この節では,ある対象となる物体の4元速度を vμ と書くことにします。このとき,測地線方程式→測地線方程式:
dτdvμ+Γμσνvμvσ=0
が成立します。Schwarzschild解をもとめたときと同じ状況を考えましょう。最初は
r>2m, θ=ϕ=0
の位置に,
v2=v3=0
で置かれるとします。また,原点に向かって落下する方向,つまり v′>0 の方向に落下しているとします。
この物体の運動は,x 軸上のみに限定されます。測地線方程式より,
dτdv0=−Γμσ0vμvσ=−g00Γ0μσvμvσ=−g00(Γ001v0v1+Γ010v1v0)=−2g00Γ001v0v1
ただし,2行目の変形には,
{v2=v3=0Γ000=Γ011=0
を用いています。ここで,
Γ001=21(∂x1∂g00+∂x0∂g01−∂x0∂g01)=21∂x1∂g00
より,
2Γ001v1=2⋅21∂x1∂g00dτdx1=dτdg00
よって,
dτdv0=−g00dτdg00v0
g00dτdv0+g00g00dτdg00v0=0
dτd(g00v0)=0
∴g00v0=k (=const.)
となります。ここでSchwarzschild解より,dθ=dϕ=0 に注意すれば,
ds2∴1=g00dx0dx0+g11dx1dx1=g00dsdx0dsdx0+g11dsdx1dsdx1=g00v0v0+g11v1v1
これに g00 をかけて
(g00v0)2+g00g11v1v1=g00
前節の議論より,
g00g11=−e2(ν+λ)=−e0=−1
これを代入して,
k2−(v1)2=g00=1−r2m
v′<0 より,
v1=−(k2−1+r2m)21(1)
他方,g00v0=k より,
v0=g00k=k(1−r2m)−1(2)
よって,式 (1),(2) より,
dx1dx0=−k(1−r2m)−1(k2−1+r2m)−21∴drdt=dxdt=−ck(1−r2m)−1(k2−1+r2m)−21
さて,物体が特異点に近づいたとすると,ε>0 を用いて,
r=2m+ε (∣ε∣≪1)
とおけます。
1−r2m=rε
より,
drdt∴t=−ck⋅εr(k2−rε)−21=−ck⋅εr⋅k1(1−rk2ε)−21≈−εcr⋅εr(1−2rk2ε)−21=−(εcr+2k2c1)=−εcr=−c(r−2m)2m=−c2mlog(r−2m)+C
ここで,C は積分定数です。これより,r→2m+0 では,t→+∞ となるので,物体が r=2m に到達するまでには無限の時間がかかることになります。
もちろん,物体とともに運動する人にしてみれば,
drdτ=v11=−(k2−1+r2m)−21
より,r→2m+0 としても −k−1 になるだけであり,この人は有限時間のうちに r→2m に達することができて,さらに落下を続けることになります。
r=2m の表面および内部をブラックホールと呼びます。