宇宙項・宇宙定数

更新日時 2021/03/28

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Einsteinが信じていた「宇宙は静的であり,膨張も収縮もしない」という仮定のために重力場方程式に導入された項,「宇宙項」について解説します。その過程で「Friedmann方程式」を導出します。

目次
  • 宇宙項・宇宙定数の導入

  • Friedmann方程式の導出

  • Einsteinが宇宙項を加えた理由

宇宙項・宇宙定数の導入

Einsteinの重力場方程式: Rμν12gμνR+Λgμν=8πGc4Tμν R^{\mu\nu} - \dfrac{1}{2}g^{\mu\nu}R + \Lambda g^{\mu\nu} = \dfrac{8\pi G}{c^4}T^{\mu\nu} を考えます。ただし,Λgμν\Lambda g^{\mu\nu} はのちに「宇宙項」と呼ばれる項です。また,宇宙項の係数 Λ\Lambda宇宙定数,宇宙係数と呼ばれます。私たちは今まで Λ=0\Lambda = 0 で議論を進めてきました。 のちの計算のため,Λgμν\Lambda g^{\mu\nu} を含めて計算してしまうことにします。最後の結果で Λ=0\Lambda = 0 とすれば,とりあえず数学的には今まで扱っていた方程式と全く違わないので,問題ないでしょう。

Friedmann方程式の導出

→曲率が等しい空間におけるRobertson-Walker計量におけるRobertson-Walker計量の式: ds2=c2dt2+A(t)2[11R2a2dR2+R2dθ2+R2sin2θdϕ2](1) ds^2 = -c^2 dt^2 + A(t)^2 \left[\dfrac{1}{1 - \dfrac{R^2}{a^2}} dR^2 + R^2 d \theta^2 + R^2 \sin^2 \theta d\phi^2 \right] \quad\quad(1) より(混同を防ぐため,式 (1)(1) における RRρ\rho として記します), g00=1,g11=A(t)21ρ2a2,g22=A(t)2ρ2,g33=A(t)2ρ2sin2θ g_{00} = -1, g_{11} = \dfrac{A(t)^2}{1-\dfrac{\rho^2}{a^2}}, g_{22} = A(t)^2 \rho^2, g_{33} = A(t)^2 \rho^2 \sin^2 \theta また,これより, g00=1,g11=1ρ2a2A(t)2,g22=1A(t)2ρ2,g33=1A(t)2ρ2sin2θ g^{00} = -1, g^{11} = \dfrac{1-\dfrac{\rho^2}{a^2}}{A(t)^2}, g^{22} = \dfrac{1}{A(t)^2 \rho^2}, g^{33} = \dfrac{1}{A(t)^2 \rho^2 \sin^2 \theta} これを用いて,(途方もない)計算をすると, {R00=3AAR11=11ρ2a2(AA+2A2+21a2)R22=ρ2(AA+2A2+21a2)R33=ρ2sin2θ(AA+2A2+21a2) \begin{cases} R_{00} = -3 \dfrac{A''}{A}\\ R_{11} = \dfrac{1}{1-\dfrac{\rho^2}{a^2}} \left(AA'' + 2A'^2 + 2\dfrac{1}{a^2}\right)\\ R_{22} = \rho^2 \left(AA'' + 2A'^2 + 2\dfrac{1}{a^2}\right)\\ R_{33} = \rho^2 \sin^2 \theta \left(AA'' + 2A'^2 + 2\dfrac{1}{a^2}\right) \end{cases} また,ここから,スカラー曲率は, R=6(AA+A2A2+1A2a2) R = 6\left(\dfrac{A''}{A} + \dfrac{A'^2}{A^2} + \dfrac{1}{A^2 a^2}\right) と計算できます。さらに, Rνμ=gλμRλν R^{\mu}_{\nu} = g^{\lambda\mu}R_{\lambda\nu} を用いて,RνμR^{\mu}_{\nu} を計算すれば, {R00=3AAR11=R22=R33=1A2(AA+2A2+21a2) \begin{cases} R^0_0 = 3\dfrac{A''}{A}\\ R^1_1 = R^2_2 = R^3_3 = \dfrac{1}{A^2}\left(AA'' + 2A'^2 + 2\dfrac{1}{a^2}\right) \end{cases} また,Einsteinの重力場方程式も,gμλg_{\mu\lambda} と縮合をとれば, Rνμ12δνμR+Λδνμ=8πGc4Tνμ(2) R^\mu_\nu - \dfrac{1}{2}\delta^\mu_\nu R + \Lambda \delta^\mu_\nu = \dfrac{8\pi G}{c^4} T^\mu_\nu \tag{2} となります。

空間設定として,3次元的に空間の物質は止まっている,つまり,速度 vi  (i=1,2,3)v^i ~~ (i = 1,2,3) に対して, vi=0 v^i = 0 の場合を考えます。このとき,TμνT^{\mu\nu} について, T00=ρ0c2 T^{00} = \rho_0 c^2 であり,それ以外の成分は0です。よって,TνμT^\mu_\nu については, T00=ρ0c2 T^0_0 = \rho_0 c^2 であり,それ以外の成分は0です。よって,式 (2)(2) において,μ=ν=0\mu = \nu = 0 とすれば, 3A2A231A2a2+Λ=8πGρ0c2(3) -3 \dfrac{A'^2}{A^2} - 3 \dfrac{1}{A^2 a^2} + \Lambda = - \dfrac{8\pi G \rho_0}{c^2} \tag{3} μ=ν0\mu = \nu \neq 0 とすれば, 2AA+A2A2+1A2a2Λ=0(4) 2 \dfrac{A''}{A} + \dfrac{A'^2}{A^2} + \dfrac{1}{A^2 a^2} - \Lambda = 0 \tag{4} とくに,式 (3)(3)Friedmann方程式と呼ばれています。

Einsteinが宇宙項を加えた理由

Einsteinは,「宇宙は静的であり,膨張も収縮もしない」と信じていました。そのためには,A(t)A(t) は時間に依ってはならず, A(t)=0 A'(t) = 0 が必要です。このとき,式 (4)(4) は, 1A2a2=Λ(5) \dfrac{1}{A^2 a^2} = \Lambda \tag{5} と表されます。もともとのEinsteinの重力場方程式では,宇宙係数 Λ\Lambda は0でしたので, 1A2a2=0 \dfrac{1}{A^2 a^2} = 0 となってしまいます。 この式からわかるように,このままではEinsteinの重力場方程式に解はないことになってしまいます。これに気づいたEinsteinは, 宇宙項とよばれる補正項 Λgμν\Lambda g^{\mu\nu} を取り入れました。式 (5)(5) において宇宙係数が0でなければ, 「宇宙は静的であり,膨張も収縮もしない」という仮定を取り入れても理論が破綻しなくなります。

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