記号の上げ下げ

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計量テンソルの「逆行列」的な役割を担う反変計量テンソルについて解説した後,テンソルの添字の上げ下げについて説明します。

反変計量テンソル

まず計量テンソルを行列だと考えると,基準となる座標系 XμX^{\mu} から座標変換でたどり着くことのできる座標においては,「逆行列」が存在することを示します。

XμxμX^{\mu} \to x^{\mu} に対して,計量テンソルがテンソルであることを使うと gμν=XαxμXβxνηαβ(1) g_{\mu\nu} = \dfrac{\partial{X^\alpha}}{\partial{x^\mu}} \dfrac{\partial{X^\beta}}{\partial{x^\nu}} \eta_{\alpha\beta} \tag{1} ここで XμX^\mu における計量テンソルについては, gμν:=ητσXτXμXσXν=ημν g_{\mu\nu} := \eta_{\tau\sigma}\dfrac{\partial{X^\tau}}{\partial{X^{\mu}}}\dfrac{\partial{X^\sigma}}{\partial{X^{\nu}}} = \eta_{\mu\nu} であることを用いました。式 (1)(1) の右辺について,これは三つの行列の式であるとみなすことができます。

よってこの式の行列式について考えると,ヤコビアンの二乗と η|\eta| の積であることになります。

ここで,数学の定理よりヤコビアンが0であることと XμX^\mu 成分同士に関数関係があることは同値です(ここはもうちょっとうまく説明できないか模索中です)が,そんなことはあり得ないのでヤコビアンは0ではありません。η|\eta| も0ではないから, g0 |g| \neq 0

よって上記のような条件のもとでは,計量テンソルの逆行列が存在します。計量テンソルの成分 gμνg_{\mu\nu} に対し,その逆行列の成分を gμνg^{\mu\nu} であらわすことにします。行列と逆行列の積を取ることを考えて, gμνgνρ=δμρ g_{\mu\nu}g^{\nu\rho} = \delta^\rho_\mu が成立します。商の定理よりこれは(2,0)テンソルです。この(2,0)テンソルを反変計量テンソルといいます。

記号の上げ下げ

ある反変ベクトル AμA^\mu に対し,計量テンソルとの縮合 gμνAνg_{\mu\nu}A^\nu を考えます。これは(0,1)テンソル,つまり共変ベクトルであるので,BμB_{\mu} とかけます。

BμB_{\mu} と反変計量テンソル gμνg^{\mu\nu} との縮合について, gσνBσ=gμνgσνAσ=δσμAσ=Aμ g^{\sigma\nu}B_{\sigma} = g_{\mu\nu}g^{\sigma\nu}A^{\sigma} = \delta^{\mu}_{\sigma}A^{\sigma} = A^{\mu} となり,BμB_{\mu}AμA^\mu に戻すことができます。

BμB_{\mu} はよく,AμA^\mu と同じ情報を持つという意味で AμA_\mu と表記されます。このように表記すると決めておけば,計量テンソルを用いて,添字を上げたり下げたりできるようになります。

一般的なテンソルについても同じです。例えば, gμνTασμρ=Tνασρ g_{\mu\nu}T^{\sigma\mu\rho}_{\alpha} = T^{\sigma\rho}_{\nu\alpha} となります。

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