相対性理論では,テンソルの式によって物理法則を表すことを目標とします。
なぜテンソルを使うと都合が良いか考えましょう。
ある座標系 xμ において,物理法則
Aβα=BαγCγβ
が成立していたとします。Aβα,Bαγ,Cγβ はこの座標系における物理量であり,(当然ですが)他の座標系ではかった物理量は含まれていません。
もし他の座標系でAβα,Bαγ,Cγβに対応する物理量 Aβ′α′,Bα′γ′,Cγ′β′に対し,
Aβ′α′=Bα′γ′Cγ′β′であったとすれば,この物理法則はある座標系にのみ成立する限定的なものであり,普遍的な物理法則とは言えません。座標系 xμ から座標変換して,座標系 xμ′ に観測系を移したとしても,成立しているような物理法則が普遍的で追い求めたいものです。
Aβα,Bαγ,Cγβ がテンソルであるとします。すると,
⎩⎨⎧Aβα=∂xα′∂xα∂xβ∂xβ′Aβ′α′Bαγ=∂xα′∂xα∂xγ′∂xγBα′γ′Cγβ=∂xγ∂xγ′∂xβ∂xβ′Cγ′β′
が成立します。これをある座標系 xμ における物理法則に代入すると,
∂xα′∂xα∂xβ∂xβ′Aβ′α′=∂xα′∂xα∂xγ′∂xγBα′γ′∂xγ∂xγ′∂xβ∂xβ′Cγ′β′=∂xα′∂xα∂xβ∂xβ′Bα′γ′Cγ′β′
よって
Aβ′α′=Bα′γ′Cγ′β′
ある座標系 xμ において,成立していた物理法則
Aβα=BαγCγβ
が,変換後の座標系 xμ′においても全く同じ形で成立していることがわかります。テンソルによって記述される物理法則は,どんな座標系でも同じ形で成立するのです。
これがテンソルが物理において本質的である理由です。Einsteinが相対論において規定した原理には,「物理法則はどんな座標系でも形がかわらない」というものが含まれていて,これはテンソルで物理法則が描かれるならば満たされるのです。
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