はく検電器 | 原理と解説

静電誘導が用いられている例として,はく検電器の仕組みを解説します。

はく検電器(箔検電器)とは

はく検電器(箔検電器)とは下図のような装置です。はく検電器が帯電しているときは,中にある金属製のはくが開きます。

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はく検電器が中性のときは,金属製のはくは閉じます。

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はく検電器の用途は,

  1. 物体が帯電しているかどうかを確かめる

  2. 帯電している場合,その電荷が正か負かを確認する

ことです。

はく検電器の原理は,静電誘導です。静電誘導を簡単に述べると次のように説明することができます。すなわち静電誘導とは,帯電体を金属に近づけると,金属表面の帯電体と遠い側に,帯電体と異種の電荷が分布し,金属表面の帯電体と近い側に,帯電体と同種の電荷が分布する,という現象です。

詳しくは 静電誘導 をご覧ください。

はく検電器の用途について,詳しく見ていきましょう。

用途1:物体が帯電しているか確認する

ある物体が帯電しているかどうかを,はく検電器に近づけて確認することができます。

ここでは,はく検電器は電荷を帯びていないとして考えます。このとき,はくは閉じています。

物体が帯電しているとき

まず,物体が正に帯電しているときを考えます。この物体をはく検電器に近づけると,静電誘導により,金属中の自由電子が円盤側に集まり,はくには正の電荷が発生することになります。クーロン力 (詳しくは 静電気力とクーロンの法則 をご覧ください) を思い出すと,正の電荷どうしには斥力(しりぞけあう力)がはたらくため,正の電荷はお互いに離れて分布することになります。この電荷の動きにしたがいはくが開きます。

帯電体が帯びている電荷が大きいほど,円盤側に集まる自由電子の量も大きくなり,結果としてはくの開きも大きくなります。

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物体を遠ざけていくと,自由電子が徐々に元の位置に戻っていき,最終的にははくは閉じた状態に戻ります。

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物体が負に帯電しているときも同様に考えることができます。この物体をはく検電器に近づけると,静電誘導により,金属中の自由電子がはく側に集まり,円盤側には正の電荷分が発生します。クーロン力の作用により,自由電子もまた遠ざかりあうため,はくも開きます。物体を遠ざけていくと,はくも徐々に閉じていきます。

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物体が帯電していないとき

物体が帯電していないときには,はく検電器に近づけても,はくは閉じたままとなります。

結果のまとめ

ここまでの結果をまとめましょう。

物体の帯電の有無を確認

はくが閉じているはく検電器に物体を近づけたとき

  1. 物体が帯電している→はく検電器のはくが開く

  2. 物体が帯電していない→はく検電器のはくは閉じたまま

用途2:帯電体の電荷の正負を確認する

また,はく検電器に近づけることによって,帯電体の正負を確認することができます。

ここでは,初めはく検電器が正に帯電しているときを考えます。はく検電器が負に帯電しているときは,はく検電器のはくの挙動を逆にすればよいです。いずれにせよ,このときはく検電器内のはくは開いていることに注意してください。

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まず,帯電体が正に帯電しているときを考えます。このとき,帯電体を はく検電器に近づけると,金属中の自由電子が円盤側に移動し,金属中の正の電荷ははく側に分布します。ここで,はく側に集まっている正の電荷の総量は,自由電子と同量の正の電荷が発生した分,初めはく検電器が持っていた電荷の総量より大きくなっています。したがって,はくの開きは帯電体を近づける前に比べて大きくなります。

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次に,帯電体が負に帯電しているときを考えます。このとき,帯電体をはく検電器に近づけると,静電誘導により,金属中の自由電子がはく側に移動し,金属中の正の電荷は円盤側に移動します。このとき,はく側に移動した分の自由電子によりはく内の電荷は相殺され,はくの開きは小さくなることになります。

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結果のまとめ

ここまでの結果をまとめましょう。

帯電体の電荷の正負

帯電している(はくが開いている)はく検電器に帯電体を近づけると,

  1. はくがより大きく開く→帯電体ははく検電器と同種の電荷を帯びている

  2. はくの開きが小さくなる→帯電体ははく検電器と異種の電荷を帯びている

はく検電器を帯電させる/中性にする

ここまで,はく検電器の用途を説明してきましたが,はく検電器が帯電していないか,正の電荷を帯びているか,負の電荷を帯びているかは予め知っているものとして解説してきました。ここでは,はく検電器の電荷の状態を操作する方法について解説します。

中性のはく検電器を帯電させる

中性のはく検電器を帯電させる方法について説明します。ここでは帯電体は正の電荷を帯びているものとします。帯電体が負の電荷を帯びている場合も,はく検電器内の電荷の正負を逆にすれば同様の議論ができます。

帯電体と同種の電荷を帯電させる

帯電体と同種の電荷を帯電させるには,帯電体をはく検電器にこすりつければよいです。帯電体をこすりつけると,金属どうしが触れ合うことで電荷の移動が起きます。これにより,はく検電器は帯電体と同種の電荷を帯びることになります。

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帯電体と異種の電荷を帯電させる

帯電体と異種の電荷を帯電させるには,以下のようにします。

  1. 帯電体をはく検電器に近づける

これにより,上述したように,金属の円盤側には負の電荷分布が,はく側には正の電荷分布が発生します。はくが完全に開き切るまで待ちます。

  1. 帯電体をはく検電器に近づけたまま,円盤部に指を触れさせる

金属に指を触れさせることは,金属を接地させる(アースする)ことと同じです。これにより,電荷が分布できる範囲が大きくなります。帯電体を近づけたままなので,円盤部に存在する負の電荷分布はそのままですが,はく側の正の電荷分布は,さらに広がった方が安定となるため,指を通じてはくから流れていきます。結果として,はく検電器に残るのは負の電荷分布となります。はくが完全に閉じ切ったら指を離します。

  1. 帯電体をはく検電器から遠ざける

帯電体をはく検電器から遠ざけると,はく検電器内の負の電荷が金属全体に分布するようになります。

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これにより,はく検電器を負に帯電させることができました。

帯電したはく検電器を中性にする

帯電したはく検電器を中性にするには,はく検電器を他の帯電体等から遠ざけた状態で,金属部に指を触れさせればよいです。これにより,上述した通り,金属が接地されたことと同様の状態となり,最終的にはく検電器は電荷を全て失います。

はく検電器の問題を解けるようになるためには,はく検電器の原理と仕組みを正しく理解することが大切です。図を書いて,電荷の動きを丁寧に追いましょう。