コンデンサーの理論

コンデンサーの役割について説明したのち,高校物理で用いるコンデンサーの基本公式を導出してみます。

コンデンサーとは何か

コンデンサーとは,「正負の電荷を蓄えたり,放出したりする,2つの電極ペア」のことです。代表的なものとしては,2枚の金属平板を向かい合わせた平行平板コンデンサーなどがあります。

コンデンサーの性質を表す物理量として,静電容量というものがあります。これは,蓄えられる電荷とコンデンサーを成す電極間の電位差の比で定義されます。

静電容量の定義

コンデンサーの静電容量を CC,コンデンサーが蓄えている電荷を QQ,電極間の電位差を VV とすると,

C=QV C = \dfrac{Q}{V}

が成り立つ。

コンデンサーが組み込まれている回路では,コンデンサーのところで電流が途切れていると感じるかもしれませんが,コンデンサーが Δt\Delta t の間に Δq\Delta q だけ電荷を蓄えたとき,片方の電極には Δq\Delta q が,もう片方の電極には Δq- \Delta q の電荷が蓄えられるので,I=ΔqΔtI = \dfrac{\Delta q}{\Delta t} の電流が流れたとみなして考えることができます。回路の問題では,コンデンサーの箇所の電流をこのように考えて解くことになります。

図3

コンデンサーの基本公式

コンデンサーの基本公式として,以下の3つを導出します。

コンデンサーの基本公式

  1. 静電容量の式

Q=CV Q = CV

  1. 極板間引力

F=12QE=12Q2ε0S F = \dfrac{1}{2}QE = \dfrac{1}{2} \dfrac{Q^2}{\varepsilon_0 S}

  1. 静電エネルギー

U=Q22C=12CV2=12QV U = \dfrac{Q^2}{2C} = \dfrac{1}{2} CV^2 = \dfrac{1}{2} QV

静電容量の式

この公式は静電容量の定義式と全く同値ですが,平行板コンデンサーの場合は,比較的簡単にマクスウェル方程式から証明することができます。

公式1:コンデンサーが蓄える電荷

コンデンサーが蓄える電荷を QQ,コンデンサーの電気容量を CC,コンデンサーに加わる電位差を VV とすると,

Q=CV Q = CV

が成り立つ。

Maxwell方程式 からこれを証明してみましょう(Maxwell方程式について詳しくはマクスウェル方程式の記事を参照してください)。

証明

図のように,面密度 σ\sigmaσ-\sigma に帯電している2枚の金属平板を考える。

図1

正に帯電している平板から発生する電場を求める。図のような円柱領域を VV,その表面を DD とする。

図2

Maxwell方程式より,

DEndS=1ε0VρdV \int_{D} E \cdot n dS = \dfrac{1}{\varepsilon _0} \int_{V} \rho dV

今,対称性により,平板の上下で電場の大きさは等しいから,

(左辺)=ES+ES=2ES (\text{左辺}) = ES + ES = 2ES

また,円柱領域内部の電荷を考えることにより,

(右辺)=σSε0 (\text{右辺}) = \dfrac{\sigma S}{\varepsilon_0}

E=σ2ε0 \therefore E = \dfrac{\sigma}{2 \varepsilon_0}

負に帯電している電場の大きさもこれと等しい。電荷の正負に注意して,この2枚の平板間の電圧を求める。2枚の平板が距離 dd だけ離れている時,

V=CEdr=2Ed=σε0d V = \int_C E \cdot dr \\ = 2Ed \\ = \dfrac{\sigma}{\varepsilon_0} d

コンデンサーは2枚の平板が有限の大きさを持ったものとみなせる。その時,平板の面積を改めて SS とおくと,

V=σSε0d1S=Qdε0S V = \dfrac{\sigma S}{\varepsilon_0} d \dfrac{1}{S} \\ =Q \dfrac{d}{\varepsilon_0 S}

Q=ε0SdV \therefore Q =\dfrac{\varepsilon_0 S}{d} V

比例定数を電気容量 CC と置き直せば,

Q=CV Q =CV

を得る。\blacksquare

電気容量 CC の単位はファラドと呼ばれ,[F] で表記されます。SI(国際単位系)でFを表現すると,

[F]=[A2s4m2kg] [F] = \left[\dfrac{A^2 \cdot s^{4}}{m^2 \cdot kg}\right]

となります。これは,QQ の単位が [C][C]VV の単位が [JC]\left[\dfrac{J}{C}\right],及び C=AsC = A \cdot s であることから導かれます。計算問題としてやってみてください。

極板間引力

コンデンサーの2枚の平行平板は帯電しているので,極版間の引力を考えることができます。

公式2:極板間引力

2枚の平行版コンデンサーに働く引力 FF は,平行平板内の電場を EE とすると,

F=12QE=12Q2ε0S F = \dfrac{1}{2} QE = \dfrac{1}{2} \dfrac{Q^2}{\varepsilon_0 S}

と表される。

これを証明してみましょう。

証明

平行版コンデンサーの形状は公式1の証明と同様とする。正に帯電している極板は,負に帯電している極板から電場

E=Q2ε0S=12E E_{-} = \dfrac{Q}{2 \varepsilon_0 S} =\dfrac{1}{2} E

により引き寄せられている。正に帯電している極板が持つ電荷は QQ であったから,ローレンツ力を考えれば極板間引力は

F=QE=12QE=12Q2ε0S F = Q E_{-} = \dfrac{1}{2} Q E = \dfrac{1}{2} \dfrac{Q^2}{\varepsilon_0 S}

となる。対称性により,負に帯電している平板が正に帯電している平板から受ける力も上と同じ式で表される。\blacksquare

係数が1/2となっていることに注意してください。

静電エネルギー

電荷を蓄えたコンデンサーには,エネルギーが蓄えられています。これは,電荷を貯める過程で,電圧が仕事をしたからだと思えば,理解していただけると思います。この表式は以下のようになります。

公式3:静電エネルギー

電気容量 CC のコンデンサーに電位差 VV が加わり,電荷 QQ が蓄えられている時,コンデンサーは以下で示すようなエネルギーを蓄える。

U=Q22C=12CV2=12QV U = \dfrac{Q^2}{2C} = \dfrac{1}{2}C V^2 =\dfrac{1}{2} QV

証明は別の記事で詳しく紹介される予定ですので,そちらを参照してください。

今回の記事で電気容量の単位を確認しました。電磁気では力学では現れなかった新たな単位が登場します。単位について理解しておくと,問題の解答を検算するときなどにも役立ち,また物理自体の深い表現にも繋がります。物理の単位に慣れ親しんでおきましょう。