次に,物理的に電位はどのような概念なのか考えてみます。
もう一度,(2)に戻って考えてみましょう。ここで,ストークスの定理を導入します(証明はこちらから→ガウスの発散定理・ストークスの定理の証明)。
ストークス(Stokes)の定理
3次元のある曲面を S,S の境界を C,S の法線ベクトルを n,ベクトル場を A とすると,以下が成り立つ。
∫S(∇×A⋅n)dS=∫CA⋅dr
今,C が閉曲線となる場合を考えます。(2)より,
∫CE⋅dr=0(3)
ここで,C の中で2点O(位置 r0),P(位置 r)を選び,この2点により C を下図のように2つの曲線 C1 と C2 に分割します。
積分は和の一種であることを考えると,
∫CE⋅dr=∫C1+C2E⋅dr=∫C1E⋅dr+∫C2E⋅dr=0(4)
さらに, C2 と逆向きに向かう曲線を −C2 とすると,線積分の際の微小曲線の方向が C2 と −C2 では常に逆向きになることを考えて,
∫C2E⋅dr=−∫−C2E⋅dr(5)
(4),(5)より,
∫C1E⋅dr−∫−C2E⋅dr=0
∴∫C1E⋅dr=∫−C2E⋅dr
C1 と C2 は始点と終点が同じ曲線であるから,E の線積分は始点と終点のみによる関数を作ることが分かります。これを仮に F0(r) とおきましょう。
F0(r) を偏微分することを考えてみます。下図を参考にすると,
∂x∂F0(r)=dxF0(x+dx,y,z)−F0(x,y,z)=dx∫CE⋅dr+E⋅ldx−∫CE⋅dr=Ex
同様に,
∂y∂F0(r)=Ey,∂z∂F0(r)=Ez
であるから、
E=∇F0(r)
(2’)と見比べて,
F0(r)=−ϕ(r)
これより,基準点 r0 と位置 r を指定して,ϕ(r) は
ϕ(r)=−∫r0rE⋅dr=∫r0r(−E)⋅dr(3)
と解くことができます。
これより,電位とは,「単位電荷を,基準点 r0 から位置 r まで電場に逆らって運んだときに,電荷が蓄えるエネルギー … (⋆)」であると解釈することができます。
より平たく言うと,電位とは「単位電荷が位置 r にある時に蓄えている位置エネルギー」であるということです。
仕事との関係からもこのことを確認してみましょう。
電場 E は電荷 q に対し,
F=qE
の力を及ぼします。この電荷を位置 r から r0 まで動かした時に,電場がする仕事Wは,仕事の定義により
W=q∫rr0E⋅dr=−q∫r0rE⋅dr
(3)に注目すると、電荷は位置 r0 を基準として,
U(r)=qϕ(r)
の位置エネルギーを蓄えることを意味します。
この結果は先ほどの電位の説明と整合していますね。