英語の倒置法|倒置が生じる理由や使い方、倒置の構文まで例文付きで丁寧に解説

英語では、特定の語句を強調したり、文のリズムを整えたりするために通常の語順を変化させることがあります。このような語順の変化は「配置転換」と呼ばれ、中でも「倒置」は高校英文法の重要な学習項目になっています。

今回はこの「倒置」を中心に、英語の配置転換について詳しく見ていきます。

倒置とは

英文法では、助動詞や be動詞を主語の前に置いた形を「倒置」と呼びます。「倒置」の最も一般的な例としては疑問文が挙げられますが、文法的に重要な「倒置」には次のようなものがあります。

① 否定語が文頭に出る場合
② if を省略した仮定
③ 慣用的な倒置

まず①から順番に見ていきましょう。

① 否定語が文頭に出る場合

英語の文では、否定の意味を強調するために、never (一度も~ない)、hardly (ほとんど~ない)、rarely (めったに~ない)、little (ほとんど~ない)、under no circumstances (どんな状況でも~ない) などの否定を表す副詞(句)を文頭に置くことがあります。この場合、平叙文の語順が疑問文の語順に変わります

(1) I have never seen such a beautiful sight.
(1’) Never have I seen such a beautiful sight.
私はこれほど美しい光景を今までに一度も見たことがない。

(2) He rarely comes here.
(2’) Rarely does he come here.
彼はここにはめったに来ない。

(3) You shouldn’t tell anyone about this under any circumstances.
(3’) Under no circumstances should you tell anyone about this.
どんな状況でもこのことを誰にも話してはいけない。

例文(1)(2)(3)の否定の意味を強調した文が(1’)(2’)(3’)になります。(1’)(2’)(3’)では文頭に否定を表す副詞(句)が置かれ、後に続く部分が疑問文の語順になっています。

このように、文頭に置かれる否定語は、副詞(句)である場合がほとんどですが、次のように not が名詞 (目的語) を伴って文頭に出る場合もあります。

(4) I didn’t see a thing.
(4’) Not a thing did I see.
私は何一つ見ていない。

否定語が文頭へ出ることによる倒置は、様々な成句においても行われます。以下に4つの例を紹介します。

not only ~ but (also) …

not only ~ but (also) …” は「~だけでなく…も」という意味の成句です。

(5) They were not only tired but (also) hungry.
(5’) Not only were they tired but (also) hungry.
彼らは疲れていただけでなく、空腹でもあった。

no sooner … than ~ / hardly [scarcely] … when [before] ~

no sooner … than ~” / “hardly [scarcely] … when [before] ~” は「…するとすぐに~」という意味の成句です。前の節には過去完了形、後ろの節には過去形を使うのが一般的です

(6) The concert had no sooner started than she arrived.
(6’) No sooner had the concert started than she arrived.
コンサートが始まってすぐに彼女が到着した。

(7) The concert had hardly [scarcely] started when [before] she arrived.
(7’) Hardly [Scarcely] had the concert started when [before] she arrived.
コンサートが始まってすぐに彼女が到着した。

not … until ~

not … until ~” は「~までは…ない / ~して初めて…する」という意味の成句です。

(8) I didn’t know about it until yesterday.
(8’) Not until yesterday did I know about it.
そのことについては昨日まで知らなかった。(= 昨日になって初めてそのことについて知った。)

(9) She did not arrive until the concert was over.
(9’) Not until the concert was over did she arrive.
彼女はコンサートが終わるまで到着しなかった。(= 彼女はコンサートが終わって始めて到着した。)

(8’)では not が副詞句 (until yesterday) を伴って文頭に移動しています。(9’)では not が副詞節 (until the concert was over) を伴って文頭に移動しています。

Tips【否定語以外の要素が文頭に出る倒置】

否定語以外の要素が文頭に出て倒置構文を作ることがあります。この場合も、文頭に出た語句の意味が強調されます。

  • Only then did we realize she was crying.
    彼女が泣いていることにその時初めて気がついた。
  • Well do I remember the first time I met you.
    私はあなたに初めて会った時のことをよく覚えている。
  • So heavy was the box that I couldn’t move it.
    その箱はあまりに重かったので動かすことができなかった。
  • Such was her excitement that she lost control of herself.
    彼女の興奮は自分を見失ってしまうほどだった。

if を省略した仮定

書き言葉や改まった話し言葉では、仮定法に使う if を省略して、倒置の形で仮定の意味を表すことがあります。

(10) If I were you, I wouldn’t do such a thing.
(10’) Were I you, I wouldn’t do such a thing.
もし私があなたならそのようなことはしないだろう。

(11) If I had known about it, I would have told you.
(11’) Had I known about it, I would have told you.
もし私がそのことについて知っていたらあなたに教えていただろう。

(12) If you should be interested in our offer, please contact us.
(12’) Should you be interested in our offer, please contact us.
私たちの提案に興味がある場合は連絡してください。

なお、if の省略は were, had, should が文頭に出る場合にのみ行われます

慣用的な倒置

~もそうだ」/「~もそうでない」を意味する so / neither [nor] が文頭に来る場合や、may を用いた祈願文などでは慣用的に倒置が起こります。

(13)
“I’m from Tokyo.” - “So is Ken.”
「私は東京出身です。」-「ケンもそうですよ。」

(14)
“I don’t know her.” - "Neither [Nor] do I.
「私は彼女を知りません。」「私も知りません。」

(15) May you always be happy!
どうかいつまでもお幸せに!

倒置以外の配置転換

この項では主語と動詞の位置が入れ替わる配置転換を紹介します。このような配置転換は、助動詞や be動詞を主語の前に置く「倒置」とは文法的に区別されます。

補語になる形容詞(句)が文頭に出る場合

主語に長い修飾語句がついている場合などに、補語になる形容詞(句)を be動詞とともに文頭に出して、頭でっかちな形を修正することがあります。その場合、主語と be動詞の位置が入れ替わることになります。

(16) Your opinion about the current health care system in Japan is very important.
Very mportant is your opinion about the current health care system in Japan.
とても重要なのは、日本の現在の医療制度についてのあなたの意見です。

(17) The person who has a true friend is happy.
Happy is the person who has a true friend.
幸せなのは、真の友人を持つ人だ。

方向や場所を表す副詞(句)が文頭に出る場合

(18) Down came the rain.
雨が降ってきた。

(19) In the room was a dead body.
その部屋の中にあったのは死体だった。

(20) Here is your room key.
こちらがお部屋の鍵です。

(21) There comes a bus.
バスが来たよ。

(18)~(21)のように、方向や場所を表す副詞(句)が文頭に置かれた文では、主語と動詞の位置が入れ替わります。このような構文にすることで、重要な情報を最後に伝えることができます。なお、次の例のように主語が代名詞の場合は通常の語順になります。

(20’) Here it is.
さあどうぞ。

(21’) There you go again.
ほらまた始まった。

直接話法の伝達部

(22) “What are you doing?” asked John.
「何してるの?」とジョンは尋ねた。

(22)のように、直接話法の伝達部では主語と動詞の位置が入れ替わります。なお、次の例のように主語が人称代名詞の場合は通常の語順になります。

(22’) “What are you doing?” he asked.
「何してるの?」と彼は尋ねた。

練習問題

最後に練習問題を解いてみましょう。

練習問題

次の英文を指示に従って書き換えなさい。

1.I little thought that I would see him again. (Little で始めて)

2.You are not allowed to smoke at any time. (At no time で始めて)

3.He didn’t come back until 10 p.m. (Not で始めて)

4.If you had invited her, she would have come. (If を省略して)

5.The view from the top of Mt. Fuji was magnificent. (Magnificent で始めて)

6.A 10-dollar bill was in his pocket. (In his pocket で始めて)

解答

1.Little did I think that I would see him again.

2.At no time are you allowed to smoke.

3.Not until 10 p.m. did he come back.

4.Had you invited her, she would have come.

5.Magnificent was the view from the top of Mt. Fuji.

6.In his pocket was a 10-dollar bill.

この記事では、疑問文の語順になる「倒置」と主語と動詞の位置が入れ替わる「倒置以外の配置転換」について解説しましたが、高校英文法では両者を合わせて「倒置」と呼ぶのが一般的です。