電池の内部抵抗

電池の内部抵抗について解説します。また,例題を用いて問題中での電池の内部抵抗の扱いを確認します。

電池の内部抵抗とは

起電力と端子電圧の関係

電池は,+極側の負電荷をー極側に流す装置です。負電荷をどれだけ運べるかという力を表す指標が「起電力」と呼ばれ,単位 [V] で表されます。

一方,回路内での電池の+極とー極の電位の差を「端子電圧」と呼びます。

理想的な状況であれば,起電力と端子電圧とは等しくなることが予想されます。ところが,回路に電流が流れている状況では,実際の端子電圧は起電力より小さくなることが観察されます。

この現象は,後述するように,電池の起電力の由来に関係しています。回路の問題としてこの現象を考えると,電池がその中に抵抗を持っていると考えることで説明できます。この仮想的な抵抗を「電池の内部抵抗」と呼びます。

InnerResistance0

公式の求め方

以下のように,内部抵抗 rr を持つ起電力 EE の電池を用いて回路を構成したとき,回路に電流 II が流れていると考えます。

InnerResistance1

このとき,電池の電圧 VV

V=ErI V = E - r I

として求められます。

この公式は,回路にキルヒホッフ第2法則を用いることで求めることができます。

(補足)上図の回路では,電圧計に電流は流れません。それは,電流計は非常に大きな抵抗を持っていると考えられるためです。(詳細は別記事にて解説予定です)

【補足】化学的観点からの考察

電池の起電力は,電池内部での化学反応により生じています。 電池は,この化学反応による化学エネルギーにより電子を輸送して,電流を発生させていると考えることができます。

電池内の化学反応できる物質はもちろん有限なので,反応を続け,電流を流し続けていくと,電池内部の物質の総量が減少し,電池内で生じる化学エネルギーもまた減少していきます。

このようにして電池の起電力は,電流を流していくうちに減少していくわけです。これを回路の問題として考えると,さも電池が内部抵抗を持っており,流れる電流に応じて電池の起電力が減少しているように見える,というわけです。

もちろんこれだけではなく,電池の素材由来の内部抵抗もあると考えられます。

例題

例題を通じて,電池の内部抵抗の問題について学んでおきましょう。

例題

内部抵抗 r[Ω]r [\Omega] を持つ起電力 E[V]E [V] の乾電池を用いて,以下のような回路を構成した。以下の問いに答えよ。

InnerResistanceEx1

まず,スイッチS1を接続し,スイッチS2は切っておくことを考える。

(1)電流計の数値が V1[V]V_1[V],電流計の数値が I1[A]I_1[A] を示しているとき,V1V_1I1I_1 との間の関係を求めよ。また,この関係を横軸 I1I_1,縦軸 V1V_1 としてグラフに書け。

次に,S1を切り,S2を接続する。

(2)電圧計が 0[V]0 [V] を示しているとき,電流計が示す数値 I2I_2 を求めよ。

次に,スイッチのオンオフはそのままに,抵抗を可変抵抗に置き換える。

(3)可変抵抗の抵抗値が R[Ω]R [\Omega] のとき,この抵抗で消費される電力 PRP_R を求めよ。

(4)PRP_R が最大となるような可変抵抗の抵抗値 R1[Ω]R_1 [\Omega] と,そのときの消費電力の値 PP を求めよ。

解答例

電圧計は非常に抵抗が大きく,電圧計には電流が流れないとしてよい。また,電流計は非常に抵抗が小さく,電流計での電圧降下はないとしてよい。(詳しくは別記事にて解説予定です)

(1)考えるべき回路は以下のようになる。

InnerResistanceEx1-1

電池の内部抵抗の公式(あるいはキルヒホッフの第2法則)より

V1=ErI1 V_1 = E - r I_1

これをグラフとして書くと下図のようになる。

InnerResistanceEx1-1-g

(2)考えるべき回路は以下のようになる。

InnerResistanceEx1-2

電池の内部抵抗の公式(あるいはキルヒホッフの第2法則)より

0=E(r+R0)I2 0 = E - (r + R_0) I_2

I2=Er+R0[A] \therefore I_2 = \dfrac{E}{r + R_0 } [A]

(3)回路図は下図のようになる。

InnerResistanceEx1-3

このとき,電池の内部抵抗の公式(あるいはキルヒホッフの第2法則)より,可変抵抗を流れる電流 II について,

ErI=V=RI E - r I = V = R I

I=Er+R \therefore I = \dfrac{E}{r + R}

したがって,可変抵抗で消費される消費電力 PRP_R

PR=RI2=E2R(r+R)2 P_R = R I^2 = \dfrac{E^2 R}{(r + R)^2 }

(4)r>0,R>0r > 0, R > 0 に注意して

dPRdR=E2(r+R)R2(r+R)(r+R)4=E2rR(r+R)3 \dfrac{d P_R}{d R} = E^2 \dfrac{(r + R) - R \cdot 2 (r + R)}{(r + R)^4} = E^2 \dfrac{r - R}{(r + R)^3 }

と計算できる。これより,R<rR < r では P(R)>0P'(R) > 0R=rR = r では P(R)=0P'(R) = 0R>rR > r では P(R)<0P'(R) < 0 が成り立つことがわかる。したがって,P(R)P(R)r=Rr = R で最大値をとる。

R1=r[Ω] \therefore R_1 = r [\Omega]

このときの可変抵抗での消費電力は

P=P(r)=E24r[W] P = P(r) = \dfrac{E^2}{4 r} [W]

と求められる。

電池の内部抵抗が絡む問題は,1. 電圧計・電流計が登場することが多い,2. 物理量が文字でおかれることが多いという特徴があります。例題を通して慣れておきましょう。