2022年2月に、ロシアが隣国ウクライナに侵攻しました。国際法には、「武力行使禁止原則」というルールがあります。国連憲章という条約の2条4項に定められていて、国が他の国に対して武力を行使したり、武力を行使すると威嚇したりすることを原則として禁止しています。これに対して違反しているのにも関わらず、まだ侵攻が終わっていないのはなぜですか?また、これまで、守られてきたのはなぜですか?最後に、オランダのハーグにある国際司法裁判所は何の役割を担っている(何をしている)のですか?
ベストアンサー
確かに、ロシアのウクライナ侵攻では、ロシアがウクライナに軍事侵攻をしたことは武力行使禁止原則に違反していて、ウクライナがロシアに反撃するのは自衛権の行使として国際法上認められるということになります。
しかし国際法が他の法と違うのは、日本、アメリカ、中国、韓国といった、国と国との間に使われる法律だということです。国際法は、国同士の取り決めと国際社会で作られた慣習法から成り立っています。
国際法は、国が合意したものであるので、国は約束したことを守らなければなりません。国際法は法的拘束力を持っています。しかし、国際社会には、国の上に立って、法を守るように実力で強制したり、違反した国を処罰したりするような存在がありません。私たちが生活している、国内の社会では、政府が警察・検察を持っていて、法律に違反した人を逮捕し起訴し処罰することができます。国際社会には国の政府にあたる機関が存在しません。
オランダのハーグの国際司法裁判所は、国と国の間で起きた国際法上の問題について裁判をしています。その判決には法的拘束力があります。たとえば、アメリカが中米のニカラグアという国に行った軍事攻撃が自衛権として認められず、武力行使禁止原則に違反するという判決を下しています(1986年)。しかし、国際司法裁判所で裁判をするためには、関係する国の間で合意をすることが必要です。国際社会では国は「主権」を持っているため、その国の同意がなければ裁判所に訴えることができません。
このような罰則や強、たとえば、「国際法は作るのも守るのも国なので、守れないルールは作らない」「国際法を破ることで、その相手国から報復を受ける」「200近い国の間で相互の監視や批判、説得が働きやすい」「国際法を破ることで国際世論の圧力を受ける」といった理由があります。
今回のウクライナ侵攻に関しては、ロシアの軍事侵攻開始の6日後に、世界中の国々の代表が集まる国連総会が、ロシアのウクライナ侵攻を武力行使禁止原則の違反であるとして非難し、軍事行動を停止し、ウクライナの領土から撤退するよう求める決議を採択しました。賛成は141カ国で、国際社会の大多数の国がロシアを非難しています。西側諸国を中心に、ロシアに制裁措置をとっている国もあります。また、国際司法裁判所は、侵攻開始の翌月に、ウクライナの訴えに対して、仮の命令ですが、ロシアに軍事作戦を停止するよう命じています。
@1217さんの言う通り、国際法は不十分なところがあるのは事実です。国際法を破る国に国際社会が一丸となって、ロシアに圧力を加え、守らせなければならないでしょう。国際法を単なる紙切れに終わらせないために、不断の努力が必要であるといえます。
質問者からのお礼コメント
ありがとうございます。国際法の複雑さと現実の課題について、非常に明確で包括的な説明ですね。国際法の特殊性、その実効性の課題、そして国際社会の役割について深い洞察を提供していただき、大変勉強になりました。特に、国際法の遵守を促す様々な要因や、ウクライナ侵攻に対する国際社会の具体的な対応について詳しく説明していただき、感謝しています。このような複雑な問題に対する理解を深めるのに大変役立ちました。