運動方程式から導出する仕事率|定義と重要な例

更新日時 2022/04/26

この記事では仕事率を扱います。「仕事」の影に隠れがちな概念ではありますが,定義を理解した上でいつでも説明できるようにしておくべきです。

目次
  • 仕事率とは?

  • 仕事率の単位

  • 仕事率の重要公式

仕事率とは?

仕事率 II を最初に紹介します。

仕事率

物体にはたらく力を F\boldsymbol F,物体の速度を v\boldsymbol v とする。
このとき,仕事率 III=Fv I=\boldsymbol F\cdot\boldsymbol v となる。

では,仕事率は物理的にはどのような意味を持つ量なのでしょうか。「仕事率」という名前からも分かるとおり,仕事と仕事率には密接な関係があります。仕事率は単位時間あたりの仕事,つまり仕事の時間微分となっているのです。式で表すと, ddtW=ddt(Fr)=Fv=I \dfrac{d}{dt}W=\dfrac{d}{dt}(\boldsymbol F\cdot\boldsymbol r)=\boldsymbol F\cdot\boldsymbol v=I となります。

今度は,仕事率が運動方程式を変形することで得られる量であることを示し,定量的に仕事率を観察してみましょう。

では早速,運動方程式 mr¨=F m\ddot{\boldsymbol r}=\boldsymbol F を変形して,仕事率を導いていきます。

運動方程式の両辺について,r˙=v\dot{\boldsymbol{r}}=\boldsymbol v と内積をとると, r˙mr¨=m2ddt(r˙r˙)=ddt(12mr˙2)=Fv \dot{\boldsymbol{r}} \cdot m\ddot{\boldsymbol{r}} = \dfrac{m}{2} \dfrac{d}{dt}\left(\dot{\boldsymbol{r}}\cdot\dot{\boldsymbol{r}}\right) = \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}m\dot{\boldsymbol r}^2\right) = \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v} となります。ここで ddt(r˙r˙)=r¨r˙+r˙r¨=2r˙r¨ \dfrac{d}{dt}\left(\dot{\boldsymbol{r}}\cdot\dot{\boldsymbol{r}}\right) = \ddot{\boldsymbol{r}}\cdot \dot{\boldsymbol{r}} + \dot{\boldsymbol{r}}\cdot\ddot{\boldsymbol{r}} = 2 \dot{\boldsymbol{r}}\cdot\ddot{\boldsymbol{r}} を利用しています。よって I=Fv=ddt(12mr˙2) I= \boldsymbol{F}\cdot\boldsymbol{v}=\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}m\dot{\boldsymbol r}^2\right) がわかりました。

左辺は仕事率,右辺は運動エネルギーの時間微分となっています。つまり,仕事率は,運動エネルギーの変化率を与えることがわかります。 このように,仕事率は仕事と運動エネルギーにも関係が深いので,以下の記事と合わせて勉強しておくと良いと思います。

仕事と運動エネルギーの関係

仕事率の単位

次に仕事率の単位をみていきましょう。まず,仕事の単位はジュール J=Nm=kgm2s2 \mathrm{J}=\mathrm{N\cdot m}=\mathrm{kg\cdot m^2\cdot s^{-2}} で与えられるのでした。また前節で,仕事率は単位時間あたりの仕事となっていることを紹介しました。よって仕事率の単位はジュールを時間で割ったものになります。すなわち W=J/s=Nm/s=kgm2s3 W=\mathrm{J/s}=\mathrm{N\cdot m/s}=\mathrm{kg\cdot m^2\cdot s^{-3}} となります。最左辺のように,仕事率の単位(すなわちジュールを時間でわったもの)をワットと定義します。

仕事率の重要公式

仕事率を実際の物理系で考えるとき,ポイントとなる状況が主に2つあります。以下でそれぞれ紹介していきます。

力が速度に直交しているとき

仕事率の定義は,力ベクトルと速度ベクトルの内積で与えられるのでした。よって内積の基本性質より,これらのベクトルが直交しているときは仕事率が0になります。よって仕事は発生せず,運動エネルギーも変化しません。以下で例を2つほど見てみましょう。

ローレンツ力 最初の重要な例は磁場に起因するローレンツ力です。電荷 qq を持った粒子にはたらくローレンツ力は F=q(B×v) \boldsymbol F=q(\boldsymbol B\times\boldsymbol v) と表されます。よって力は常に速度と直交し,仕事率は0となります。 斜面 次に滑らかな斜面を考えてみましょう。斜面がどんなに複雑な形をしていても,垂直抗力は速度と直交します。なぜなら速度は常に斜面の接線方向となり,垂直抗力は斜面に垂直な方向の力であるからです。よってこの場合も仕事率は0となります。

相対運動を考えるとき

相対速度と仕事率 N粒子系の相互作用により生じる仕事率を考えましょう。j番目の粒子がi番目の粒子に及ぼす作用を Fij\boldsymbol {F_{ij}},i番目の粒子の速度を vi\boldsymbol v_i と書くことにすると,系の全仕事率の総和は W=ijFijvi W=\sum_i\sum_j \boldsymbol {F_{ij}}\cdot\boldsymbol v_i と表されます。(単に2つの添字に関して総和を取っただけです。)

ここで粒子間相互作用は作用反作用の関係より Fij=Fji\boldsymbol {F_{ij}}=-\boldsymbol {F_{ji}} となることに注意すると W=i<jFij(vivj)i<jFijvij W=\sum_{i<j}\boldsymbol {F_{ij}}\cdot(\boldsymbol v_i-\boldsymbol v_j)=\sum_{i<j}\boldsymbol {F_{ij}}\cdot\boldsymbol v_{ij} (vijv_{ij} は粒子間の相対速度)と変形できます。

この式の意味することは,粒子間相互作用の仕事率はそれらの相対運動で求めた仕事率と一致するということです。

動く斜面 先ほど例にとった斜面に車輪がついて,自由に動く場合を考えましょう。このとき垂直効力の反作用を斜面が受けて,色々に動くと考えられますが,この場合も仕事率の総和は0となります。なぜなら,斜面と一体となって質点も運動するため,相対速度は結局斜面が静止している場合と変わらないからです。

以上で仕事率の重要な例を扱いました。そのいずれも,仕事率が0となるものでした。実際,大学入試で仕事率を問われるときは,答えが0になるものが多いです。もちろん0にならない場合の仕事率の求め方は,既に紹介した仕事率の定義によります。常に定義に基づいて計算していきましょう。

物理の何らかの量には合わせて「率」を定義しておくことが多いです。

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