交流の概論

交流についての記事です。 そもそも交流とは何か,なぜ交流を考える必要があるのかを解説していきます。

交流の式

I(t)=I0cosωt \begin{aligned} I(t) = I_0 \cos \omega t \end{aligned}

交流とは

交流とは周期的に電流の流れる向きが反転するような電流のことです。 特に次のような正弦波で書かれるものをよく考えます。

交流の式

I(t)=I0cosωt \begin{aligned} I(t) = I_0 \cos \omega t \end{aligned}

ここで I0I_0 は電流の最大値で,ω\omega は周波数と呼ばれます。

交流に対して直流は時間的に変化しない電流のことで,比較を明確にするため式で書くならば次のようになります。

直流の式

I(t)=I0 \begin{aligned} I(t) = I_0 \end{aligned}

以降,なぜこのような交流を考える必要があるのかを解説するため,実際に交流が使われている場面の例を紹介していきます。

交流が必要とされる場面

送電

W0W_0の電力を生み出せる発電機から,その電力を遠く離れた家庭まで送電することを考えましょう。 このときに出会う重大な問題は,長い送電線には無視できない電気抵抗があるため貴重な電力がジュール熱として消費されてしまうことです。 この問題を解決しなければ,スマホを充電する度に莫大な費用がかかってしまう,なんてことが起こってしまいます!

では,電力が無駄に消費されないためにはどうすればいいか考えていきましょう。 簡単のため,発電機を直流電源,送電線を抵抗 rr,家庭の電化製品を抵抗RRと見立てて,これらの直列回路を考えてみます。

発電機から流れる電流を I0I_0,発電機にかかる電圧を V0V_0 とすると W0=I0V0 \begin{aligned} W_0 = I_0 V_0 \end{aligned} と書けます。 送電線には I0I_0 だけの電流が流れるので,送電線で無駄に消費されてしまう電力は w=I02r \begin{aligned} w = I_0^2 r \end{aligned} となります。一方で電化製品で消費される電力は W=I02R \begin{aligned} W = I_0^2 R \end{aligned} となります。 これらの式を見ると,与えられた発電機の電力 W0W_0 と送電線の抵抗 rr に対して電力が無駄に消費されないようにする( w/W1w/W \ll 1 )ためには,I0I_0を小さくしつつ RR を大きくする必要があることが分かります。 しかしこれでは大きな電圧 V0V_0 のほとんどが電化製品にかかってしまうので極めて危険ですし使い勝手がよくありません。

以上で考えたことから,発電機からの電気はできるだけ高圧で送電し,家庭の近くで電圧を下げられるようにするのが最適でしょう。 実は送電に交流を用いると,この電圧を下げる操作がとても簡単になります。 つまり交流を用いると効率的な送電が可能になるのです! 気になる方はコイル・相互インダクタンス・変圧器について学んでみて下さい。本サイトでも,別の記事にて解説をする予定です。

電信

とある音声情報を遠方まで伝達することを考えましょう。 伝達には有線ケーブルを用いても無線を用いてもいいですが,いずれにせよ音声とは空気の振動ですからその振動を電流の振動に変換して用いるのが便利でしょう。

このとき,注目したい特定の周波数の信号だけを取り出したり,逆に他の周波数の信号をカットしたりする仕組みが必要になります。 そうでなければ,あらゆる信号が入り乱れ,更に受信した情報がノイズだらけになってしまうでしょう。

このような便利な仕組みは実際に作れて,共振回路やフィルター回路などがあります。 これらは交流の特性を上手く利用し,抵抗・コイル・コンデンサーのような回路素子を上手く組み合わせることで作られます。 つまり交流を用いると便利に通信することが可能になるのです! 気になる方はこれらの回路素子と共振/フィルター回路について学んでみて下さい。この部分についても,本サイトで,別の記事にて解説をする予定です。

交流だからこそ,直流だからこそ出来ることはそれぞれ他にも沢山あります。 彼らの個性や輝く場面をちゃんと理解してあげましょう。