解決済み

静止している物体について考えます。この物体を等速で回転する座標系から見ると、回転軸を中心に等速で円運動しているように見えるはずです。しかし、回転座標系でこの物体にかかる力を考えると、遠心力だけが外向きに働いているため、内向きの力がなく、円運動を維持できないように思えます。このため、回転座標系で見た物体の運動に矛盾があるように感じます。


私はどの部分で理解が誤っているのでしょうか?

ベストアンサー

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まずは結論から述べます。質問者の推論が誤っているのは遠心力だけがはたらくと考えている部分です。コリオリ力と呼ばれる慣性力もはたらくと考えれば矛盾は解消されます。


遠心力がどのようにして導入されたのかを思い出してみましょう。慣性系において向心力が働き等速円運動している質点があるとします。この状況を質点の静止系から見た場合、向心力がはたらいているにも関わらず質点は静止しているということになってしまいます。そこで遠心力というものを考え、遠心力と向心力が釣り合うことで静止しているのだとしました。同様に考えてみると、慣性系で静止していた質点を慣性系で等速円運動している観測者の立場から見れば、これは観測者とは反対向きに等速円運動しているように見えます。等速円運動しているということは向心力がはたらいているはずなので、遠心力を考えてつじつまを合わせたように新たな慣性力を追加し、遠心力と反対向きで大きさが2倍の力がはたらくと考えれば矛盾は解消されます。


このような議論が高校レベルの授業や教科書でなされることはあまりないと思われます。その理由は、回転座標系から見た運動は高校レベルの物理で扱うには複雑すぎるので回転座標系から見て静止している状況しか扱わないからです。質問者が考えている状況では(回転座標系から見て)回転している質点を考えており、高校レベルの物理からは逸脱しています。


ここから先は大学レベルの説明になります。回転座標系から見た運動方程式は


mr¨=F2mΩ×r˙mΩ×(Ω×r)mΩ˙×rm \, \ddot{r} = F - 2m \, \Omega \times \dot{r} - m \, \Omega \times (\Omega \times r) - m \, \dot{\Omega} \times r


とかけます。ドットは時間微分を表し、×\timesは外積を表します。

r,r˙,r¨ r , \dot{r}, \ddot{r} はそれぞれ回転座標系での物体の位置ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトル、Ω,Ω˙ \Omega, \dot{\Omega} はそれぞれ回転座標系の角速度ベクトル、角加速度ベクトルです。右辺の各項についてはそれぞれ名前が付いています。


F F :物体に作用する外力

2mΩ×r˙ - 2m \, \Omega \times \dot{r} :コリオリ力

mΩ×(Ω×r) - m \, \Omega \times (\Omega \times r) :遠心力

mΩ˙×r - m \, \dot{\Omega} \times r :オイラー力


この式の導出が知りたい場合は、「回転座標の運動方程式」などのワードで検索してみてください。慣性系で静止している質点を回転座標系から見たときにかかる力を考えます。等速円運動と仮定すればΩ˙=0\, \dot{\Omega} = 0 なのでオイラー力の項は消えます。外力もかかっていないので考える必要はありません。残るのは遠心力とコリオリ力です。これらの合力が実際に向心力となっているかを確認します。慣性系で静止している質点を角速度Ω=(0,0,ω)\Omega = (0, 0, \omega)の回転座標系から見れば、質点は逆方向に回転しているように見えるはずです。そこで質点の軌道r(t)r(t)を時刻ttの関数としてr(t)=(cos(ωt),sin(ωt),0)r(t) = (\cos (\omega t), -\sin (\omega t), 0)のようにおき、遠心力とコリオリ力を計算すると、コリオリ力は2mω2r(t)-2m\omega^2 r(t)、遠心力はmω2r(t)m\omega^2 r(t)となり、結局


mr¨(t)=mω2r(t)m \, \ddot{r}(t) = -m \, \omega^2 r(t)


となります。また、慣性系で回転している質点を回転座標系から見た場合、この質点は回転座標系では静止しているのでr˙(t)=0\dot{r}(t) = 0となりコリオリ力ははたらきません。代わりに慣性系で質点を回転させていた向心力が外力FFの項に相当し、遠心力と釣り合います。

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