点電荷の重要性質|クーロン力とポテンシャル
この記事では点電荷の性質について解説します。点電荷の重要な性質として,「点電荷のつくる磁場」,「点電荷のポテンシャル」などがあります。これらを完璧に抑えることが,まず電磁気学を学ぶ上で大切なことになります。
点電荷とは
点電荷とは
点電荷とは,簡単にいうと電荷 を持った質点です。ここでの電荷の大きさ は,電気素量
の整数倍であることが知られています。
基本的には,以下の記事で紹介されているような一般的な性質に従います。
電荷と電気量保存の法則
点電荷は電磁気学において最も基本的な対象なので,あいまいさなくしっかりと性質を抑えておく必要があります。
(発展)点電荷の数学的な表示
点電荷の作る電場も電磁気学の基本方程式である,Maxwell方程式にしたがいます。それを計算するには,「点電荷とはなんなのか」ということを数学的に表す必要があります。点電荷とはすなわち,「ある一点で電荷が であり,その他の場所では0という電荷分布を与えるもの」ということになります。
このようなことを考えると,位置 にある点電荷 の電荷分布 は以下で与えられます。
ここで という見慣れない記号が出てきましたが,これは
実数 に対して, という性質をもつ関数 をデルタ関数という。
を3次元に拡張したものです。(なので形式的に3乗の記号を書いています。)
デルタ関数についてもっと知りたい方は,以下の記事をご覧ください。
ディラックのデルタ関数
デルタ関数でポアソン方程式の特殊解・境界条件下の解の一意性を導出
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点電荷のつくる電場・クーロン力
点電荷のつくる電場・クーロン力
以下では点電荷のつくる電場の公式を導出していきます。導出には,Maxwell方程式の一つである,Gaussの法則を用います。
ここで は真空の誘電率です。
Gaussの法則の意味を簡単に解説します。
右辺は,ある空間を適当な閉曲面で囲んだとき,その中にある全電荷の大きさの総和を取ることを表します。
左辺は,その閉曲面の表面を貫く全電場を表します。
この2つが等しくなる,というのがGaussの法則です。
以上を踏まえて,点電荷にGaussの法則を適用してみます。
閉曲面として,点電荷を中心とする,半径 の球をとってみます。すると,Gaussの法則の右辺は,閉曲面の中には電荷 のみがあることから, となります。
左辺は,電場は球を一様等方に貫いていることから, となります。 となるので,
がわかりました。
この表式より,電荷 の点電荷が,距離 だけ離れた電荷 を持つ点電荷から受けるクーロン力の大きさは であることがわかります。
ちなみに導出でGaussの法則を用いましたが,これはMaxwell方程式という古典電磁気学の基本方程式の中の一つです。Maxwell方程式については,以下の記事で詳しく解説されています。
マクスウェル方程式
点電荷のポテンシャル(電位)
点電荷のポテンシャル(電位)
クーロン力がもとまったので,エネルギー積分を行うことで,点電荷のつくるポテンシャル(位置エネルギー)を求めることができます。
導出は以下の記事で詳しく解説されています。
電位の定義|エネルギーとしての解釈・具体例
電位とは,単位電荷あたりの位置エネルギーなので,これに電荷の大きさ をかけることで,位置エネルギーが表せます。
では,この電位をグラフに書いてみましょう。 点電荷の符号が正の時は,上のようなグラフになります。 とすると,無限大に発散し, で0に収束します。
一方,点電荷の符号が負の時は,以下のようなグラフになります。
点電荷の例題
点電荷の例題
上の図のように,正電荷 を持つ点電荷を 軸上 に固定した。
(1) 軸上の座標点 の電位 を の関数として求め,グラフをかけ。
(2) 軸上の を満たすある点に,点電荷を置いた。この時,この点電荷はどのような運動をするか。
(1) にある点電荷による電位を赤で, にある点電荷の電位を青でグラフに書いた。これらを重ね合わせると,緑色のグラフになり,これが答えである。
(2) における電位は,放物線のような形になっている。明かに,これは原点を中心とする周期運動を表している。
点電荷では物理量が発散します。このことは,量子力学で「くりこみ」という問題になって現れることになります。