t=0 において座標系 S,S′ は重なっており,その瞬間に原点から光が発せられた状況を考えます。
S′ 系は S 系に対して +x の方向に速度 v で等速度並進運動をしているとします。
その波面が S 系で測った時刻 t に,P(x,y,z) に達したとすれば,
x2+y2+z2=ct∴x2+y2+z2=(ct)2(1)
S′ 系においても,光の速さは変わらないはずであるから,
x′2+y′2+z′2=(ct′)2(2)
さて,S から S′ への変換を求めるというのは,
⎝⎛t′x′y′z′⎠⎞=⎝⎛a1a5a9a13a2a6a10a14a3a7a11a15a4a8a12a16⎠⎞⎝⎛txyz⎠⎞
における a1 から a16 を決める作業に他なりません。ここで a1 から a16 は速度 v の関数です。0 次の項がないのは,t=t′=0 において x=x′,y=y′,z=z′ となるためです。
また,2 次以上の項があった場合,式 (2) において 4 次以上の項が出てくることになりますが,式 (1) ではそのような項はないので,矛盾します。
よって,2次以上の項はないはずです。また,ex,x 等はどうすればいいかと思うかもしれませんが,テイラー展開すれば整式に帰着できるはずなので,これで尽くされます。
さて,
x′=a5t+a6x+a7y+a8z
において,t=0,x=0 のとき,いかなる y,z においても x′=0 になるはずなので,a7=a8=0 です。よって,
x′=a5t+a6x
さらに,t=t,x=vt のとき,x′=0 となっていなければおかしいので
0=a5t+a6vt∴a5=−a6v
よって,
x′=a6(x−vt)
とかけます。次に,
y′=a9t+a10x+a11y+a12z
において,もし t に比例する項が残っていたら,t の変化とともに,y′方向に運動することになりますが,今は x 方向のLorentz変換を考えているので不適です。よって a9=0 。同様に考えれば,a13=0 です。
ここで,この状況設定において,空間の等方性より,x 方向以外には特別な方向というのは存在しません。よって y′,z′ の方向に特別な意味はないはずであり,これら二つは対称的な関係になっているはずです。よって,a10=a14,a11=a16 であり,さらに a12=−a15 です。
ここで,この式に負号がつくのは,y′,z′を入れ
変えたときには,右手系から左手系に変わってしまうので,その調整をするためです。
これらをまとめれば,
⎩⎨⎧t′=a1t+a2x+a3y+a4zx′=a6(x−vt)y′=a10x+a11y+a12zz′=a10x−a12y+a11z(3)
となります。式 (2) に代入する際プライムがついたこれらの式は全て二乗されるため,異なる二変数の積の項が出てきます。
具体的には,
a1a2tx,a1a3ty,a1a4tz,・・・
等です。
式 (1) ではそのような二変数の項はないことから,これらの係数は全て0にならなければなりません。これにより,いくつかの係数が0であることが以下のように導けます。
まずは,ty,tz を含む項は,式 (3) からしか出てこないので,
a1a3=a1a4=0
a1=0 であるから,
a3=a4=0
また,xy を含む項の係数について,
2a10a11−2a10a12=2a10(a11−a12)=0
xz を含む項の係数について,
2a10a12+2a10a11=2a10(a11+a12)=0
もし a10=0 だとすると,a11=a12=0 であることになりますが,明らかにa11=0 であるから,不適です。よってa10=0。
さて,y′,z′については
(y′z′)=(a11−a12a12a11)(yz)(4)
と表されます。ここで y′ 軸の気持ちになってください。v が −v になったところで,x の項をもたない自分にとっては,空間の等方性から変換のされ方に違いはありません。
z′ にとっても同じようなことが言えるので,v を −v にしても(a11−a12a12a11)の要素は全く変わりません。ここで,S′ から S は −v で等速度並進運動しているから,
(yz)=(a11−a12a12a11)(y′z′)
というように全く同様にかけます。これを式 (4) に代入すれば,
(y′z′)=(a11−a12a12a11)2(y′z′)
∴(a11−a12a12a11)=(1001)
∴{a112−a122=1a11a12=0
ここでa11=0 とすると,−a122=1 とはなり得ません。よって,
a11=±1, a12=0
ここで,v→0 の極限では y,y′ 軸は重なるはずなので,a11=1
よって,
⎩⎨⎧t′=a1t+a2xx′=a6(x−vt)y′=yz′=z(5)
とかけるはずです。
再びこれを式 (2) に代入し,整理して式 (1) と係数を比較すれば,
⎩⎨⎧a62−c2a22=1c2a12−a62v2=c22va62+2c2a2a1=0
v→0 の極限では x,x′ 軸,t,t′ 軸は重なるはずなので,a1>0, a6>0 であり,さらに v=0
であることに注意しながら同値変形していくと,
⎩⎨⎧a1=1−c2v21a2=−c2va1a6=a1
これらを,式 (5) に代入すれば,Lorentz変換:
⎩⎨⎧t′=1−c2v2t−c2vxx′=1−c2v2x−vty′=yz′=z
を導くことができます。
ここで,
γ=1−c2v21, β=cv
と略記されることが多いことを記しておきます。
古典力学的な極限,つまり,v/c が 0 に近いような極限では,Lorentz変換はGalilei変換に帰着しています。