相対論が誕生した理由
なぜ相対性理論は生まれたのか
なぜ相対性理論は生まれたのか
相対論が誕生する少し前,電磁気学がMaxwellによりまとめられて,電磁波,つまり光の存在が明らかとなりました。
Maxwell方程式によれば,その方程式が成立するならば,光の速度は で表され,一定だというのです。
では,光の速度がである座標系に対して,速度で運動している系を考えてみますと,その座標系では光の速度は となってしまうはずです。
光の速度が でないならばMaxwell方程式は成立しないので,Maxwell方程式が成立するのは宇宙のどこかにあるただ一つの座標系だけでしょう。この座標系を絶対系と呼ぶことにします。
絶対系がどこにあるのか,という疑問が生じますが,これに対するもっともらしい解答は「宇宙の重心と共に動く座標系」と言えるかもしれません。
とにもかくにも,Maxwell方程式が成立するような唯一の座標系「絶対系」に対し,地球は運動しているはずです。ならば,光の速度も相対的に からずれるはずですから,このズレを実験して求めて,それをもとに計算すれば,地球の「絶対系」に対する「絶対速度」が求められるはずです。
このように考えた物理学者たちは,光の速度を実験で測り,それをもとに地球の絶対速度を計測しました。すると,なんと地球の絶対速度はほぼ0に等しいことが明らかになりました。 当時の物理学会には衝撃が走り,この事実を当時の物理学の原理だけでなんとか説明しようと必死になりました。しかし,どんなに考えても それをきちんと説明できる方法は見つかりませんでした。
そんな中,逆転の発想をしたのがEinsteinでした。これを今までの原理で説明するのは不可能である,むしろこれを原理として取り上げるべきではないかと考えたのです。具体的には
- 全ての慣性系において,物理法則は同じ形式で表される
- 真空中の光の速さは光源の運動状態に無関係である
ということを原理として取り上げました。
ちなみに,LorentzやPoincaréは,Galilei変換の代わりにその拡張であるLorentz変換とよばれる変換をすれば,Maxwell方程式の形は変わらないことを証明しました。
ただし,Maxwell方程式というのは電磁気学における一法則であり,法則の一つのために唐突に複雑な変換(だって,空間と時間を織り交ぜないといけない変換なんて,いきなりは受け入れられない)を原理として取り上げたりするのは,普遍的な物理学を作り上げていく上で好ましくありません。
理解しやすく,簡潔な原理が,普遍的な物理学を作るためには必要であり,それを成し遂げたのがEinsteinなのです。
実際,Einsteinの原理から,Lorentz変換も導出することができます。Einsteinは「そんな複雑な変換を仮定しなくても,この2つの普遍的な原理さえ認めれば,この問題が解決する。これを取り入れて物理学を再構築していきませんか。」ということを提案したということになります。
当サイトではそんな物理学の再構築について様々な面から解説していますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。