電位の定義|エネルギーとしての解釈・具体例

Maxwell方程式から理論的に電位の存在を導いたのち,その結果を式変形することにより,電位の物理的な意味について考察・解釈します。さらに,その考え方を用い,いくつかの具体的な例について,電位の公式を導出します。

電位の定義

私たちは,時間に依らないMaxwell方程式(詳しくはマクスウェル方程式の記事を参照してください。)により,静電場について以下の2つの公式が成り立つことが分かっています。

E=ρε0(1) \nabla \cdot \boldsymbol{E} = \dfrac{\rho}{\varepsilon_0} \tag{1}

×E=0(2) \nabla \times \boldsymbol{E} =0 \tag{2}

ここで,ベクトルの計算に関する次の公式を紹介します。(証明は別記事に掲載予定です)

ベクトルの計算に関する公式

任意のベクトル h\boldsymbol{h} について,

×h=0    h=T \nabla \times \boldsymbol{h} = 0 \iff \boldsymbol{h} = \nabla T

を満たすスカラー場 TT が存在する。

これを上の(2)に用いると,

E=ϕ(2’) \boldsymbol{E} = - \nabla \phi \tag{2'}

を満たすスカラー場 ϕ\phi が存在することになります。この ϕ\phi電位(または静電ポテンシャル,電圧)と呼ぶことにします。なぜマイナスをわざわざつけたのかについては、次の章をお読みいただければ分かると思います。

「単位電荷の位置エネルギー」としての電位

次に,物理的に電位はどのような概念なのか考えてみます。

もう一度,(2)に戻って考えてみましょう。ここで,ストークスの定理を導入します(証明はこちらから→ガウスの発散定理・ストークスの定理の証明)。

ストークス(Stokes)の定理

3次元のある曲面を SSSS の境界を CCSS の法線ベクトルを n\boldsymbol{n},ベクトル場を A\boldsymbol{A} とすると,以下が成り立つ。

S(×An)dS=CAdr \int _{S} (\nabla \times \boldsymbol{A} \cdot \boldsymbol{n} )dS = \int _{C} \boldsymbol{A} \cdot d\boldsymbol{r}

今,CC が閉曲線となる場合を考えます。(2)より,

CEdr=0(3) \int _{C} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} =0 \tag{3}

ここで,CC の中で2点O(位置 r0\boldsymbol{r_0}),P(位置 r\boldsymbol{r})を選び,この2点により CC を下図のように2つの曲線 C1C_1C2C_2 に分割します。

図3

積分は和の一種であることを考えると,

CEdr=C1+C2Edr=C1Edr+C2Edr=0(4) \begin{aligned} \int _{C} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} &= \int _{C_1 + C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} \\ &= \int _{C_1} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} + \int _{C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} \\ &=0 \tag{4} \end{aligned}

さらに, C2C_2 と逆向きに向かう曲線を C2-C_2 とすると,線積分の際の微小曲線の方向が C2C_2C2-C_2 では常に逆向きになることを考えて,

C2Edr=C2Edr(5) \int _{C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} = -\int _{-C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} \tag{5}

(4),(5)より,

C1EdrC2Edr=0 \int _{C_1} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} - \int _{-C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} =0

C1Edr=C2Edr \therefore \int _{C_1} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} = \int _{-C_2} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r}

C1C_1C2C_2 は始点と終点が同じ曲線であるから,E\boldsymbol{E} の線積分は始点と終点のみによる関数を作ることが分かります。これを仮に F0(r)F_0(\boldsymbol{r}) とおきましょう。

F0(r)F_0(\boldsymbol{r}) を偏微分することを考えてみます。下図を参考にすると,

図4

xF0(r)=F0(x+dx,y,z)F0(x,y,z)dx=CEdr+EldxCEdrdx=Ex \begin{aligned} \dfrac{\partial}{\partial x} F_{0} (\boldsymbol{r}) &= \dfrac{F_0(x+dx, y, z) - F_0(x, y, z)}{dx}\\ &= \dfrac{\int _{C} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} + \boldsymbol{E} \cdot l dx - \int _{C} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r}}{dx}\\ &= E_x \end{aligned}

同様に,

yF0(r)=Ey,zF0(r)=Ez \dfrac{\partial}{\partial y} F_0(\boldsymbol{r}) = E_y , \dfrac{\partial}{\partial z} F_0(\boldsymbol{r}) = E_{z}

であるから、

E=F0(r) \boldsymbol{E} = \nabla F_0 (\boldsymbol{r})

(2’)と見比べて,

F0(r)=ϕ(r) F_0 (\boldsymbol{r}) = - \phi(\boldsymbol{r})

これより,基準点 r0\boldsymbol{r_0} と位置 r\boldsymbol{r} を指定して,ϕ(r)\phi(\boldsymbol{r})

ϕ(r)=r0rEdr=r0r(E)dr(3) \phi(\boldsymbol{r}) = - \int ^{\boldsymbol{r}} _{\boldsymbol{r_0}} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} = \int ^{\boldsymbol{r}} _{\boldsymbol{r_0}} (- \boldsymbol{E}) \cdot d \boldsymbol{r} \tag{3}

と解くことができます。

これより,電位とは,「単位電荷を,基準点 r0r_0 から位置 rr まで電場に逆らって運んだときに,電荷が蓄えるエネルギー … (\star)」であると解釈することができます。

より平たく言うと,電位とは「単位電荷が位置 r\boldsymbol{r} にある時に蓄えている位置エネルギー」であるということです。

仕事との関係からもこのことを確認してみましょう。

電場 E\boldsymbol{E} は電荷 qq に対し,

F=qE \boldsymbol{F} =q \boldsymbol{E}

の力を及ぼします。この電荷を位置 r\boldsymbol{r} から r0\boldsymbol{r_0} まで動かした時に,電場がする仕事Wは,仕事の定義により

W=qrr0Edr=qr0rEdr W = q \int ^{\boldsymbol{r_0}} _{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r} = - q \int ^{\boldsymbol{r}} _{\boldsymbol{r_{0}}} \boldsymbol{E} \cdot d \boldsymbol{r}

(3)に注目すると、電荷は位置 r0\boldsymbol{r_0} を基準として,

U(r)=qϕ(r) U(\boldsymbol{r}) = q \phi(\boldsymbol{r})

の位置エネルギーを蓄えることを意味します。

この結果は先ほどの電位の説明と整合していますね。

具体的な電位の公式の求め方

具体的に電位を求めるには,(\star)の考え方を用いるのが便利です。

いくつかの簡単な例について,(\star)の考え方を用いて,電位の具体的な表式の求め方を確認してみましょう。ここでは位置 r0\boldsymbol{r_0} を電位の基準点とします。

電場が一定のとき

コンデンサーなど,2点間に生じている電場が一定のときは,以下のようにして電位(電圧)を求めることができます。

簡単のため,1次元の時を考えます。下図のように電場が生じているとします。

図1

このとき,(\star)により,位置 rr での電位 VV は,

V=r0r(E)dr=E(rr0)=Ed \begin{aligned} V &= \int ^{r} _{r_0} -(-E) dr \\ &= E(r - r_0) \\ &= E d \end{aligned}

と表されます。

点電荷が作る電位

電荷 q(>0)q ( > 0) を持つ点電荷が原点にある時に作る電位について考えてみましょう。下図のような状況を考えます。

図2

このとき,(\star)により,位置 rr での電位 ϕ(r)\phi(r) は,

ϕ(r)=r0rq4πε0r2dr=[q4πε0r]r0r=q4πε0rq4πε0r0 \begin{aligned} \phi (r) &= \int ^{r} _{r_0} - \dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0 {r'}^2} dr' \\ &= \left[\dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r'}\right] ^{r} _{r_0} \\ &= \dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r} - \dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r_{0}} \end{aligned}

となります。特に,r0r_0 \rightarrow \infty,つまり無限遠点を電位の基準点としたときは,

ϕ(r)=q4πε0r \phi (r) = \dfrac{q}{4 \pi \varepsilon_0 r}

となります。

電位の物理的な意味を考えるとき、マイナスをつけることで整合性が担保されているところが個人的には面白く感じます。