静電誘導
静電誘導・誘導分極について解説します。
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静電誘導とは
静電誘導とは
静電誘導とは,金属などの導体に電荷を帯びた物体(帯電体)を近づけると,導体内の電荷分布に偏りが生じ,導体が帯電体に引きつけられる現象のことです。
帯電体が正の電荷を帯びているとき,以下のように図示されます。
また,帯電体が負の電荷を帯びているときは,以下のように図示されます。
静電誘導の原理
静電誘導という現象が起こる理由は,導体内には自由電子が存在し,導体内を自由に動くことができるためです。
自由電子は負の電荷を持っているため,正の電荷を帯びた帯電体を導体に近づけると,導体内の自由電子が帯電体に近づき,帯電体に近い方の導体表面に分布します。いま導体が電荷を帯びていない状態を考えると,導体の電荷の総量は0とならなければなりません。そのため,導体内には正の電荷の分布も生じます。ここで,静電エネルギー(詳しくは静電気力とクーロンの法則をご覧ください)を考えると,同種の電荷を帯びたものどうしは離れた方が位置エネルギーが低くなり安定になります。したがって,導体内の正の電荷分布は帯電体から遠ざかり,帯電体とは逆の導体表面に分布することとなります。
負の電荷を帯びた帯電体を導体に近づけた場合も,同様に考えることができます。つまり,負の電荷は帯電体からより離れた方が安定となるために,自由電子は帯電体から遠い方の導体表面に分布します。 一方,導体の電荷の総量が0となるために,導体内に発生する正の電荷分布は,静電エネルギーを考えると帯電体に近い方の導体表面に分布することとなります。
帯電列
帯電とは,物体が電荷を帯びることを指します。例えば,異なる物体どうしを擦り合わせると,一方が正の電荷を,もう一方が負の電荷を帯びることがあります。このような現象は静電誘導によって起こりますが,このときどちらがどのような電荷を帯びるのかを判断する指標として,帯電列があります。
帯電列は下図のようになっています。図の左側に行くほど正の電荷を帯びやすく,右側に行くほど負の電荷を帯びやすくなっています。
身近な例で考えてみましょう。髪の毛にプラスチック製の下敷きを擦り付けると,髪の毛が一時的に下敷きにくっつくようになります。これは,髪の毛と下敷きが別種の電荷を帯びているためですが,帯電列にしたがって考えると,髪の毛が正の電荷を,下敷きが負の電荷を帯びていると考えることができます。
静電誘導と誘導分極の違い
静電誘導と誘導分極の違い
静電誘導と類似した概念として,誘導分極があります。
誘導分極とは,帯電体を絶縁体(電荷を全く通さない物体)に近づけたとき,絶縁体内の電荷分布に偏りが生じる現象のことです。
図で表すと下図のようになります。
上図は導体が正の電荷を帯びているときの図となります。導体が負の電荷を帯びている場合は,絶縁体内の正負が入れ替わります。
誘導分極の原理
ここでは絶縁体が電荷を帯びていないときを考えます。
絶縁体は,他の物体と同様に原子や分子で構成されています。絶縁体内の原子・分子一つ一つには電荷分布が存在しますが,絶縁体全体ではその電荷分布が釣り合うように位置しています。しかし,絶縁体に導体を近づけると,静電エネルギーがより低くなるように原子・分子が配置する結果,帯電体が帯びている電荷と同種の電荷は帯電体から遠ざかり,異種の電荷は帯電体に近づくような電荷分布の偏りが絶縁体内に生じることになります。
高校物理の中で,静電誘導の題材の中でよく取り上げられるのが箔検電器です。こちらについては別の記事で解説します。