水圧の原理|静水圧の一様等方性|静水圧と動水圧
この記事では,流体の例として水について扱い,水圧にはどのような性質があるのかを原理から考察します。水圧は流体の一例なので,水圧で成り立つことは基本的に一般の流体でも成り立ちます。
後半部分ではやや発展的な内容まで扱います。
流体と水圧
流体と水圧
流体とは,一般的に,空気や水などの気体や液体のことを指します。流体は流体中の物体に「圧力」という力を加えます。水の場合,この圧力を水圧といいます。
流体の一般的な性質については,以下の記事を参照してください。
水圧の原理〜静水圧の一様等方性〜
水圧の原理〜静水圧の一様等方性〜
静水圧について,静止した水のある1点における圧力はどの方向でも等しい
例えば,以下のような微小三角錐を考えて一般性を失わない。面 を含む平面が 平面となす角をを とする。
また, すると が成り立つ。
ここで, には に垂直な静水圧 がかかっており, には に垂直な静水圧 がかかっている。 今,水は静止しているので, 軸方向の力のつりあいの式は
よって,2式を合わせて を得る。この議論は面の取り方によらないので任意の面で静水圧が等しいことが示された。
ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理
流体のエネルギー保存にあたる定理である,ベルヌーイの定理を紹介します。
定常流では流線に沿って が成り立つ。
ここで定常流とは流れの速度が一定の流体, は流速, は重力のポテンシャルエネルギー, は流体の密度, は流体の圧力を表す。
ベルヌーイの定理の導出や詳しい解説は,以下の記事に書かれているので,こちらをご覧ください。
以下ではベルヌーイの定理を簡単に応用してみたいと思います。
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静水圧と動水圧
静水圧と動水圧
ベルヌーイの定理は,流体において,左辺が時間的に一定であることを示しています。 ここで流体として特に水を考えてみましょう。水中のある1点に特に注目すると,ポテンシャル(位置エネルギー)は一定です。圧力を表す項表す項は,,水流を表す項は であり,この2つの項の和が一定になります。よって,流れのない水 の時と,流れのある水 の時では水圧が異なることがわかります。流れのない水における水圧を静水圧,流れのある水における水圧を動水圧といいます。
密度一様の水においては,静水圧はベルヌーイの定理から,水面からの深さによって定まることがわかります。
トリチェリの定理
トリチェリの定理
ベルヌーイの定理を用いて,以下の系で流水の速さを求めてみます。
水を入れた十分大きい容器に穴があいて,水が流れ出た。穴から水面までの高さを としたとき,水の流れ出る速さをベルヌーイの定理を用いて求めよ。ただし大気圧は一定とし,流れでる水の速さは一定とみなせるとする。また,重力加速度を とする。
十分大きい容器なので,水面の下がる速ささ(=水面での流体の速さ) はほぼ とみなせる。大気圧を とすると,流水の速さは一定なので,大気圧は水面の静水圧,穴での動水圧につりあっている。求める速さを とすると,ベルヌーイの定理より,
これを解いて を得る。
この結果より,穴から流れ出す水の速さは,物体が水面から穴の高さまで自由落下した時の速さと等しいことがわかります。このことをトリチェリの定理とよびます。
浮力とパスカルの原理
浮力とパスカルの原理
一般に水中に浮いている物体にはたらく水圧の合力は,重力とつりあう方向,大きさになっています。このとき,水圧の合力を浮力といいます。浮力については,以下の記事を参照してください。
また,水圧については,パスカルの原理が成り立ちます。静水圧の一様等方性は,実はパスカルの原理と関わりが深いことが知られています。余白の都合上,パスカルの原理については別記事で紹介します。
この記事では水圧を例として取り上げましたが,空気など,他の流体でも同じ法則が成り立つことを意識しましょう。