不定詞の意味上の主語とは|for・ofで示す場合や訳し方の違いまで例文付きで解説

英語の重要な文法事項の一つに「to不定詞」があります。

to不定詞とは〈to + 動詞の原形〉という形をとる句のことで、動詞の性質を残しながら名詞・形容詞・副詞のいずれかの働きをします

to不定詞の3つの用法についてはこちらの記事でそれぞれ解説しています。

この記事では、to不定詞を学ぶ際に重要となる「意味上の主語」について解説していきます。

「意味上の主語」が明示されない場合

to不定詞に含まれる動詞が表す動作・行為の主体にあたるものを「意味上の主語」と呼びます。

to不定詞の意味上の主語は、多くの場合明示されません。

(1) I got up early to watch the soccer game.
私はサッカーの試合を見るために早く起きた。

(2) It’s not easy to understand this theory.
この理論を理解することは簡単ではない。

(3) My dream is to travel around the world.
私の夢は世界中を旅することだ。

to不定詞の意味上の主語が明示されないケースは、主に以下の3通りです。

意味上の主語が文全体の主語と一致する場合
例文(1)で「サッカーの試合を見る」主体は、文全体の主語である「私」になります。このように、to不定詞の意味上の主語が文全体の主語と一致する場合、意味上の主語は明示されません。

意味上の主語が「一般の人」の場合
例文(2)で「理論を理解する」主体は、特定の誰かではなく「一般の人」になります。このような場合も、意味上の主語は明示されません。

意味上の主語が文脈から明らかな場合
例文(3)で「世界中を旅する」主体は、文全体の主語である「私の夢」とは一致していません。しかし、「世界中を旅する」主体が「私」であることは、文脈から明らかです。このような場合も、意味上の主語は明示されません。

「意味上の主語」が明示される場合

to不定詞の意味上の主語が文全体の主語と一致しない場合、次のような方法で意味上の主語を明示することができます。

意味上の主語を「for + 名詞」で示す

意味上の主語を「of + 名詞」で示す

意味上の主語を直前の名詞で示す

それぞれについて具体的に見ていきましょう。

意味上の主語を「for + 名詞」で示す

(1) It is difficult for me to learn English.
英語を学ぶことは私にとって難しい。

(2) The idea is for us to meet on Monday.
私たちは月曜日に会う考えだ。

(3) I’m waiting for the shop to open.
私は店が開くのを待っている。

(4) He ran too fast for me to catch up.
彼は走るのが速すぎて私はついていけなかった。

(5) This is a good book for you to read.
これはあなたが読むには良い本だ。

これらの例では、to不定詞の直前に置かれた「for + 名詞」によって意味上の主語が明示されています。この方法は、例文(1)のように、形式主語の It を用いた構文で多用されます

「for + 名詞 + to不定詞」は、形式主語の構文以外でも、(2)のようにbe動詞の後、(3)のように一般動詞の後、(4)のように副詞の後、(5)のように名詞の後など、様々な位置で使用することができます。

意味上の主語を「of + 名詞」で示す

(1) It is kind of you to help me.
私を手伝ってくれるなんてあなたは親切ですね。(= 手伝ってくれてありがとう。)

(2) How careless of him to lose the key!
鍵をなくすなんて彼はなんて不注意なんだ!

これらの例では、to不定詞の直前に置かれた「of + 名詞」によって意味上の主語が明示されています。

この方法は、形式主語の It を用いた構文感嘆文において、kind や careless などの「人の性質・人柄・能力などを示す形容詞」とともに使われます。

この構文で使われる「人の性質・人柄・能力などを示す形容詞」には、次のようなものがあります。

形容詞 意味
careful/careless 注意深い/不注意な
clever・smart・wise/stupid・foolish・silly 賢い/愚かな
kind・good・nice 親切な
polite/rude 丁寧な/無礼な
brave 勇敢な

意味上の主語を直前の名詞で示す

(1) I want you to come to the party tomorrow.
私はあなたに明日のパーティーに来てほしい。

(2) He was the first person to arrive there .
彼がそこに着いた最初の人だった。

上の例のように、〈名詞 + to不定詞〉の構文では、to不定詞の直前の名詞が意味上の主語になります

使役動詞(make, have, let など)や知覚動詞(see, hear, feel など)に伴う「原形不定詞」の場合も、不定詞の直前の名詞が意味上の主語になります。

(3) He made me clean the floor.
彼は私に床を掃除させた。

(4) I saw him cross the street.
私は彼が道を渡るのを見た。

(3)は使役動詞、(4)は知覚動詞の例です。

to不定詞の注意すべき用法

最後に、to不定詞の注意すべき用法をいくつか取り上げます。

to不定詞の否定

to不定詞を否定する notnever などの副詞は to の直前に置きます

(1) He promised me not [never] to smoke.
彼は私に [二度と] タバコを吸わないと約束した。

なお、「~しないように」という否定の目的を表す場合は、〈in order not + to不定詞〉や〈so as not + to不定詞〉を使います。

(2) I walked carefully in order not to fall.
= I walked carefully so as not to fall.
私は転ばないように注意して歩いた。

to have + 過去分詞(完了不定詞)

to have + 過去分詞〉は、述語動詞が表す「時」よりも以前に起きた事柄を表します。

(1) He seems to have been rich.
彼は以前は裕福だったように見える。

(2) He seemed to have been rich when I saw him.
彼に会った時、彼はそれより以前は裕福だったように見えた。

例文(1)の述語動詞は現在形なので、「彼が裕福だった」のは、現在より以前の事柄になります。

例文(2)の述語動詞は過去形なので、「彼が裕福だった」のは、私が彼に会った時より以前の事柄になります。

進行形と受動態のto不定詞

(1) He seems to be thinking of something else.
彼は何か他のことを考えているようだ。

(2) More research needs to be done.
更なる研究が行われる必要がある。

進行形の内容をto不定詞で表す場合は、(1)のように〈to be + 動詞のing形〉という形を使います。

受動態をto不定詞で表す場合は、(2)のように〈to be + 過去分詞〉という形を使います。

be動詞 + to不定詞

be動詞 + to不定詞〉は、「予定」「義務」「可能」「意志」などの意味を表します。

(1) She is to be married in June.
彼女は6月に結婚する予定だ。

(2) You are to finish your homework today.
宿題は今日中に終わらせなさい。

(3) No stars were to be seen in the sky.
空には星が一つも見えなかった。

(4) If you are to pass the exam, you must study hard.
その試験に合格したいのなら、一生懸命勉強しなさい。

(1)は「~することになっている / ~する予定だ」の意味で、「(公式の)予定」を表します。

(2)は「~すべきだ」の意味で、「義務」を表します。

(3)は「~できる」の意味で、「可能 」を表します。この場合、〈be動詞 + to be + 過去分詞〉の形で、主に否定文で使われます

(4)は「~したいと思う」「~するつもりだ」の意味で、「意志」を表します。この場合は、主にif節で使われます

練習問題

練習問題で定着度を確認しましょう。

練習問題

問1 次の各文に文末に示された意味上の主語を加えなさい。

(1) I’ve bought some books to read. (you)

(2) It was foolish to lie to the police. (he)

(3) I’d like to meet him. (you)

問2 次の各文を和訳しなさい。

(1) The man opened the door for his wife to come in.

(2) He seems to have been an excellent student.

(3) He was nowhere to be found.

解答

問1

(1) I’ve bought some books for you to read.「あなたが読む本を何冊か買ってきたよ。」

(2) It was foolish of him to lie to the police.「警察にうそをつくとは、彼は愚かだった。」
(解説)
形式主語の It を用いた構文で foolish のような「人の性質・人柄・能力などを示す形容詞」が使われている場合は、「of + 名詞」でto不定詞の意味上の主語を表します。

(3) I’d like you to meet him.「私はあなたに彼に会ってもらいたい。」

問2

(1) 妻が中に入れるように、男はドアを開けた。

(2) 彼は優秀な学生だったように見える。

(3) どこを探しても彼を見つけることはできなかった。
(解説)
「可能」を表す「be動詞 + to不定詞」の用法。この用法は、〈be動詞 + to be + 過去分詞〉の形で、主に否定文で使われる。

英語の文章を読むときは常に「主語・述語」の関係性に注意しましょう。特に、to不定詞・動名詞・分詞などに含まれる動詞の「意味上の主語」は要注意です。