英語の冠詞の使い方|定冠詞the・不定冠詞a/an・無冠詞の使い分けも解説

英語の冠詞には 「不定冠詞 (a / an)」「定冠詞 (the)」 の2種類があり、後に続く名詞を大ざっぱに分類する働きをします。

aan は「ある1つの~」という意味を表し、直後に「新しく登場する名詞」や「まだ特定されていない名詞」が置かれます。

一方、the の後ろには「すでに登場した名詞」や「聞き手が特定することができる名詞」が置かれます。

「冠詞」は日本語にはない品詞のため、イメージをつかむことに苦労されている方も多いと思います。この記事では、冠詞の意味や使い方について、できるだけ分かりやすく説明していきたいと思います。

名詞の種類と冠詞

上で述べたように、不定冠詞は「ある1つの~」という意味を表すので、数えられる名詞の単数形とともに使われます。

一方、定冠詞は、単数形、複数形、数えられない名詞のいずれとも使うことができます。

通常、数えられる名詞の単数形が無冠詞になることはありません。(例外については、後述します。)

不定冠詞 定冠詞 無冠詞
数えられる名詞 単数形 a pen the pen -
数えられる名詞 複数形 - the pens pens
数えられない名詞 - the water water

不定冠詞 a / an の用法

「不特定の1つのもの / 1人の人」を表す

不定冠詞の a / an は、基本的に「話題に初めて登場する数えられる名詞の単数形」とともに使われます。通常、日本語には訳しません

(1) My father bought me a new watch.
父が私に新しい腕時計を買ってくれた。

(2) I need to find a part-time job.
私はアルバイトを見つける必要がある。

(3) John is going out with a Japanese girl.
ジョンは日本人の女の子と付き合っている。

「1つの~」を表す

「1つの」という「数」に焦点がある場合は、“one” とほぼ同じ意味になります。

(4) I’ll be back in a day [= one day].
私は1日で戻ってきます。

「〜につき」を表す

「時間」や「グラム」などの「単位」を表す語とともに使われた場合は、「1時間につき」「1グラムにつき」という意味を表します。

(5) He is driving at 60 kilometers an hour [= per hour].
彼は時速60キロで運転している。

(6) It costs ten dollars a pound [= per pound].
その値段は1ポンドにつき10ドルだ。

「ある~ / いくらかの~」を表す

不定冠詞は、漠然とした「程度」を表すこともあります。この用法の場合、〈前置詞 + a / an + 程度を表す名詞〉という形をとることが多く、a / an と 名詞の間には suchcertain のような形容詞が使われることもあります。

(7) Let’s take a break for a while.
しばらくの間休憩しよう。

(8) Workers’ rights are guaranteed to a certain degree.
労働者の権利はある程度保証される。

a / an の使い分け

不定冠詞は、子音の発音で始まる語の前では “a”、母音の発音で始まる語の前では “an” となります。

a: a boy / a car / a day
an: an apple / an egg / an idea

“a” が母音字から始まる語を伴う場合

母音字から始まる語でも、発音が母音でない場合は “a” と結びつきます

a university / a European culture

“an” が子音字から始まる語を伴う場合

子音字から始まる語でも、発音が母音である場合は “an” と結びつきます

an hour / an SOS

不定冠詞の用法:応用編

「同じ~」を表す

不定冠詞は、ことわざや成句などで「同じ~」という意味で使われることがあります。(通常の文では、the same を使います。)

(9) Birds of a feather flock together.
同じ羽の鳥は1か所に集まる。(「類は友を呼ぶ」)

(10) We are of an age.
= We are (of) the same age.
私たちは同じ年齢だ。

名詞の複数形を伴う場合

a / an + 形容詞 + 数詞 + 複数名詞〉という形で、不定冠詞が名詞の複数形を伴うことがあります。この場合、「数詞 + 複数名詞」は1つのまとまりとみなされます。

(11) He’s read a mere two books this month.
彼は今月、本をたった2冊しか読んでいない。

(12) The lawyer charged me an extra five hundred dollars.
弁護士から500ドルの追加料金を請求された。

この用法で「数詞 + 複数名詞」とともに使われる形容詞には、bare, mere, scant, trifling, additional, extra, estimated などがあります。

数えられない名詞を伴う場合

不定冠詞が、物質名詞抽象名詞固有名詞などの数えられない名詞を伴う場合があります。

不定冠詞 + 物質名詞

物質名詞が具体的な「1つのもの」を表す場合は、不定冠詞を伴います。

(13) That’s an excellent wine.
それは上等なワインだ。

(14) Give me a coffee, please.
コーヒーを1杯ください。

不定冠詞 + 抽象名詞

抽象名詞が具体的な「1つのもの」や「1つの事」を表す場合は、不定冠詞を伴います。

(15) Honesty is a virtue.
正直は1つの美徳である。

(16) He was surprised by a sudden knocking at the door.
彼は突然ドアをノックされて驚いた。

不定冠詞 + 固有名詞

固有名詞の前に不定冠詞をつけることで、「~という名前の人」「~のような人」「~の製品 [作品]」といった意味を表すことができます。

(17) You have call from a Mr. Hill.
ヒルさんとおっしゃる方からお電話です。

(18) I want you to be an Edison.
私は君にエジソンのような人になってもらいたい。

(19) He bought a Toyota [Picasso].
彼はトヨタの車 [ピカソの作品] を買った。

不定冠詞を含む成句

不定冠詞を含む主な成句を以下の表にまとめました。

成句 意味
in a hurry 急いで
in a word 一言でいうと
for a while しばらくの間
as a result 結果として
all of a sudden 突然
in a sense ある意味で
once in a while ときどき
at a loss 途方に暮れて
as a rule 概して
come to an end 終わる

定冠詞 the の用法

定冠詞の the は、後に続く名詞が「話し手にも聞き手にも特定できるもの」であることを示します。

具体的には、以下のようなケースで使われます。

1.一度使われた名詞に再び言及する場合

(20) She has a cat and a dog. The cat is black and the dog is white.
彼女は猫と犬を飼っている。猫は黒で犬は白だ。

2.名詞が指すものが文脈や状況から特定できる場合

(21) Mary bought a house. The garden is large and the rooms are comfortable.
メアリーは家を買った。庭は広く、部屋は快適だ。

(22) Close the door, please.
ドアを閉めてください。

3.句や節によって名詞が限定されている場合

(23) the day before yesterday(おととい)

(24) the topic of conversation(会話の話題)

(25) the boy I saw yesterday(私が昨日会った少年)

4.形容詞の最上級、序数詞、only、same などで名詞が限定されている場合

(26) the tallest boy in my class(私のクラスで1番背が高い少年)

(27) the fifth letter of the alphabet(アルファベットの5番目の文字)

5.名詞が世の中に1つしかない(と考えられる)ものを指す場合

(28)
the sun / the earth / the moon / the world / the sky / the sea

ただし、具体例を表す場合は不定冠詞を使います。

a full moon(満月)/ a cloudy sky(曇り空)

定冠詞の用法:応用編

〈the + 形容詞・分詞〉:「~な人たち」

the + 形容詞・分詞〉は、その形容詞・分詞の表す性質をもつ人々全体を指します。この場合の形容詞や分詞は、複数名詞のように扱われます。

(29) The rich (= Rich people) are not always happy.
お金持ちが必ずしも幸福とは限らない。

(30) The unemployed (= Unemployed people) are losing hope.
失業者は希望を失いつつある。

なお、the accused(被告人)、the deceased(故人)などの場合は単数扱いになります。

〈the + 形容詞〉:「~なこと・もの」

the + 形容詞〉が抽象名詞の意味を表すこともあります。この場合の形容詞は単数扱いになります。

(31) He is trying to do the impossible.
彼は不可能なことをしようとしている。

(32) She has an eye for the beautiful.
彼女には審美眼がある。

慣用的な用法

以下では、定冠詞の慣用的な用法を紹介します。

演奏する楽器名につける

(33) play the piano [guitar, violin]
ピアノ [ギター、バイオリン]を弾く

単位名につける

(34) Butter is sold by the pound.
バターはポンド単位で売られている。

(35) My car gets 15 kilometers to the liter.
私の車はガソリン1リットルで15キロ走る。

身体の一部を指す

動詞 + 人 + 前置詞 + the + 身体の一部〉という構文で、身体の一部を指す名詞とともに使われます。

(36) He hit [struck] me on the head.
彼は私の頭をたたいた。

(37) I took [caught, grabbed] him by the arm.
私は彼の腕をつかんだ。

次のような表現もよく使われます。

表現 意味
look 〜 in the face 〜の顔を見る
kiss 〜 on the cheek 〜の頬にキスをする
touch 〜 on the shoulder 〜の肩に触れる

比喩的・抽象的な内容を表す

the + 普通名詞〉の形で、その名詞がもつ性質を比喩的・抽象的に表すことがあります。

(38) The pen is mightier than the sword.
ペンは剣よりも強し。

the + 固有名詞

通常、固有名詞に冠詞がつくことはありませんが、以下のような場合には定冠詞が使われます。

国民全体を表す場合

Americans や Italians のような複数形や、Japanese や French のような国籍を表す形容詞に the をつけて「国民全体」を表します。

(39)
the Americans(アメリカ人(全体))
the Italians(イタリア人(全体))
the Japanese(日本人(全体))
the French(フランス人(全体))

「一家」や「夫妻」を表す場合

姓の複数形に the をつけて「一家」や「夫妻」を表します。

(40) the Browns
ブラウンさん一家 / ブラウンさん夫妻

山脈・群島・連邦国家などを表す場合

複数形の固有名詞に the をつけて、山脈・群島・連邦国家などを表します。

(41)
the Rocky Mountains = the Rockies(ロッキー山脈)
the Philippine Islands = the Philippines(フィリピン諸島)
the United States of America(アメリカ合衆国)

ただし、個々の山や個々の島には the をつけません。

Mount Fuji(富士山)
Long Island(ロングアイランド)

海・海峡・川・運河・半島・砂漠など

(42)
the Sea of Japan = the Japan Sea(日本海)
the English Channel(イギリス海峡)
the Amazon (River)(アマゾン川)
the Suez Canal(スエズ運河)
the Malay Peninsula(マレー半島)
the Sahara (Desert)(サハラ砂漠)

なお、湖や湾には the をつけません。

Lake Michigan(ミシガン湖)
Tokyo Bay(東京湾)

ただし、the Bay of Tokyo という語順では the が使われます。

船・列車・鉄道・飛行機・公共の建物・新聞名など

(43)
the Titanic(タイタニック号)
the Nozomi(のぞみ号)
the Tozai Line(東西線)
the Boeing 747(ボーイング747機)
the Lincoln Memorial(リンカーン記念堂)
the New York Times(ニューヨークタイムズ紙)

なお、駅、空港、公園、通りなどの名前には the をつけません。

Tokyo Station(東京駅)
Narita International Airport(成田国際空港)
Central Park(セントラルパーク)
Downing Street(ダウニング街)

機関・組織など

(44)
the University of Tokyo(東京大学)
the Bank of Japan(日本銀行)
the United Nations(国際連合)

ただし、Kyoto University(京都大学)のように、大学名に of を含まない場合は無冠詞になります。

定冠詞を含む成句

定冠詞を含む主な成句を以下の表にまとめました。

成句 意味
by the way ところで
on the way 途中で
in the way 邪魔になって
at [in] the beginning はじめに
in the long run 長い目で見れば
in the first place 第一に
in the end 結局
to the point 的を射た
on the whole 全体的に見て
on the contrary それどころか
on the other hand 他方では
Tips 「the」の発音は3種類ある

the は、次に続く音が子音の場合に /ðə/ と発音され、母音の場合は /ði/ と発音されます。

/ðə/the car / the university

/ði/the apple / the hour

また、後続する語を強調する場合は、次に続く音に関係なく、強形の /ði:/ という発音が使われます。

無冠詞

名詞の前に冠詞がない状態を「無冠詞」と呼びます。

以下では、名詞が無冠詞になるケースを見ていきます。

数えられる名詞の複数形

数えられる名詞の複数形が、不特定の「もの」や「人」を表す場合は無冠詞になります。

(45) I don’t like tomatos.
私はトマトが好きではない。

(46) Do you have children?
お子さんはいますか?

数えられない名詞

通常、物質名詞抽象名詞固有名詞 などの数えられない名詞には冠詞をつけません。(不定冠詞や定冠詞をつけるケースについては、それぞれの項目をご覧ください。)

(47) This statue is made of stone.(物質名詞)
この像は石でできている。

(48) Necessity is the mother of invention.(抽象名詞)
必要は発明の母。

(49) Tom went to Kyoto last week.(固有名詞)
トムは先週京都に行った。

普通名詞の「機能」や「性質」に焦点を当てる場合

普通名詞の「機能」「役割」「性質」などに焦点を当てる場合は、無冠詞になります。

(50) School begins in April.
学校は4月に始まる。

(51) They go to church every Sunday.
彼らは毎週日曜日に教会へ行く。

(52) He went to bed late last night.
彼は昨夜遅く寝た。

(50)(51)では、学校や教会の「建物」としての側面ではなく、教育や礼拝という「機能」に焦点が当てられています。

(52)でも、「家具」としてのベッドではなく、その「役割」に焦点が当てられています。

"go to school" と冠詞

① I go to school 6 days a week.
私は週6日学校へ行く。

② I go to the school every day to pick up my son.
私は毎日息子を迎えに学校へ行く。

③ I want my child to go to a school in Kyoto.
私は子供を京都の学校に通わせたい。

①の “go to school” は「通学する」という意味を表します。

②の “go to the school” は「通学以外の目的で特定の学校へ行く」という意味を表します。

③の “go to a school” は「いくつかあるうちの1つの学校へ行く」という意味を表します。

〈by + 名詞〉が「手段」を表す場合

〈by + 名詞〉が「手段」を表す場合、by に続く名詞は無冠詞になります。

(53) by mail [email, letter, telephone, fax]
郵便 [Eメール、手紙、電話、ファックス] で

(54) by land [air, sea]
陸路 [空路、海路] で

(55) by train [car, plane, bus]
列車 [車、飛行機、バス] で

なお、on foot(徒歩で)という表現も無冠詞になります。

地位 / 役職

地位や役職を表す語が補語になる場合、名前の前に置かれる場合、名前と同格になる場合などは無冠詞になります。

(56) He was elected mayor of the city.
彼はこの市の市長に選ばれた。

(57) Professor Smith is an expert in American history.
スミス教授は米国史の専門家だ。

(58) Dr. Brown, associate professor of linguistics
言語学の准教授のブラウン博士

呼びかけ / 家族関係 / 図表

呼びかけ

呼びかけに使われる名詞は無冠詞になります。

(59) Professor, may I ask a question?
先生、質問してもよろしいでしょうか?

家族関係

身内の間で父親や母親について言及する場合、固有名詞的に Father [Dad]Mother [Mom] を使うのが一般的です。

(60) Has Mother [Mom] gone out?
お母さんは出かけたの?

図表

論文や記事などの図表を表す名詞には冠詞がつきません。

(61) Figure 2 [Table 2] shows the pension system in Japan.
図2 [表2] は日本の年金制度を示している。

慣用句

以下のような慣用句では、冠詞が使われません。

慣用句 意味
from door to door 1軒ごとに
day and night 昼も夜も
at noon 正午に
by accident 偶然に
in fact 実際は

冠詞の位置

この項では、冠詞の位置が通常と異なる構文を紹介します。

such / quite / rather / what

such, quite, rather, what などの語は、名詞を修飾する際に、不定冠詞よりも前に置かれます。

(62) He is such [quite, rather] a rich man.
彼はとても裕福な人だ。

(63) What a rich man he is!
彼はなんて裕福な人なのだろう!

なお、quite と rather については

He is a quite [rather] rich man.

という語順も可能です。

so / too / as / how

so, too, as, how などの語は、名詞を修飾する際に、形容詞を伴って不定冠詞の前に置かれます。

(64) I’ve never seen so large a house.
私はこれほど大きな家を見たことがない。

(65) He is as great a pianist as ever lived.
彼は史上最高のピアニストだ。

(66) This is too small a ring for me.
この指輪は私には小さすぎる。

(67) How beautiful a sight this is.
なんて美しい景色なんだ!

all / both / twice / double / half

all, both, twice, double, half などの語は、名詞を修飾する際に、定冠詞よりも前に置かれます。

(68) He lent me all the books he had.
彼は持っている全ての本を私に貸してくれた。

(69) Both the boys are in elementary school.
その少年は二人とも小学生だ。

(70) This plane can fly at twice the speed of sound.
この飛行機は音速の2倍の速さで飛べる。

(71) I paid double [half] the price.
私は倍額 [半額] を支払った。

練習問題

最後に練習問題を解いてみましょう。

練習問題

問1 次の文の空所に適切な冠詞を入れなさい。ただし、必要ない場合は「x」を入れなさい。

(1) My father works four days( )week.
父は週4日働いている。

(2) I was late for( )school today.
私は今日学校に遅刻した。

(3) It takes( )hour to( )Shinjuku Station on( )foot.
新宿駅までは歩いて1時間かかる。

(4) He bought a ring.( )ring is( )gift for his wife.
彼は指輪を買った。その指輪は彼の妻へのプレゼントだ。

問2 次の文の誤りを正しなさい。ただし、誤りがない場合は「なし」と答えなさい。

(1) Aarons are on the long vacation.
アーロン一家は長期休暇中だ。

(2) We can’t completely control the nature.
私たちは自然を完全に制御することはできない。

(3) Did you enjoy a book I lent you last week?
私が先週貸した本は面白かった?

(4) We are paid by a week.
私たちは週単位で給料をもらっている。

解答

問1

(1) a

「一週間につき」という意味を表す a が入ります。

(2) x

school の「機能」に焦点が当てられているため、無冠詞になります。

(3) an, x, x

hour は発音が母音から始まるので an が使われます。「手段」を表す on foot や駅名の Shinjuku Station は無冠詞になります。

(4) The, a

ring は既出語なので the を、gift は新出語なので a を使います。

問2

(1)
Aarons → The Aarons

「一家」を表す場合は The 〜s となります。

the long vacation → a long vacation

特定の休暇を表している訳ではないので、不定冠詞の a を使います。

(2) the nature → nature

nature は抽象名詞なので the をつけません。

(3) a book → the book

「本」が一つに限定されているので the を使います。

(4) a week → the week

「~単位で」を意味する the を使います。

冠詞には多くの用法があるため説明が長くなってしまいましたが、基本的に a /an は「ある1つの~」という意味を表し、the は聞き手が特定できる名詞に対して使われます。このポイントを押さえたら、後はなるべく多くの英文に触れて語感をしっかり身につけるようにしましょう。