静電遮蔽
静電遮蔽(静電シールド)の原理について解説します。導体内部では電荷や電場がどのように振る舞うかを考えることが必要になってきます。
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静電遮蔽(静電シールド)の原理
静電遮蔽(静電シールド)の原理
導体内部の電荷・電場
静電遮蔽を考える前に,導体内部での電荷・電場の挙動を簡単に復習しておきます。
電場の中に導体を置いてみましょう。このとき,導体内の自由電子が電場から力を受けて移動を始め,これに伴い発生する正の電荷も同様に電場から力を受けます。これらの電荷は導体内で電場から力を受けなくなるまで,すなわち導体内での電場が0となるまで移動を続けます。
これより定常状態では,導体内部の電荷・電場について以下の事実が成立します。
- 導体内部の電場は0
- 導体内の電荷は導体表面のみに分布する
- 導体は全ての領域で等電位
- 導体表面の電場は導体の表面と垂直な方向にはたらく
詳しい解説については導体内における電場・電位をご覧ください。
静電遮蔽とは
静電遮蔽とは,導体内で囲まれた空間が導体外の電場の影響を受けなくなることです。
静電遮蔽の原理は,導体内部の電場・電荷の振る舞いを考えることで説明できます。
ある電場の中に導体を置くと,上述のように電荷が導体表面に分布します。
この導体の形を変形させて,導体内に空間ができるようにすることを考えます。すると,導体内部の電荷・電場の性質により,導体表面の電荷は下図のように分布し,導体内の電場が0になることがわかります。
したがって,導体内の空間は,導体外の空間の電場の影響を受けないということがわかります。
静電遮蔽の応用
静電遮蔽の応用
静電遮蔽の原理を応用することで,外部の電場を遮蔽したり,外部に電場が漏れないようにしたりすることができます。順に解説していきます。
外部の電場の遮蔽
これまで見てきたように,対象としたい空間を導体で囲むことで,外側にある電場を遮蔽することができます。
外部への電場の遮蔽
例として,正に帯電した物体を導体で囲むことを考えます。 このとき,静電遮蔽(詳しくは静電誘導)によって,導体表面には下図のように電荷が分布します。
この導体が接地されていないとすると,導体の外側の表面に分布する正の電荷が導体外部に電場を発生させてしまいます。
一方,この導体を接地すると,導体の外側の表面に分布する電荷はグラウンドへ流れていきますが,導体の内側の表面に分布する電荷は,帯電体に引きつけられて動きません。よって,電荷分布は下図のようになります。
したがって,導体を接地することで,帯電体によって発生する電場は導体の外側には生じないことがわかります。
外部の電場を遮蔽したい場合には導体を接地する必要はありませんが,外部へ電場が漏れないようにするには導体を接地する必要があることに注意してください。
現実での例: 雷と自動車
「雷が発生しているときには車の中にいると安全」という話を聞いたことはないでしょうか?この理由も静電遮蔽により説明することができます。
自動車は金属,すなわち導体でできています。したがって,自動車の中は導体で囲まれた空間となっており,外部の電場(雷)の影響を受けない,ということになります。
導体の挙動は面白いですね。