ばねの単振動の解説

更新日時 2022/02/09

この記事では,単振動の代表的な例である,ばねの振動を扱います。重力がある場合もない場合も運動方程式をしっかりとたてて,運動を議論していきましょう。

目次
  • 単振動(調和振動)の定義

  • 単振動の特徴(振れ幅,角振動数,周期)

  • 1次元横向きばね振り子

  • 1次元鉛直ばね振り子

単振動(調和振動)の定義

まず初めに,単振動の定義を確認しましょう。 単振動は, 単振動のまとめ で詳しく解説されているので,ここでは復習にとどめます。

単振動の定義

運動方程式が mx¨=mω2(xx0) m\ddot x=-m\omega^2(x-x_0) のような形で表される運動を,単振動という。ここで ω\omega角振動数(角周波数)x0x_0振動中心と呼ばれる定数である。


上の運動方程式は2階線形微分方程式と呼ばれる形の微分方程式です。(xx の微分の階数が高々2次で,xとその微分項の次数が高々1次のため)そして,2階線形微分方程式は,大学数学レベルで詳細な解法が知られいます。解法について詳しく知りたい人は,以下の記事をご覧ください。
微分方程式の解法(同次形・線形微分方程式)

特に,上のような「単振動形型」の解は,以下の形で与えられます。

単振動型方程式の解

xx0=asin(ωt+α)=Acos(ωt)+Bsin(ωt) \begin{aligned} x-x_0 &=a\sin(\omega t+\alpha)\\ &=A\cos(\omega t)+B\sin(\omega t) \end{aligned} は 上の微分方程式の一般解である。ただし a,α,A,Ba,\alpha,A,B は初期条件から定まる定数である。

大学入試などの問題を解くときは,解の形を公式として用いて,単振動の運動を考察していくことになります。

単振動の特徴(振れ幅,角振動数,周期)

単振動の特徴 単振動型微分方程式の解 xx0=asin(ωt+α) x-x_0=a\sin(\omega t+\alpha) はどのような運動を表すでしょうか。
1sin(ωt+α)1-1\leq\sin(\omega t+\alpha)\leq 1 なので,物体は,x0axx0+ax_0-a\leq x\leq x_0+a を動きます。より詳しくいうと,x0x_0 を中心として,振幅 aa で,正弦波に従って振動することになります。角振動数が分かれば,周期は T=2πωT=\dfrac{2\pi}{\omega} で求められます。

一般解は上の式で与えられているので,原理的には初期条件を用いて任意定数を求めれば,任意の時刻 tt での振動子の位置や速度がわかることになります。

1次元横向きばね振り子

以上で単振動の一般論を簡単に復習しました。筆者の体感では,大学入試で出題される単振動の問題の80%は,ばねの振動です。フックの法則より,バネが物体に及ぼす力は,ばねののびに比例した形,すなわち,自然長からのばねののびを xx とすると,F=kxF=kx で与えられます。(kk はばね定数)よって,運動方程式は mx¨=kx m\ddot x=-kx の形になります。(ばねは物体をのびが0になる方向に戻そうとするので,左辺には負号がつきます。)

単振動型微分方程式の一般形 mx¨=mω2(xx0) m\ddot x=-m\omega^2(x-x_0) と比較すると,これは角振動数 ω=km\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}} の単振動であることがわかります。

以上の議論を踏まえて,以下の例題を考えてみましょう。

例題

ばね振り子 質量 mm の物体が滑らかな床に置かれている。物体の左端にはばね定数 kk のばねがついており,図の xx 方向のみに運動する。xx 軸の原点は,ばねが自然長 ll となる点に取る。以下の初期条件を t=0t=0 で与えたとき,任意の時刻 tt での物体の位置を求めよ。

(1)t=0t=0x=0,v=v0x=0,v=v_0 のとき
(2)t=0t=0x=a,v=0x=a,v=0 のとき

まず,運動方程式を書きます。原点が,ばねが自然長となる点にとられているので,xx 座標がそのままばねののびになります。したがって運動方程式は, mx¨=kx m\ddot x=-kx となります。

この単振動型微分方程式の解は,ω=km\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}} とすると, x=Acos(ωt)+Bsin(ωt) x=A\cos(\omega t)+B\sin(\omega t) となります。ここで xx は,x=asin(ωt+α)x=a\sin(\omega t+\alpha) と書くこともできますが,初期条件を考えるときは x=Acos(ωt)+Bsin(ωt)x=A\cos(\omega t)+B\sin(\omega t) の方が使いやすいです。

(1)t=0,x=0t=0,x=0 を代入すると,A=0A=0 がわかります。また, x˙=ωAsin(ωt)+ωBcos(ωt) \dot x=-\omega A\sin(\omega t)+\omega B\cos(\omega t) なので,t=0,v=v0t=0,v=v_0 を代入すると,B=v0ωB=\dfrac{v_0}{\omega} がわかります。よって求める一般解は, x=v0mksin(kmt) x=v_0\sqrt{\dfrac{m}{k}}\sin\left(\sqrt{\dfrac{k}{m}}t\right) となります。 (2)についても全く同様に計算すると,一般解 x=acos(kmt) x=a\cos\left(\sqrt{\dfrac{k}{m}}t\right) が求まります。

1次元鉛直ばね振り子

上の問題は,振動中心と自然長の位置が一致する非常に簡単な問題でした。実は,バネ以外の力ががはたらく系では,一般にこのことは成り立ちません。以下の例題を考えてみましょう。

例題

鉛直ばね振り子 上の図のように,天井からばねで物体が吊り下げられている。x軸の原点をばねが自然長になる位置にとり,x=ax=a となるところまで物体を引っ張ったあと,静かに離した。物体の質量を mm,ばね定数を kk,重力加速度を gg とする。

(1)運動方程式をたてよ。
(2)単振動の振幅を求めよ。
(3)原点を初めて通過する時の,物体の速さを求めよ。

まず(1)から。物理系を考察する時,全ては運動方程式を立てるところから始まります。自然長と原点が一致しているので,物体がばねからうける力は,kx-kx となります。これと重力を考えると,運動方程式は, mx¨=kx+mg=k(xmgk) \begin{aligned} m\ddot x &=-kx+mg\\ &=-k\left(x-\dfrac{mg}{k}\right) \end{aligned} と書くことができます。

続いて(2)です。上の微分方程式の一般解を考えることもできますが,もっと簡単に考えてみましょう。単振動型微分方程式の 一般形 mx¨=mω2(xx0) m\ddot x=-m\omega^2(x-x_0) と(1)で書いた運動方程式を比較すると,この単振動の振動中心は x0=mgkx_0=\dfrac{mg}{k}であることがわかります。また,物体の初期位置は x=ax=a であり,これ以上の xx に到達することはありません。よって振幅(=最大変位)は amgka-\dfrac{mg}{k} となります。

最後に(3)です。この問題も一般解を考えて解いてもいいですが,ここではエネルギー保存を考えてみましょう。系のエネルギーは,重力の位置エネルギー,ばねの位置エネルギー,運動エネルギーの3つです。重力の位置エネルギーの基準点を原点に取り,初期状態と原点通過時のエネルギーを等号で結ぶと, 12ka2mga=12mv2 \dfrac{1}{2}ka^2-mga=\dfrac{1}{2}mv^2 となります。よって v=kma22ga v=\sqrt{\dfrac{k}{m}a^2-2ga} が求める vv となります。

微分方程式を厳密に解くのも重要ですが,定性的に運動を捉えられるようになると,見える世界が広くなります。

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