曲率が等しい空間におけるロバートソン-ウォーカー計量
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我々は「球面」に生きているという仮定
我々は「球面」に生きているという仮定
宇宙のあらゆる場所には星が存在し,物質の密度は場所によって異なっています。ただし,とても大きいスケールで考えてしまえば,宇宙には,物質が 均一に存在していると考えて良いはずです。すなわち,宇宙における物質分布に,
- 並進対称性(一様性)
- 回転対称性(等方性)
があると仮定します。
このような仮定のもとでは,宇宙には特別な場所はありません。つまり,時間 を一定にしたとき,曲率がいたるところ同じになるはずです。 曲率がずっとおなじであるような面を考えると,真っ先に球の表面が思いつくと思います。球面上は,並進対称性,回転対称性の両方を満たしており, また曲がり具合もいたるところおなじです。
二次元空間の宇宙に生きる人々にとっても,上記の議論と同様なことをすれば,いたるところで空間の曲がり具合が同じになるはずです。 二次元空間しか知らずに生きている人は,三次元空間のことなど想像もできません。ただ,Euclid距離 (3次元で言えば, のこと。普段私たちは距離と言えばこのEuclid距離を思い浮かべています)が 一定の三次元に住んでいる私たちからみれば,二次元人の世界は, のように表せます。
ということは,三次元空間に生きる私たちの世界も,Euclid距離が一定の四次元空間に住む人からすれば「球面」であるはずです。つまり,我々の世界は, のように表せるということです。このことを仮定することにしましょう。ここで, は4次元空間人にとっての4つめの座標です。
Robertson-Walker計量
Robertson-Walker計量
さて,以下のような変換をします。 これは4次元空間における極座標表示です。我々にとって はどの方向の角度なのか想像することはできません。しかし,この表式で任意の4次元空間の点が表せていて, しかも3次元のときの素直な拡張となっているので,これを定義として認めることにします。
イメージとしては以下のように捉えればよいです。 を4次元空間での 軸のようなものだと考え, とします。 は3次元座標での「半径」であり,これに対しては,3次元のときと同様のことをすればよいのです。
Euclid距離一定の4次元空間では,距離 が一定です。式 を全微分し,この式に代入して整理すれば, を得ます。3次元の人にとっては, が定数なのですから, として, ここで,3次元の人にとっての「半径」を とすれば, ここから, をうるので,これらを用いれば, では,時間もまぜて計量を決めます。もし,時間と空間の成分が混ざってしまっていると場所によって時間との関係が変わってしまう ので不適です。 の幅をうまく調整すれば,線素は のようにかけます。これをRobertson-Walker計量と呼ぶことがあります。