントと角運動量の関係
力のモーメントと角運動量の関係を考えます。質点の運動方程式: からスタートします。
運動方程式の両辺で,左からと外積をとることを考えます。であることに注意すると と書き換えられることから,「角運動量の時間変化は,力のモーメントに等しい」と言えます。また,これをからで積分すれば, と表せます。この式から,「ある時間内で変化した角運動量は,力のモーメントを時間で積分した分に等しい」と言うことができます。
では, となるような場合を考えてみましょう。 が であることは必要ではありません。例えば, となるような場合この式を満たします。 万有引力のみが働く2天体の運動などはその典型例です。
このようなとき, です。つまり, が成立します。これを角運動量保存の法則と呼ぶことがあります。この法則はケプラーの面積速度一定の法則と密接な関わり(むしろ,数学的には全く同値なことです)があります。この話はまた別の記事で解説します。
特別に, が一定である場合を考えてみます。このとき は と垂直でなければなりませんから, と とのなす角 は で一定です。 のうち, が一定なので, も一定にならざるを得ません。これは質点が等速円運動することを示唆しています。
あえて日本語で言えば,力のモーメントがないときは,回転の勢いを表す角運動量が変化しなくなる,ということができます。
もし, が一定で, が成立するならば, が正であれば, もどんどん大きくなることになります。 このように,力のモーメントと角運動量は対応関係を持っています。
角運動量の話は,剛体の回転の話でも登場します。