「たぬき」の英語表現|アライグマとの違いや「たぬき」を含むことわざなど

「狸(たぬき)」は英語で何と言うのでしょうか?日本人にはおなじみの動物ですが、英語の授業や英会話の教材ではあまり取り上げられないため、ご存知ない方も多いと思います。

この記事では、「たぬき」の英語名、日本人が「たぬき」に抱くイメージ、「たぬき」と「あらいぐま」との違い、「たぬき」を含む表現の英語訳などについて解説していきます。

そもそも「たぬき」は欧米にいない

「たぬき」は元々日本、朝鮮半島、中国などのアジア圏、およびロシア東部などに住んでいた動物で、基本的にヨーロッパやアメリカには生息していません。毛皮を取る目的で輸出された一部が野生化して、ヨーロッパでも目撃されることがありますが、一般にはほとんど知られていません。

「たぬき」の英語名

「たぬき」の最も一般的な英語は “raccoon dog” です。これは、「たぬき」が「あらいぐま (英語で raccoon)」に似ていることと、イヌ科に属することから付けられた名前です。“Japanese raccoon dog” と呼ばれることもあります。

まれに、日本語をそのまま使用して “tanuki” と表現することもあります。

ただし、欧米にはそもそも「たぬき」がいないので、“raccoon dog” や “tanuki” と言っても理解してくれる人は少ないでしょう。そのような場合は、日本人が古くから「たぬき」に対して抱いているイメージを伝えてみるのもいいかもしれません。

例えば wikipedia は、日本の民間伝承における「たぬき」の存在を次のように説明しています。

“Within Japanese folklore, the tanuki have had a significant role since ancient times. The legendary tanuki are reputed to be mischievous and jolly, masters of disguise and shapeshifting but somewhat gullible and absentminded.”

「日本の民間伝承の中で、たぬきは古来より重要な役割を担ってきた。言い伝えによると、たぬきはいたずら好きで陽気、変装や変身が得意だが、だまされやすく、無頓着であるとされている。」

「あらいぐま」との違い

「あらいぐま(raccoon)」は、アメリカ合衆国、カナダ南部、中央アメリカに広く生息する動物で、現地では一般によく知られています。

日本人には「あらいぐまラスカル」の可愛いイメージがあると思いますが、実際のあらいぐまは凶暴なうえに、狂犬病を伝染させるので、害獣として扱われています。

「たぬき」と「あらいぐま」の違い
  • あらいぐまの尻尾には縞々(しましま)がありますが、たぬきにはありません。
  • たぬきの足は犬に似た形をしていますが、あらいぐまの足は指1本1本が長く、物をつかむことができます。
  • たぬきとあらいぐまは、目の周りの白い部分の形が違います。
  • あらいぐまには白くて長いヒゲがありますが、たぬきにはヒゲがありません。
  • たぬきはイヌ科タヌキ属、あらいぐまはアライグマ科アライグマ属に分類されます。

「たぬき」を含む表現

日本語には「たぬき」を含む古くからの表現がいくつかあります。この項では、その英語訳を紹介します。

狸寝入り

「寝たふりをする」という意味の「狸寝入り」は、そのまま “pretend to be asleep” (寝たふりをする) という英語で表現することができます。

“Stop pretending to be asleep. I know you can hear me.”
「寝たふり (狸寝入り) はやめなさい。聞こえてるんでしょ。」

別の英語表現としては “play possum” があります。

"possum"は「フクロネズミ」の俗称です。正式には “opossum” ですが “play opossum” という言い方はしません。

フクロネズミは、危険が迫ると死んだふりをすることから「寝たふりをする」という文脈で使われます。

“She’s just playing possum because she doesn’t want to get out of bed.”
「彼女は起きたくないから寝たふり (狸寝入り) をしているだけだよ。」

なお、この表現には「相手をだますために、活動を中止したふりをする」という意味もあります。

“That politician’s retirement is a sham. He’s just playing possum.”
「あの政治家の引退は嘘だ。彼はそういうふりをしているだけだ。」

捕らぬ狸の皮算用

「捕らぬ狸の皮算用」については、英語にも “count one’s chichens before they are hatched” (孵化する前から雛の数を数える) という決まり文句があります。「狸」が「鶏」に変わっただけで発想は同じです。

通常は

“Don’t count your chickens before they’re hatched.”
(捕らぬ狸の皮算用はやめよう。)

のように、否定の命令文で使います。

狸親父 / 古狸

「狸親父(たぬきおやじ)」は「狡猾(こうかつ)な老人男性」、「古狸(ふるだぬき)」は「多くの経験を積んでずる賢くなった人」を意味する言葉です。

英語では「経験豊富で処世術に長けた人」を “old fox (古狐)” に例えるので、これに「ずるい」を意味する “sly” を加えて “sly old fox” とすると、「狸親父」「古狸」のニュアンスを表すことができます。

“Watch out when you negotiate with him. He’s a sly old fox.”
「彼と交渉する時は用心しろよ。彼は狸親父(古狸)だからな。」

たぬきうどん・そば

「たぬきうどん・そば」は「揚げ玉の入ったうどん・そば」のことです。

「揚げ玉」については決まった英訳がないので、“bits of deep-fried tempura batter” (天ぷらを揚げるときにできる衣のかす) のように説明することになります。

これを使うと、「たぬきうどん」は “udon noodles with bits of deep-fried tempura batter”、「たぬきそば」は “soba noodles with bits of deep-fried tempura batter” となります。

おわりに

今回は「たぬき」をテーマに、「たぬき」の英語名、日本人が「たぬき」に抱くイメージ、「たぬき」と「あらいぐま」との違い、「たぬき」を含む表現の英語訳などについて見てきました。

英語での話題作りに役立てていただければ幸いです。