どこまで理解されているのかわからないのでかなりくどく書くことをお許しください。
1 関数とは
そもそも関数とはなんでしょうか。
一言で言えば、入力された数値に対して、なんらかの計算をした結果を返す箱のようなものです。
この「入力される数値」のことを 【変数】 といいます。
例えば「入力された値を2倍して1を足す」という関数に変数「5」を入力すれば、出力「11」が得られます。
このことを数式を用いて表すと、
f(x)=2x+1のとき、f(5)=11
となります。このとき
f(x)はxについての関数である
といいます。
関数は f() 、変数は x という文字で表すことが多いですが、そうでなければいけない決まりはありません。
ですからこのことを
f(t)=2t+1のとき、f(5)=11である
といっても同じことです。この場合、f(t) は tについての 関数ですね。
「関数」と言われたら、それが 何についての関数なのか に注意してください。
2 不定積分
不定積分について確認します。
f(x) の不定積分 ∫f(x)dx とは、
xについて微分してf(x)になるような関数
のことです。不定積分した関数も xについての関数 になります。
例えば、f(x)=2x の不定積分。
x について微分して 2x となる関数を探します。試しに関数 x2 を微分すると
(x2)′=2x
となりますから、x2 は f(x) の不定積分の 1つ になります。これに定数を加えた x2+1 や x2−10 なども微分して 2x になりますから、そのようなものを全部ひっくるめて
x2+C(Cは積分定数)
と表せますね。
したがって、
∫f(x)dx=x2+C(Cは積分定数)
と書けます。
ここで、「dx」は xについて 積分することを表す 記号 です。
変数は x であるとは限りません。t についての関数 f(t)=2t の不定積分は、さっきと同じようにして
∫f(t)dt=t2+C(Cは積分定数)
と表せます。「dt」が tについて 積分することを表しているのは言うまでもありません。
最後にもう一度言いますが、不定積分とは微分してその関数になるような「関数」のことです。
3 定積分
不定積分の1つがわかってしまえば、定積分を求められます。
f(x) の不定積分の1つを F(x) と表せば、a から b までの定積分は
∫abf(x)dx=F(b)−F(a)
で定義されます。
この場合にも「dx」は「xについて定積分すること」を表しています。
さて、これは 関数 ですか? それとも 定数 ですか?
定数 ですね。a,bは決まった値ですから、F(a),F(b)も決まった値になりますよね。
不定積分が「関数」を求めていたのに対して、不定積分は 「定数」を求めている ことになります。
具体例として f(x)=2x を x について 1 から 2 まで定積分してみましょう。私たちは f(x) の不定積分の一つが x2 であることを既に知っていますから、これを F(x) とおいてやりましょう。
すると定義によって
∫12f(x)dx=F(2)−F(1)=4−1=3
と求められます。「3」というのは確かに 定数 ですね。
さて、毎度ながら変数は x とは限りません。t についての関数 f(t)=2t を考えます。この不定積分の一つを F(t)=t2 とでもおいてやりましょう。そうすると、f(t) の t についての 1 から 2 までの定積分は
∫12f(t)dt=F(2)−F(1)=4−1=3
となりますね。
おや、f(x)のときと全く同じ結果になりました。偶然でしょうか?
…当たり前ですよね。見かけの文字が変わっただけでやってることは全部同じ、積分結果は「3」という定数になります。
つまり定積分では積分する文字はどうでもよくて、
∫12f(x)dx と書こうが ∫12f(t)dt と書こうが、はたまた ∫12f(k)dk と書こうが全部同じものを表しているのです。
4 定積分で表された関数
a から b までの不定積分
∫abf(x)dx=F(b)−F(a)
は、
∫abf(t)dt=F(b)−F(a)
と書き換えてしまっても同じです。
定積分は変数に無関係な定数でした。
定積分の値は 積分範囲に応じて ただ一つに決まります。
「積分範囲に応じてただ一つの値を返してくれる」のであれば、「積分範囲を動かしてみる」という発想が生まれます。積分範囲の動かし方はいろいろ考えられますが、例えば、bを動かすのであれば
∫abf(t)dt=F(b)−F(a)
は b についての関数ということになります。b を変数らしく x と書き換えてやると
∫axf(t)dt=F(x)−F(a)
となっていかにも x についての関数らしくなりましたね。
ちょっとわかりにくいと思うので具体例を見てみましょう。
f(t)=2t とおくと、1 から x までの定積分は
∫1xf(t)dt=x2−12=x2−1
となりますからこれは確かに x についての関数になっていますね。
もしこれを
∫1xf(x)dx
と書いてしまうと、「定積分のなかの文字としてのx」と「積分範囲上端としての変数x」が混在してしまって非常に意味の分かりにくい式になってしまいますね(実はこの書き方も間違いではないです)。
さいごに
まとめます。
・「dt」とは「tについて積分する」ことを表す記号です。
・不定積分は「関数」、定積分は「定数」を求める計算です。
・定積分は定数を求めているので、変数の文字はどうでもいいです。どうでもいいので ∫abf(x)dx を ∫abf(t)dt と書けます。
・質問の式は、定積分の範囲(上端)を変数とする xについての関数 です。ふつうの足し算や掛け算の代わりに、入力 x に対して「積分」という計算を実行して結果を返します。
・定積分のなかの文字に x でなく t が使われているのは、積分範囲上端としての変数 x と衝突して分かりにくくなるのを避けるためです。
「2x2+3」のような単純な足し算・掛け算だけでなく「積分」という計算さえも関数にしてしまうトンデモな発想は、数学の自由度の高さのなせる業です。ややこしいところですが、その自由さが少しでも伝われば幸いです。
説明が不親切だと思った点はコメントください。
質問者からのお礼コメント
びっくりするぐらい超丁寧な解説をありがとうございます。文も非常に読みやすく簡単に理解できてしまいました(笑)。助かりました😄
引き続き、続きの積分頑張ります!!