コリオリの力の導出

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コリオリ力や転向力という言葉を聞いたことがあるでしょうか。理科の地学分野で台風の説明をされるときに名前だけ聞いたという人もいるでしょう。

コリオリの力はしばしば転向力と呼ばれます。実は私たちの身の回りにコリオリの力は頻繁に表れます。たとえば台風など風が北半球で反時計回りに渦巻くのは,風が進む際にコリオリの力を受けているからなのです。

コリオリの力の正体は,ある座標系を用いたときに生じる見かけの力なのです。今回は,実際に運動方程式を立ててコリオリの力を導出し,その効果を説明していきます。

回転座標系

コリオリの力を議論する上で,角速度 ω\omega で回転する座標系を考えます。ω\omega は一定とは限らないものとします。

下図のように静止座標系 xyxy に対して,角速度 ω\omega で回転する座標系 XYXY 座標を取ります。

xyxy 座標と XYXY 座標のが θ\theta ずれているものとします。このとき θ˙=ω\dot{\theta} = \omega となります。

pic1

XYXY 座標系の基底ベクトルをそれぞれ eX\boldsymbol{e}_XeY\boldsymbol{e}_Y とすると,このとき eX=(cosθsinθ)\boldsymbol{e}_X = \begin{pmatrix} \cos \theta \\ \sin \theta \end{pmatrix}eY=(sinθcosθ)\boldsymbol{e}_Y = \begin{pmatrix} -\sin \theta \\ \cos \theta \end{pmatrix} となります。

物体の位置 r\boldsymbol{r}XYXY 座標で (X,Y)(X,Y) と表されるとき,r=XeX+YeY\boldsymbol{r} = X \boldsymbol{e}_X + Y \boldsymbol{e}_Y と表されます。

基底ベクトルの時間変化を見てみましょう。

ddteX=ddt(cosθsinθ)=(ωsinθωcosθ)=ωeYddteY=ddt(sinθcosθ)=(ωcosθωsinθ)=ωeX\begin{aligned} \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{e}_X &= \dfrac{d}{dt} \left( \begin{array}{c} \cos \theta \\ \sin \theta \end{array} \right)\\ &= \left( \begin{array}{c} -\omega \sin \theta \\ \omega \cos \theta \end{array} \right)\\ &= \omega \boldsymbol{e}_Y\\ \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{e}_Y &= \dfrac{d}{dt} \left( \begin{array}{c} -\sin \theta \\ \cos \theta \end{array} \right)\\ &= \left( \begin{array}{c} -\omega \cos \theta \\ -\omega \sin \theta \end{array} \right)\\ &= -\omega \boldsymbol{e}_X \end{aligned}

こうして次の関係式が得られます。

回転座標系の基底ベクトルの時間変化

ddteX=ωeYddteY=ωeX \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{e}_X = \omega \boldsymbol{e}_Y\\ \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{e}_Y = - \omega \boldsymbol{e}_X

ここで注意してほしいことですが,基底ベクトルの時間変化はあくまでも 静止系から回転座標系の基底ベクトルを見たとき に生じるものであって, 回転座標系の観測者には認識されない ということに注意してください。

速度ベクトル・加速度ベクトルの記述

先ほど導入した eX\boldsymbol{e}_XeY\boldsymbol{e}_Y を用いて速度ベクトルを記述していきましょう。

v=ddtr=ddt(XeX+YeY)=X˙eX+ωXeY+Y˙eYωYeX=(X˙ωY)eX+(Y˙+ωX)eY\begin{aligned} \boldsymbol{v} &= \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{r}\\ &=\dfrac{d}{dt} \left( X \boldsymbol{e}_X + Y \boldsymbol{e}_Y \right)\\ &=\dot{X} \boldsymbol{e}_X + \omega X \boldsymbol{e}_Y + \dot{Y} \boldsymbol{e}_Y - \omega Y \boldsymbol{e}_X\\ &=(\dot{X} - \omega Y) \boldsymbol{e}_X + (\dot{Y} + \omega X) \boldsymbol{e}_Y \end{aligned}

が得られました。さらに微分をして加速度を計算しましょう。

a=ddtv=ddt{(X˙ωY)eX+(Y˙+ωX)eY}=(X¨ω˙YωY˙)eX+ω(X˙ωY)eY+(Y¨+ω˙X+ωX˙)eYω(Y˙+ωX)eX=(X¨2ωY˙ω2Xω˙Y)eX+(Y¨+2ωX˙ω2Y+ω˙X)eY\begin{aligned} \boldsymbol{a} &= \dfrac{d}{dt} \boldsymbol{v}\\ &= \dfrac{d}{dt} \{(\dot{X} - \omega Y) \boldsymbol{e}_X + (\dot{Y} + \omega X) \boldsymbol{e}_Y\}\\ &= (\ddot{X} - \dot{\omega} Y - \omega \dot{Y}) \boldsymbol{e}_X + \omega (\dot{X} - \omega Y) \boldsymbol{e}_Y\\ &\quad\quad +(\ddot{Y} +\dot{\omega} X + \omega \dot{X}) \boldsymbol{e}_Y - \omega (\dot{Y} + \omega X) \boldsymbol{e}_X\\ &= (\ddot{X} -2 \omega \dot{Y} - \omega^2 X-\dot{\omega} Y ) \boldsymbol{e}_X + (\ddot{Y} + 2\omega \dot{X} -\omega^2 Y+\dot{\omega} X )\boldsymbol{e}_Y \end{aligned}

こうして加速度を XYXY の基底ベクトルで表すことができました。

加速度の回転座標系の基底ベクトルを用いた表示

a=(X¨2ωY˙ω2Xω˙Y)eX+(Y¨+2ωX˙ω2Y+ω˙X)eY \boldsymbol{a} = (\ddot{X} -2 \omega \dot{Y} - \omega^2 X -\dot{\omega} Y) \boldsymbol{e}_X + (\ddot{Y} + 2\omega \dot{X} -\omega^2 Y +\dot{\omega} X)\boldsymbol{e}_Y

繰り返しますが,これらは 静止系から観測したもの です。ここから運動方程式を回転座標系と静止座標系それぞれで考えて,その間のギャップを考察して,コリオリの力を導出します。いきます。

コリオリの力・オイラーの力

加速度が得られたので運動方程式を考察できるようになります。力 F\boldsymbol{F}XX 成分と YY 成分をそれぞれ FXF_XFYF_Y と表しましょう。このとき F=FXeX+FYeY\boldsymbol{F} = F_X \boldsymbol{e}_X + F_Y \boldsymbol{e}_Y となります。

静止座標系における運動方程式

先ほど計算した加速度の回転座標系の基底ベクトルによる表示を用いて運動方程式を記述しましょう。ma=Fm \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F} を成分ごとに見ますと

FX=m(X¨2ωY˙ω2Xω˙Y)FY=m(Y¨+2ωX˙ω2Y+ω˙X)\begin{aligned} F_X &= m (\ddot{X} -2 \omega \dot{Y} -\omega^2 X - \dot{\omega}Y)\\ F_Y &= m (\ddot{Y} + 2\omega \dot{X} -\omega^2 Y + \dot{\omega} X) \end{aligned}

が得られます。

回転座標系における運動方程式

回転座標系において物体の加速度は (X¨Y¨)\begin{pmatrix} \ddot{X} \\ \ddot{Y} \end{pmatrix} になります。したがって運動方程式は

m(X¨Y¨)=(FXFY)\begin{aligned} m \left( \begin{array}{c} \ddot{X}\\ \ddot{Y} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} F_X\\ F_Y \end{array} \right) \end{aligned}

です。……といいたいのですが,静止座標系のときの式を思い出すと,足りない項があることに気付きます。補完をしますと運動方程式は

m(X¨Y¨)=(FXFY)+mω2(XY)+2mω(Y˙X˙)+mω˙(YX)\begin{aligned} m \left( \begin{array}{c} \ddot{X}\\ \ddot{Y} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} F_X\\ F_Y \end{array} \right) +m\omega^2 \left( \begin{array}{c} X\\ Y \end{array} \right) + 2m\omega \left( \begin{array}{c} \dot{Y}\\ -\dot{X} \end{array} \right) +m \dot{\omega} \left( \begin{array}{c} Y\\ -X \end{array} \right) \end{aligned}

となる必要があります。この式を見ると回転座標系の運動において,3つの見かけの力が生じていることに気付きます。

2項目

2項目の見かけの力は mω2(XY)m\omega^2 \begin{pmatrix} X\\Y \end{pmatrix} ですが,これは円運動で見ましたね。遠心力です。

3項目

3項目の見かけの力は mω(Y˙X˙)m\omega \begin{pmatrix} \dot{Y}\\-\dot{X} \end{pmatrix} です。 これをコリオリの力といいます。 このベクトルをよく見ていただくと,XYXY 座標系で見たときの速度ベクトルを直交することがわかります。こうして回転座標系で物体の運動を見るとき,速度方向と直交した見かけの力が働くことがわかります。

台風が渦を巻くのはコリオリの力が由来となっています。空気は気圧が高いところから低いところに向かって流れますね。このとき空気はまっすぐ流れ込むかのように思えます。地球の自転のことを考えると,回転座標系における見かけの力を勘定に入れる必要が出てきます。コリオリの力は速度と直交する見かけの力でした。そのため空気の進路は曲がってしまうわけです。

4項目

3項目の見かけの力は mω˙(YX)m\dot{\omega} \begin{pmatrix} Y\\-X \end{pmatrix} です。これはオイラーの力といいます。力の向きは回転の方向と逆向きの方向です。角速度が一定であれば,ω˙=0\dot{\omega}=0 で発生しません。

これは回転における「慣性」といったところでしょう。電車が発進するとき,慣性の力によって後ろ向きに引っ張られる感覚がありますね。これの回転バージョンということです。身近な例でいえば,遊園地のメリーゴーランドが稼働・停止するときに感じることができます。

観測系と見かけの力に注意することは力学において重要です。今回は回転座標系の角速度が一定で計算をしましたが,実は角速度が一定ではない場合,さらに見かけの力が増えます。実際に問題を考える場合,どうすればややこしい見かけの力が生じないのかについても考えてみたいですね。